規格外野菜とは?
SDGsなどの盛り上がりによって、最近は規格外野菜という言葉をよく耳にするようになりました。そもそも規格外野菜とは、サイズなどが出荷先の定める基準から外れていたり、傷や病害虫の被害などによって出荷できなくなってしまった野菜のこと。
つまり、出荷の際の効率面や衛生面でいいとはいえないものが規格外になります。
「規格外の野菜はありますか? 販売の応援をさせてください!」と農家の所に営業が来ることがあったり、「捨てるなんてもったいない! 安くても引き取ってくれる業者に出せば、農家も利益になるだろう!」という声は絶えずあったりするのですが……
それでも規格外野菜を出荷しない理由が、農家にもあるのです!
ここからは、農家が規格外野菜を売らない代表的な理由を、大きく四つに分けて紹介していきます!
農家が規格外野菜をあえて売らない理由
①そもそも規格外はたくさんは出ないから
理由の一つ目は、そもそも規格外の野菜は売りたいと思うほど出ないことです。
例えば私が栽培している施設栽培のナスの場合、JAに出荷できない規格外のナスは栽培がうまく出来ていれば、1000本に10本も出ません。
規格外が多く出る時期でも1000本に20〜30本程度で、規格内のナスの1割にも満たないのです。
「そんなに少ないの!? 少しの傷でも規格外なのかと思ってた!」と思われる方もいるかもしれませんが、多少の傷モノはスーパーに並ばないだけで、よほどひどいモノでない限りは、出荷できるのです(もちろん作物によります)。
毎日少量しか出ない規格外野菜を、わざわざ時間とガソリン代をかけて別の販路に売りに行くのは利益が薄いし疲れる、と私は考えています。
②家族や従業員さんにあげてはけてしまうから
理由の二つ目は、家族や従業員さんにあげて充分にはける数だからです。
規格外になってしまう野菜の中でも、食べられそうなものは農家はパートさんや家族にあげています。これでほぼはけます! しかも、パートさんにあげると喜ばれます。自分たちが手をかけている作物を、新鮮な状態でもらえるのが嬉しいそうです。
少ない量の規格外野菜を苦労して売ってお金にせずとも、働いてくれている人に喜んでもらえるのであれば、規格外野菜のいいさばき方といえますよね!
補足ですが、私の場合はあくまでも福利厚生の一環としてあげているので、全く関係のない方には規格外野菜は出せません!
③畑に返すのが有効だから
三つ目は、規格外野菜を畑にすき込んで土に還すのも有効だからです。
一見食べられそうな野菜を畑に捨てて、トラクターで潰してしまう映像を見たことがある方は多いでしょう。
ショッキングな映像ですが、農業にとっては無意味ではなく、むしろ有効な方法なのです。
なぜなら、潰された野菜が微生物の餌になるからです(病害虫や腐熟期間の確保など、後作のことも考慮に入れる必要があります)。
この方法は出荷調整の時間もかからずに手っ取り早いですし、土づくりにも貢献します。
これらのメリットも大きいので、規格外野菜を畑にすき込むことを選択する農家も多いのです。
④規格外が正品の価格の足を引っ張る可能性があるから
四つ目は、規格外野菜を安価で売りさばいてしまうと、回り回って正品の野菜の価格にも悪影響が出る可能性があるからです。
規格外野菜は安ければ売り先があるかもしれませんが、それで満たされた分の正品を含めた全体の野菜の需要は減ります。
低品質の野菜が出回り流通量が増えると、野菜の価格は安くなる傾向にあります。
規格外が正品の価格の足を引っ張ることにもなりかねないのです。
規格外について、あるJAの販売担当者は「市場や産直とかに規格外が大量に出る時期があるけど、それが減ればもう少し有利な販売価格の交渉ができるんだけどなあ」と言っていました。
それだけ規格外が、正品の需要を食ってしまっているということなのでしょう。
「悪貨が良貨を駆逐する」。この言葉は、野菜にも当てはまるのです。
規格外野菜の売り方や、出さないための対策
断っておきますが、私は「規格外野菜は絶対に売るな!」と言っているわけではありません。安売りにならない販路や戦略があれば、全然問題ないでしょう。例えば、以下のような工夫が挙げられます。
- 規格外野菜の売り方や価格を前もって決めて栽培する
- 規格不選別で買い取ってもらえる業者に売る
- 6次産業化(農家自ら野菜を加工販売すること)して規格外を加工販売する
そして何より一番シンプルな対策は、これに尽きます。
- しっかり栽培する!
どんな作物でも規格外は一定数出てしまいますが、防除を怠ったり管理作業が甘かったりすると、途端にその数は多くなる傾向にあります。台風などの災害で、不幸にも大量に出てしまうこともありますが、それは農家が悩んでもどうしようもない所です。
当たり前のことですが、栽培を軽視してはいけませんね。
この記事で、少しでも農業や規格外野菜に対する視点が変わってくれれば嬉しいです。