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腐葉土とは? 培養土や堆肥との違い、使い方や注意点、商品選びのコツまで徹底解説

腐葉土とは? 培養土や堆肥との違い、使い方や注意点、商品選びのコツまで徹底解説

家庭菜園では土づくりが大事だと言われます。土づくりがしっかりできていないと、植物は病気になったり、あまり実をつけなかったり、健康に育つことができません。ただ実際問題、いい土づくりにはどのようなことをすればいいのか、よくわからない人も多いのではないでしょうか。生き物を相手にする農業はとても複雑で、一つひとつの要素を丁寧に理解していく必要があります。本記事では、土づくりに必要な資材である腐葉土について、効果や選び方、使い方の注意点などを詳しく解説します。植物が健康に育つ土を作るために、ぜひ参考にしてください。

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腐葉土とは何? わかりやすく簡単に解説

腐葉土とは、落ち葉がミミズや微生物、バクテリアなどによって分解・発酵されて土状になったものです。腐葉土は堆肥の一種であり、肥料や土壌改良材として園芸農業やガーデニングなどに使われます。

「土」という文字が入っていますが、そのまま土壌として使うものではありません。赤玉土や黒土といった基本となる土と混ぜ合わせて使用します。

栄養分は少ないため、一般的には肥料としてではなく、土をふかふかにしたり、通気性や保水性を高めたりする土壌改良材として用いられます。

落ち葉など自然界に存在するものが原料ですが、農業資材としてホームセンターなどでも販売されています。

腐葉土は、培養土や堆肥などと混同されるケースが多いので、まずは腐葉土と似た資材との違いから解説していきます。

よく間違われる? 腐葉土と培養土の違い

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腐葉土とよく間違われる資材に培養土があります。名前が似ていることや、ホームセンターで同じコーナーに売られていることなどが混同されてしまう理由かもしれません。

しかし、腐葉土と培養土は、それぞれ用途も効果も全く異なるものです。

家庭菜園・ガーデニング用の土の基本

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腐葉土と培養土の違いを理解していただくために、まずはガーデニングで用いる土の基本について解説したいと思います。ガーデニング用の土は、基本用土と補助用土の二つを混ぜ合わせて作るのが基本です。

基本用土とは、土壌の50%以上を構成する土のこと。通気性、保水性、保肥性などを高めることが目的で、肥料成分は含んでいません。

一方の補助用土は、基本用土に混ぜ合わせて使うものです。栽培する特定の植物に合わせて通気性などをさらに整えるとともに、肥料成分を補充する役割もあります。

基本用土+補助用土=培養土

培養土とは特定の植物を栽培する目的で、この基本用土と補助用土を混ぜ合わせて作られた土のことです。

ガーデニング用には「花と野菜」というくくりの汎用(はんよう)的な培養土が売られていることが多いですが、中には、観葉植物用、挿し木・種まき用といった専用の培養土もあります。特定の植物品目や、特定の栽培工程のために作られた培養土があるので、目的に合ったものを選ぶ必要があります。

腐葉土=補助用土

一方で腐葉土は補助用土に分類されます。基本用土に混ぜ合わせて使われるものです。腐葉土は通気性、保水性、保肥性に優れており、また有機質の資材であるという特徴を持っています。

ただし、あくまで補助用土なので、そのまま土として使うことはできません。

つまり、培養土はそのまま栽培に使える土である一方、腐葉土は補助用土の一つに過ぎないため、それだけでは栽培に使えない土という点が、培養土と腐葉土の用途の違いです。

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同じ肥料だけど実は違う? 腐葉土と堆肥の違い

腐葉土は堆肥の一種ですが、動物性の堆肥とは異なります。腐葉土以外の堆肥とは主に次のような違いがあります。

1.原料の違い
2.発酵の具合
3.栄養や効果

腐葉土を正しく使うために、これらの違いを正しく理解しておきましょう。それぞれ詳しく説明していきます。

1.原料の違い

まずは原料の違いについてです。
堆肥とは、動植物などの有機物を分解させて、成分的に安定するまで発酵したものをいいます。

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原料としては、落ち葉や樹皮といった植物由来のものだけではなく、家畜のふん尿、食品残渣(ざんさ)なども含みます。あくまで腐葉土は堆肥の一部であるということです。

