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マッキンゼーから食べチョクへ転職、産直サイトに感じる課題と可能性

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

マッキンゼーから食べチョクへ転職、産直サイトに感じる課題と可能性

新型コロナウイルスの感染拡大のもとで、食品流通で存在感を増した産直サイト。その運営にいま多くの人材が集まっている。どこに魅力を感じ、何を課題と感じているのか。食べチョクを運営するビビッドガーデン(東京都港区)で2022年6月に取締役兼執行役員COOになった山下麻亜子(やました・まあこ)さんに話を聞いた。

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「30代の時間の使い方」「日常に必須なもの」を手がかりに転職

山下さんは京大法学部を卒業し、コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社した。プロジェクトを統括するマネジャーの仕事をしたほか、消費財関連の企業への出向や語学留学なども経験。10年ほど働いた後、2020年6月にビビッドガーデンに転職した。

マッキンゼー時代について、山下さんは「すごく楽しかった」とふり返る。仕事に不満があって勤務先を変えたわけではない。とくにマネジャーになったことで「責任のある立場で大きなものごとを動かすことを経験」し、コンサルティングの仕事の醍醐味(だいごみ)を味わった。

それでも転職したのは「30代の時間の使い方」について、二つの選択肢のどちらがいいかを考えたからだ。このままコンサルタントとして専門性を高め、マッキンゼーでより上の立場を目指すか。それとも事業や経営の世界に飛び込むか。前者も魅力的と感じつつ、選んだのは後者の道だった。

マッキンゼーに勤めていたときの山下麻亜子さん(写真提供:ビビッドガーデン)

転職先を決める際、「日常に必須なもので、自分を幸せにしてくれるもの」に関わりたいと考えた。頭に浮かんだのは、おいしい食べものや、飲食店やホテルのすてきな空間など。高級ブランドに象徴されるような世界ではなく、「日々の何気ないイベントで人を癒やしてくれるもの」だ。

もう一つ関心があったのは、いまの流通の仕組みのことだ。「伝統工芸の職人や農家など、とてもいいものをつくっている人に十分にお金が回っていないのではないか」。「価値のつくり手」よりも、それを販売する側である中間流通業者やショップに利益が集中しがちな仕組みを改めたいと思ったのだ。

こうして山下さんの転職先として、ビビッドガーデンが浮上した。

初対面の社長が言った「課題だらけです」

ビビッドガーデンに興味を持った山下さんは、知人の仲介で2020年3月に代表の秋元里奈(あきもと・りな)さんに会った。1時間ほどの面談で感じた秋元さんの印象はどうだったのか。その点をたずねると、「とてもしっくり来た」という答えが返ってきた。

とくに印象的だったのは、秋元さんが会社の状況を「課題だらけです」と語った点だ。信念を持って経営していても、うまくいかないことはたくさんある。ただそれを採用の際に話すかどうかは判断がわかれる。山下さんは「初対面の自分に包み隠さず言うのは面白いと思った」という。

2人が会ったのは、新型コロナウイルスの感染が日本でも増え始めた時期だ。売り先を失った生産者がSOSを発し、サイトへの登録が盛んになった。だがそのペースが速すぎて、消費者の利用が必ずしも追いついていなかった。秋元さんはそんな課題を山下さんに説明した。

スタッフとの打ち合わせの様子(写真提供:ビビッドガーデン)

面談を何回か重ねて秋元さんの考え方への理解を深め、自分のやりたいことを伝える一方で、ビビッドガーデンのスタッフにも会わせてもらった。どんなに優れたビジネスモデルを発案しても、いいチームがそれを担っていなければ事業を伸ばすことができないからだ。

ではいいチームとは何か。

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