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農業参入をする前に! 知っておくべき成功する3つのポイント

農業参入をする前に! 知っておくべき成功する3つのポイント

企業が農業に参入しやすくなった昨今、「あの会社が農業を始めた!」というニュースもよく聞かれます。しかし「やりたい」という声があがっても話が頓挫する例や、いざ参入しても撤退してしまう例などがあります。なぜ、企業の農業参入は失敗しがちなのか。そこには農業の捉え方への大きな誤解もあるようです。多くの企業の農業参入を支援し、失敗例も成功例も見てきたFOODBOX(フードボックス)株式会社に、事例や法則などについて聞きました。(画像提供:FOODBOX株式会社)

関心高まる農業参入

法改正による追い風

近年、農業への企業参入が増えています。
企業が農業に新たに参入していく方法には、次の図のように4つのパターンがあります。

参入パターン

2009年にリース方式による参入が全面自由化されたことや、2016年に農地を所有できる法人の要件が見直されたことなどから、企業が農業に参入しやすくなりました。これにより、農地を借りての農業(図のパターン2)や農地を所有しての農業(図のパターン1)が増えています。
一方で農地を使わずに農業を行うこともあり、植物工場などの施設を作るなどの場合(図のパターン3)がこれに当たります。他にも、作物の栽培などはせずに農業関連サービスの開発・提供により、農業に関わることもあるでしょう。

参入推移

また、都道府県ごとの参入数は、パターン2を例にとると2019年12月末時点で最も多い静岡県は212社ですが、最も少ない東京都・佐賀県は21社と差があります(農林水産省調べ)。大消費地に近い地域、また産地と呼ばれ全域で力を入れている地域ほど農業が盛んで、参入数も多い傾向があります。

食への関心が、農業への関心に

こうした企業の農業参入の増加について、企業に向けた新規農業参入のサポートなどを行うFOODBOX株式会社ではどのように捉えているのでしょうか。
同社CMO(最高マーケティング責任者)兼フードカタリスト(※)の池田夏子(いけだ・なつこ)さんは、「農業に参入する一般企業が増えている背景には、受け入れ態勢の整備と農業への関心の高まりという2つの面があると思います」と説明します。
※ 「食・農業界と異業種のつなぎ役」を意味する同社の造語。

農業参入の増加背景の例

受け入れ態勢の整備
  • 国家戦略特区による後押し
  • 補助金など、支援の充実
  • 農業参入への相談窓口の設置
農業への関心の高まり
  • コロナ禍での“家食”の増加による食の見直し
  • ワーケーション需要の増加
  • SDGsなどから自然への関心の高まり

「受け入れ態勢の例では、当社が協力をしている自治体の一つ、茨城県は農業参入支援室を作り、専任者を置いて支援しています。農業参入は、準備から実際に参入して農産物を収穫するまで3年かかることも普通です。ですからノウハウの蓄積には時間がかかりますが、今は先行した参入企業によるノウハウなどが各所に蓄積されてきたと感じます」(池田さん)

農業参入で失敗例が多いワケ

なぜ企業内で農業参入の決裁が通らないのか?

しかし、企業の農業参入は決して明るい話題ばかりではありません。頓挫や撤退など、農業参入への失敗も聞かれます。
実際に同社がサポートをしたある上場企業では、本業のエンターテインメント事業のほかに、新規事業として農業を手がけることを検討していました。候補地を決め、担当者は足を運んで確認し、自治体の担当者とも面談。事業計画も立て、取締役への根回しも行って進めてきました。しかし、最終判断を行う取締役会でブレーキがかかり、あえなく参入断念となりました。
FOODBOXのCEO(代表取締役)兼フードカタリストの中村圭佑(なかむら・けいすけ)さんがこの事例を解説しました。
「このケースでは、農業が収益事業としてのみ見られたために、他事業と比べて売り上げや利益率、回収期間が見劣りしたことがブレーキの理由でした。事業である以上、ボランティアではありません。ですが、だからと言って、農業は“お金を稼ぐ事業”にはなりません。私は企業へは最初に『もしも稼ぎたければ、農業界に来ない方がいいですよ』と伝えています。『農業をやりたい』と思って参入計画を進める企業は多いですが、こちらが“現実”を話したら途中で計画がストップした例も山ほどあります」

セミナー

参加者が増えている農業参入セミナー(画像提供:FOODBOX株式会社)

農業の特性への知識不足

もちろん、農業でも売り上げや利益率について見当をつけ、収益を狙うという方法はあります。
「参入したい地域ごとに、そこで作れる主要作物について収量や販売単価のデータが出ていたりします。それらと農地面積を掛け合わせると、売り上げのシミュレーションができます。ちなみに企業が参入する際の農地の広さは一概には言えませんが、0.5~1ヘクタールが多いかと思います」
ただし、ここで中村さんが注意したのはイニシャルコストです。
「一般企業の場合、参入の時点で農業特有の補助金を使えないケースが多いですね。すると、自社で資金を用意しなければならない。例えば0.5ヘクタールの農地に、ビニールハウスやその他設備などを設置しようとすれば、設備費で1億円以上かかることもあります」
さらに農業では年に何回も収穫することはほぼありません。こうした農業の仕組みや規模感を知って、諦めていく企業は多いようです。

