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葉物野菜の輸出を2年で10倍超に拡大、決め手になった品質管理の技術とは

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

葉物野菜の輸出を2年で10倍超に拡大、決め手になった品質管理の技術とは

円安をきっかけに農産物の輸出拡大に期待が高まっている。ただ為替相場は追い風にはなっても、輸出を軌道に乗せるための決め手にはなりにくい。何が必要なのか。2022年から本格的に輸出を始めた農業法人の株式会社ふしちゃん(茨城県つくば市)代表、伏田直弘(ふしだ・なおひろ)さんに話を聞いた。

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タイとシンガポールに輸出拡大

伏田さんは2015年にふしちゃんを設立した。農場の名前は「ふしちゃんファーム」。56棟のハウスと1ヘクタールの露地の畑で、コマツナやホウレンソウ、ミズナ、ロメインレタスを育てている。品目の幅を広げるため、最近はイチゴやピーマンにも力を入れている。

営農に関する伏田さんの考え方を特徴づけている点の一つに、徹底した合理性の追求がある。ほかの農家と横並びの発想で事業を伸ばすのは難しいと考え、いかに差を出すかに知恵を絞っている。

そんな理由から、国内の農家ではまだ少数派の有機栽培を選んだ。しかもそれを売り先に明確に示すため、有機JASの認証を取得した。食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる「JGAP」の認証も取得している。

輸出は2020年から始めた。1年目は専門商社を通し、ドイツとフランスにコマツナとミズナを輸出した。欧州は日本と比べて有機農産物に対する需要が大きく、伏田さんが有機JASの認証を取得していることを評価してくれた。

ただこのルートでの販売は、あまり長く続かずに立ち消えになった。輸送費が上がったことなどを理由に、取引先が出荷価格を下げるよう伏田さんに求めてきたからだ。伏田さんは「売るメリットがなくなった」とふり返る。

伏田直弘さんが育てたコマツナ

2年目は1年目とは別の商社を通してミズナをタイに輸出した。このときはJGAPの認証を取得していることが評価され、輸出につながった。出荷価格は国内向けよりも高く、輸出に回す意味はあった。

難点は、売り上げの拡大を見込めない点にあった。現地での売り先は、日本の青果物を扱う卸売市場。品ぞろえをとりあえず増やすのが市場の狙いで、発注はごくわずか。伏田さんの売り上げは約30万円にとどまった。

これに対し、3年目の2022年は日本食品のアジア向け輸出を手がける商社との取引が始まり、販売が一気に拡大した。輸出先はタイとシンガポールで、品目はコマツナとミズナ、ホウレンソウ。売り上げは300万~400万円に増える見通しだ。

この商社が狙っているのは現地の富裕層ではなく、「ミドルアッパー(アッパーミドル)」のマーケットだ。いわゆる上位中間層で比較的世帯年収が高く、生活に余裕がある層を指す。伏田さんが国内でターゲットにしている層と共通しており、市場の広がりが期待できる。出荷価格は、国内向けに販売しているのと同じ水準だ。

ミズナ

鮮度保持と輸送コスト削減のために導入したシステムや資材

1年目と2年目のルートが航空便を使っていたのに対し、3年目のルートは船便で相手国まで運んでいる。燃料費の上昇で輸送コストが上がっているのは空路も海路も共通だが、両者を比べれば海路のほうが安い。

問題は現地に着くまでに長い時間がかかる点にある。伏田さんによると、野菜が農場を出てから、国内での輸出の手続きなどを経て、タイやシンガポールに着くまでに3~4週間かかっているという。収穫から時間がたてば品質が低下する恐れがある。そこでいかに鮮度を保つかが重要になる。

これがアジア向けの商社と取引を始める際の決め手になった。

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