企業養豚のパイオニアとして60年 世界で認められる安全・安心・おいしさのフリーデン
はじめに、株式会社フリーデン(本社・神奈川県平塚市)について紹介しましょう。
同社は、1960年に日本で初めての企業養豚を開始。以来、養豚業のトップランナーとして歩み続け、現在は養豚・加工・販売から飲食店経営まで自社で一貫して行っています。
創業時から変わらない理念は「安全・安心・おいしさ」です。種豚の生産から、繁殖、肥育まで、農場をすべて自社管理することで厳格な防疫体制を確立。併せて品種改良により、日本人の味覚に合った肉質の豚肉を日々開発してきました。2001年に生まれた「やまと豚」は、同社を代表するブランド豚です。
食肉加工でも実績があります。
創業から約10年後には、ハム・ソーセージなどの食肉加工品の製造に着手しました。初代工場長がドイツで製造方法を学び、本格的な設備と技術を導入し、余分な添加物は使わず、豚肉本来の味がわかる食肉加工品を作り続けています。
DLG(ドイツ農業協会)食品コンテストでは14回連続して金賞を受賞。今回初出品したIFFA(ドイツ食肉産業協会)食品コンテストでも、主力商品6点が金賞を受賞しました。
また、2022年ベルギーで行われた国際味覚審査機構のコンテストでは、「やまと豚」が優秀味覚賞の「三ツ星」を受賞。毎年行われるこのコンテストにおいて、今回で8年連続の受賞となりました。
HACCPをステップにJGAP団体認証へ 安全・安心を追求する過程で必然的にたどりつく業界の最先端
現在フリーデンでは、北関東と東北に8つの農場があります。岩手県にある2か所の種豚生産農場で生産された母豚を秋田県・岩手県・群馬県の肥育農場に移動させ、そこで交配し生まれた豚が「やまと豚」として肥育されています。
同社の肥育農場では、1998年頃から独自のHACCP(ハサップ)による衛生管理を徹底してきました。HACCPは、導入から種付け、分娩、肥育、出荷に至るまでを工程ごとに管理・改善することで事故を未然に防ぐ仕組みです。2011年に農林水産省のHACCP認証制度が始まると、同社は「やまと豚」を生産するすべての肥育農場で第一号認証を取得しました。
JGAP認証で家畜・畜産物が始まると、同社はこれまでの衛生管理体制を基に直ちにJGAPに取り組み、2017年に個別認証の第一号を、2年後には団体認証の第一号を取得しました。
JGAPに取り組むメリットについて同社生販企画室副室長の工野大介さんは、「安全・安心を企業理念に掲げ、弊社が独自に取り組んできたことに対して、第三者の評価が得られることは大きいですね」と話します。
また、JGAPにはHACCPの要素が多く含まれていることから、現在はJGAP認証一本に絞り、個別認証から団体認証に切り替えて農場を運営しています。
【対談】JGAPから畜産の未来を考える フリーデン×マイナビ農業
畜産の未来とJGAP認証の関わりについて、認証取得を推進してきた工野さん、梨木農場でJGAPの実践に取り組む竹ケ原さん・齋藤さんに、株式会社マイナビ地域活性CSV事業部長の池本博則が話を聞きました。
池本:御社ではJGAP畜産の認証ができる前から企業理念として「安全・安心」に取り組んでいらっしゃいますが、認証取得による変化は感じられますか。
工野:農場HACCPの流れがあるため、JGAP認証で劇的に変わったことはありませんが、従業員の意識は変わってきています。これまで以上に、安全なものを作って提供していくという理念が浸透しています。特に養豚は生産に携わる従業員や地域住民の皆さんの理解・協力があって成り立つものです。農場や企業を取り巻く環境と真剣に向き合う姿勢は、JGAP認証に起因していると思います。
竹ケ原:農場ではJGAPで新たにアニマルウェルフェアに取り組むにあたり、従業員から改善のアイディアが上がってくるようになりました。
また、動物福祉で先行するヨーロッパを訪れたとき、そもそも働く人にも優しい社会だと感じました。人権尊重の延長でアニマルウェルフェアが派生したとすれば、JGAPによる労働者の安全は、動物福祉にも反映されるのではないでしょうか。
池本:JGAPの導入で難しかったことや苦労したことはありましたか。
工野:認証を取って終わりではなく、継続していくために農場の皆さんに理解していただくことに腐心しました。
齋藤:業務に関しては、日々やっていることがきちんとできているかを確認するだけで、特別に何かをしているという意識はないです。
池本:企業姿勢として安全・安心が浸透していることが窺われますね。JGAPの取り組みを通して消費者や取引先、流通関係者との関係性に変化はありましたか。
工野:JGAPでは商品にロゴマークを入れることができるので、安全・安心の取り組みが消費者の方々の目に触れる機会ができました。
先日、消費者を対象としたSDGsフェアに出展した際にお客様と接する機会があり、弊社の取り組みをお話させていただくと、「『やまと豚』の値段も納得できました」と理解していただけました。手応えを感じるとともに、企業自らが発信を続けることの大切さを実感しました。
現在、ロゴマークを入れているのは自社で販売加工を行う商品のみですが、私たちの商品の大半を占めるテーブルミート(精肉)のパッケージにもロゴマークを入れられるように、取引先との連携を強化できればと思います。
池本:これからの時代、JGAP認証食材はその価値に対して消費者の共感を得る仕組みとして、小売・流通・飲食などでも積極的に取り入れるメリットがあると思います。ここで、改めてJGAPの「個別認証」から「団体認証」に切り替えた理由をお聞かせください。
工野:弊社のブランド豚である「やまと豚」は販売開始から約20年が経ちました。時代に合わせてより付加価値をつけて販売していくために、グループ全体で安全・安心に取り組む姿勢を訴求したいと考えました。また農場を複数抱える弊社としては、「団体認証」のほうが認証のコストが少なく済むため、切り替えのメリットは大きかったです。
池本:持続可能性のある社会に向けて、農場がJGAPに取り組み、小売・流通・飲食業がJGAP食材を積極的に扱う意義について、認証を取得している御社の視点でお話しいただけますか。
工野:HACCPは危害になり得るものを管理して安全を担保しますが、JGAPには食品安全に加えて、労働安全、環境への配慮、人権尊重なども含まれます。農場のみならず会社経営そのものに関わることから、JGAP認証はコンプライアンスの観点からも大きな役割を果たしています。それを意識して取り扱う小売店や購入される消費者が増え、より良い畜産を持続するために価格も含めて理解していただけるように、我々も発信していきたいと思います。
池本:最後に一言ずつJGAPに取り組む思いをお聞かせください。
斎藤:おいしい豚を育てるために日々努力しています。それがJGAPのロゴマークとともに消費者のみなさんに伝わればいいかなと思います。
竹ケ原:安全・安心だからこそ、おいしい豚になると思います。生産現場で日々努力して育てた豚を、多くの方に召し上がっていただきたいです。
工野:JGAPの取り組みはSDGsにつながり、ひいては企業や社会の発展につながります。認証をどう活用していくかが大事だと思います。
池本:JGAP認証は自社ブランドを価値化して、安心・安全を徹底してリスク管理をしながら企業の信頼を発信していく手段と言えそうです。
本日はありがとうございました。
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