打合せ

FOODBOXと参入企業との打合せ風景(画像提供:FOODBOX株式会社)

農業の投資対効果を見誤る

こうして失敗していく企業は、あえて言えば農業への投資対効果を単に収益という一面で見ているという要因が考えられます。
中村さんは言います。
「農業を単純な新規事業として売り上げのみを見ると、難しいものがあるでしょう。むしろCSRやSDGs、カーボンニュートラルの観点などからの事業活動であったり、社員の福利厚生という趣旨が主であるほうが、規模の大きな企業にとっては取り組む意義があると思います。また、既存事業とのシナジー(相乗効果)があることは大前提ですね」

事例から見る農業と親和性の高い企業とは

茨城県で農業参入した戸田グループの例

では、一方で上手に農業参入をしているのは、どのような企業なのでしょうか。
FOODBOXが事業に関わっている、戸田グループ TODA農房常総合同会社の例を見ていきましょう。
戸田建設株式会社は、茨城県常総市が市内のインターチェンジ周辺に「食と農と健康の産業団地」を作る「アグリサイエンスバレー構想」に、2014年から官民連携事業者として参画。2017年に農業事業を開始し、主にイチゴの栽培から出荷・販売、6次産業化までを行ってきました。2021年に農場の運営会社としてTODA農房常総合同会社を設立。農産物の安全性確保や環境保全に関する国際規格「ASIAGAP(アジアギャップ)」の第三者認証も取得しました。現在は0.1ヘクタールの農地でイチゴをハウス施設で栽培しています。

SORAリウム

戸田グループ開発の園芸ハウス「SORA(ソラ)リウム」(画像提供:TODA農房常総合同会社)

成功の近道①地域との連携

戸田グループが農業に参入した背景には「農地をなくす開発ではなく、農地と共生し、地域に貢献する開発を進めたい」という考えがあります。
農業においては地域との連携は欠かせません。同社でも市の構想のもとで、地域企業と連携して、コンフィチュールや紅茶などの加工品を企画・製造しています。これは、地域のPRに貢献するだけでなく、収入源の多角化にもつながっています。

成功の近道②経験者からのアドバイス

他には、経験者からのアドバイスを得ていることも見逃せないポイントでしょう。
同社は、農場立ち上げ当初、農場スタッフのほとんどがイチゴ栽培未経験者だったため、栽培の工程ごとに栽培設備会社や農業資材会社の担当者を含めたミーティングや研修を行うなどの指導体制を構築しました。また、県の農業支援センターの指導員に現地確認・アドバイスをしてもらい、シーズンごとの気候状況に合わせた栽培計画を策定しました。

成功の近道③既存事業とのシナジー

また、同社にとって農業は新しい事業でしたが、グループでのノウハウやネットワークを活用することで収支・運営計画などが立てられました。
さらに、農業参入は企業のSDGsやQOL向上への貢献に向けた取り組みでもありますが、イチゴの加工品は“食べられる企業PRツール”にもなり、顧客との接点として活用できています。もちろん顧客だけでなく、地域活性化を推進する企業や、新たに農業へ参画する企業ともパートナー関係を結べました。

地域と深く連携しながら、自社の事業とのシナジーも重視して、農業に取り組んできた同社。「将来的には戸田グループで『農業6次産業化を軸としたまちづくり』を日本全国に水平展開させていきたい」と考えています。

イチゴ

TODA農房で作られたイチゴ(画像提供:TODA農房常総合同会社)

農業参入に欠かせない事前準備

FOODBOXによれば、事例のように上手に農業参入していくためには事前準備が欠かせないとのこと。
「農業をやりたいと思った際の相談先は自治体ですが、すぐに行かずにまずは準備することをお勧めしています。自治体も農地の地主さんも、きちんとそこで農業をしてくれるかどうかを気にしています。極端な話ですが、農地を荒らされて出ていかれることは避けたいですから。そのために栽培や販路の計画、目途などは具体的に聞かれます。もしそこで根拠のない回答をしたら最悪の場合、企業名を覚えられて以後はなかなか受け入れられないことすらあります」(池田さん)
残念ながら先行した農業参入企業の失敗が、地域でトラウマのように記憶されていることもあります。ですから、たとえ関係がないとしても、“企業の農業参入”というだけで身構えられてしまうこともありえるでしょう。
「受け入れ態勢は整備されてきているとはいえ、決して全ての地域に共通ではありません。突然、企業が来て参入計画を語っても“夢物語”と受け取られることすらあります。それはたとえ一般的に知られた大企業でも同じですし、大企業であるほうが逆に抵抗感を示す方もいらっしゃいます。農業の事業計画の立て方、進め方の知識・経験を持ち、地域の事情や心情をも知ることができる私たちのような農業コンサル企業をワンクッションとして挟むという手もあります」(中村さん)

農業は長い期間をかける事業です。これからの長い付き合いとなる地域との第一印象は良くしたいもの。お互いに気持ちのいい事業のスタートを切るためにも、外部のサポートは一つの有効な手段だと言えるでしょう。

■お問合せ先■
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