働くルールを決めることが重要
納口さんは北海道大学で農学博士を取得。農林水産省農業研究センターなどを経て、2000年に筑波大学助教授として着任、2009年に同教授に就任した。22年4月から現職。長年にわたり農業法人の経営者と交流があり、従業員の満足度に関する調査などを手がけてきた。
従業員の雇用に際し、農業法人には何が求められるのか。この質問に対し、納口さんはまず「法人化していない家族経営でも、配偶者や子どもたちが経営にどう参加するか、労働条件をどうするかが重要になっている」と答えた。
かつては家制度の中で、家長が経営を担い、家族はそれに従うのが当然という考え方だった。社会が変化し、家族経営でもそうしたやり方は通用しなくなった。労働条件などを話し合い、家族の間できちんとルールを決める。それを曖昧にしたままで経営するのは難しくなっていると、納口さんは指摘する。
「ましてや農業法人の存在感が高まる中で、従業員が働く際の約束ごとをきちんと定め、モチベーションを保って働いてもらうことは一層重要になっている」。スタッフの満足度に関する納口さんの話は、ここから本題に入った。
独立型と長期雇用型でニーズに違い
納口さんが挙げた最初のテーマは、従業員が何に関心を持っているかだ。それに応えることができるかどうかが、働く満足度を左右するという。
納口さんは、従業員を2つのタイプに分類してその内容を説明した。いずれ独立して自ら経営者になるのを前提に農業法人で働いている人と、同じ農業法人で長期間働き続けることを希望している人の2種類だ。