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ため池の役割・構造とは? 災害を防ぎ安全に管理するコツを初歩から解説

ため池の役割・構造とは? 災害を防ぎ安全に管理するコツを初歩から解説

あなたの農地の近くに、ため池はあるでしょうか? もし、ため池にまったくなじみがなく、新たな土地で新規就農をする場合は、ため池の確認をする必要があるかもしれません。では、ため池とは何のためのどのようなものか。初歩から、その特徴や今どきの管理方法について解説していきます。

ため池とは何のための設備?

水に恵まれない地域で水を蓄える人口池

ため池とは何のための設備なのでしょうか。
ため池とは、降水量が少なく、大きな河川に恵まれない地域などで、主に農業用水を確保するために人工的に造られた池を指します。その用途は農業用水だけに限らず、生物の生息・生育場所の保全や、雨水を一時的にためる洪水調整や土砂流出防止の役割も果たしています。
また、地域住民の憩いの場となったり、伝統行事があったりするなど、多面的な機能があります。

ため池の構造と各部の名称

ため池は、雨水をためられるように造られており、形態によって「谷池(たにいけ)」と「皿池(さらいけ)」の2つに大きく分けられます。
谷池は山間や丘陵地で谷をせき止めて造ったもの、皿池は平地のくぼ地の周囲に堤防を築いて造ったものです。

その構造は、水をためる「堤体(ていたい)」や、洪水を安全に下流へ流すための「洪水吐き」、水を田畑などに取り入れるための「取水施設」などからなっています。

ため池の構造

画像提供:農林水産省

あなたのそばのため池は安全? 浸水や事故に備える

全国のため池の現状

ため池は2021年時点で、全国に15万カ所以上あります。その多くは降水量の少ない西日本のもので、特に全国の半分が瀬戸内地域に集中しています。

ため池の周辺には民家があるところも多く、転落事故の危険性があります。2021年度には22件の死亡事故が発生しました。

一方、ため池は江戸時代以前に造られたものなど古い施設が多いことも課題となっています。
また、記憶に新しい「平成30年7月豪雨」では、多くのため池が決壊し被害が発生しました。
こうした災害などを受け、2019年には「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」が施行。これにより全国のため池について、場所や所有者・管理者などの情報の整備・公表が行われています。
どのため池にも十分な保全管理が必要ですが、決壊した場合の浸水予想区域に住宅などがあるようなため池は「特定農業用ため池」とされ、一層の管理が求められています。

ため池ハザードマップがある地域も

また、ため池の災害時の被害軽減のための「ため池ハザードマップ」がある地域もあります。
もしもの際の浸水予想区域や避難場所を知るためにも見ておくことをお勧めします。

ため池を保全管理するためのポイント

新規就農者も知っておきたい、ため池の管理

では、ため池の保全管理のポイントについて、見ていきましょう。
はじめの一歩としては、自分の農地の近くにため池があるかどうかを確認してみるといいでしょう。「都道府県名+ため池マップ」などでインターネット検索をすると、対象地域のため池の名前や大きさなどの情報がわかります。
特に移住して就農する人には参考になるでしょうし、慣れ親しんだ地域での就農者も、一度見てみてはいかがでしょうか。

管理者を置くこと

前述の「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」により、ため池を誰が所有し管理しているのかを届け出ることが義務付けられました。
地域のため池を使用する場合、こうした管理者に水の使用法を聞くことは重要ですし、使用する一員として、点検方法を把握しておくことも大事です。

なお2018年3月時点では、全国のため池の約1割は行政の管理によるものですが、残りは全て民間などが管理するため池。ため池の管理者については、市町村や自治会などに問い合わせてみましょう。

点検は必ず行う

点検の際には、見るべきポイントを載せた「ため池管理マニュアル」を参考にしてください。
自治体により名称は「ため池点検マニュアル」などと異なりますが、就農地域のものを見るとよいでしょう。
基本的な点検箇所は、堤体・洪水吐き・取水施設・周辺状況など、約20項目です。以下に例を挙げます。

・堤体にひび割れ(クラック)はないか
・堤体に水のしみ出しはないか
・洪水吐きにゴミや土砂の詰まりはないか、土のうなどを置いていないか
・取水施設のコンクリート(洪水吐き)と堤体のあいだに隙間(すきま)はないか

また、秋・冬の水を使わない時期には、水を落として(なくして)、底にたまった泥やゴミを掃除し、日光で干す「かいぼり」なども行います。
さらに日常から危険な場所がないか確認して、人が転落する危険がある箇所には転落防護柵などを設置することも大事なことです。

そして何より、こうした保全管理のためには、日々の草刈りを怠らないようにしましょう。草刈りによって、堤体の様子が見やすくなり、ちょっとした異変にも気づきやすくなります。こうした保全管理が利用のしやすさにもつながっていくことでしょう。

参考:農林水産省「ため池管理マニュアル」(PDF)

ため池の保全管理に役立つ支援

さて、こうした保全管理を負担に思う人は少なからずいることでしょう。
そこで、負担を和らげるための方法などを、農林水産省の農林振興局整備部防災課、防災・減災対策室の川本陽介(かわもと・ようすけ)さん(防災情報班)、中司昇吾(なかつかさ・しょうご)さん(防災班)に聞きました。

スマート農業機器での負担軽減

「ため池管理の分野でも、スマート農業の普及に合わせてICT機器の活用が進んでいます」と話すのは川本さん。「水位を測って無線でデータ送信する『水位センサー』や、急勾配の斜面でも走らせることができる『リモコン草刈機』なども出てきています。また管理者用にはなりますが、日常点検の記録や、災害時の行政との迅速な情報共有をしやすくする『ため池管理アプリ』も開発されています」
こうしたスマート農業機器は、危険の察知や、負担軽減に一役買うことが期待されます。機器の導入に活用できる補助金などもありますので、補助金などが調べられる「農林水産省/逆引き辞典」 を活用するのも一案です。

ため池の保全管理コストへの補助はある?

より活用の幅が広い交付金の例として、「多面的機能支払交付金」があります。
「『多面的機能支払交付金』は地域の人々が共同で行う活動についての交付金です。例えば、草刈りなどの活動費を出すこともできますので、そこから手伝っていただく方への日当をお支払いするのも一つの例ですね。農業者でなくても、ため池の周辺を散歩する方がいれば、その方にも協力をお願いしてみるなど、地域の皆様でため池を活用していってください」(川本さん)
「豪雨や大地震などの自然災害があると、ため池が決壊する恐れがあります。震度5弱以上の地震が発生すれば点検をお願いしていますが、災害を未然に防止するためには、日常的な管理が重要です。多面的機能支払交付金等を活用して地域共同による日常の管理体制を構築することも大切です」(中司さん)

困ったら、ため池保全サポートセンターへ

ため池もやはり、農業者の高齢化や減少を受け、保全管理は課題となっています。
新規就農の際に、ため池を使用することになれば「地域の仲間として保全管理していく」という視点を持ちたいものです。
ため池の保全管理について、地域によっては「ため池保全サポートセンター」や「ため池管理支援センター」などの支援窓口があります。これらが設置されていない地域でも、自治体ごとに窓口があります。管理・使用方法に迷うときなどは、相談してみてはいかがでしょうか。

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