完璧を目指さない、現実的で合理的な施肥の見直し
まず取り上げるのは、千葉県野田市の野菜農家の荒木大輔(あらき・だいすけ)さんだ。2人のスタッフを雇い、2.4ヘクタールの畑で枝豆やパクチー、キャベツなどを育てている。主な出荷先は地元の農協だ。肥料もそこから購入している。

荒木大輔さん
値上げを見込んでまとめ買い
これまで肥料の購入費は経費全体の5%程度を占めていた。これに対し、価格上昇を受けて22年はその割合が7~8%に高まる見通しという。
2~3%の上昇で収まったことについて、荒木さんは「値上げの影響を和らげることができている」と話す。想定より上げ幅を小さく抑えることができた理由は、地元の農協の機動的な対応にある。
JAグループは毎年6月と11月に肥料の値段を改定する。大きく上がったのは22年6月。地元の農協はそれを見越し、21年11月の改定後に「在庫を持つ余裕のある人は、6月の改定前に追加で注文してほしい」と呼びかけた。中国の輸出制限などですでに肥料の国際相場が上がり始めていたためだ。
これを受け、荒木さんは例年より多めに注文した。納入されたのは22年2~3月。その結果、6月以降に購入する肥料を減らすことができた。とくにまとめて買ったのは、一年中栽培しているパクチーで使う肥料だ。
土壌分析で施肥の合理化
課題はこの先だ。2022年の11月以降に買う肥料は、6月と11月の2度の値上げが重なり、2021年と比べて大幅に上がる。特に大きな影響が予想されるのが2023年。荒木さんの農場では、何も手を打たなければ、経費のうち肥料代の割合が13~14%になる見込みという。