2.発酵の具合

堆肥はミミズ、微生物、バクテリアなどによって有機物が分解・発酵されることでできますが、原料によって発酵の具合にも違いがあります。

腐葉土は発酵の過程で一時的に葉の温度が50度を超えることもありますが、それ以上高温になることはなく、1年ほどかけてゆっくりと発酵していきます。

一方、家畜のふん尿は、60度以上にまで温度が上がり、2カ月程度という短期間で堆肥となります。高温に上がることにより、水分が蒸発し、病原菌や寄生虫、雑草の種などが死滅して、サラサラの衛生的な堆肥になります。

腐葉土はそこまで温度が上がらないので、水分が多く、病原菌や雑草の種も生き残っていることがあります。

3.栄養や効果

堆肥は、その種類によって原料が異なるため、肥料としての栄養分も変わってきます。チッソ、リン酸、カリウムといった三大栄養素の成分量も違います。

また、腐葉土が繊維質であるのに対して、家畜ふん尿堆肥が粒状でサラサラしているという違いから、保水性や通気性などの効果にも差があります。

腐葉土と堆肥の違いを深堀り! バーク堆肥・牛ふん堆肥との比較

前章で説明したように、腐葉土は堆肥の一種で、落ち葉以外にもさまざまな原料の堆肥があります。

では、腐葉土と、腐葉土以外の堆肥とはどのような違いがあるのでしょうか。バーク堆肥、牛ふん堆肥との違いから、腐葉土の特徴をさらに深堀りします。

バーク堆肥との違い

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バーク(bark)は樹皮という意味で、バーク堆肥とは樹木の皮を堆積(たいせき)・発酵させて作られた堆肥です。植物が原料である点で腐葉土と似ていますが、落ち葉と比べると樹皮は硬いため、分解されるのが遅く、微生物がとどまりやすいという特徴があります。

通気性、保水性、保肥性に優れている点で腐葉土と同じ効果を持っていますが、分解されにくいバーク堆肥はこれら土壌改良効果が長く続きます。また、バーク堆肥は繊維状の植物体を多く含むため、保水性も高くなります。

牛ふん堆肥との違い

牛ふん堆肥は、牛のふん尿に稲わらやバークなどの植物由来の有機物を混ぜて堆積・発酵させたものです。草食である牛のふん尿は繊維質の成分が豊富で、土を団粒構造化させてふかふかにします。

通気性、透水性、保水性が高く、土壌改良材として優秀な資材です。ただし、腐葉土と比べると含まれる繊維が少なく、土壌改良効果は小さくなります。

一方で、牛ふんはチッソを多く含んでおり、腐葉土よりも肥料の効果は高くなります。腐葉土やバーク材などの植物由来の堆肥と合わせて施用することでバランスの取れた堆肥になるでしょう。

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腐葉土の効果とは? 主な三つの効果

ここからは、腐葉土の効果について紹介します。主に、以下の三つに効果があるとされています。

1.通気性や水はけの向上
2.微生物の活性化
3.マルチング効果

1.通気性や水はけの向上

腐葉土には、通気性や水はけの向上といった土壌改良効果があります。他にも、保水性や保肥性が高くなる作用もあります。

例えば、植物は根でも呼吸をしているので、通気性が悪いと根が呼吸できなくなり、根腐れの原因になります。また、水はけが悪いと大雨が降った後に土壌中の水分が流れずにとどまり、やはり根が呼吸できなくなりますし、水分を好むカビの胞子や細菌が活発に動き回って病気が発生するリスクも増します。

つまり腐葉土には、植物の生育に必要な土壌の物理的な構造を整える効果があるといえます。

2.微生物の活性化

腐葉土には土壌中の微生物を活性化する働きもあります。腐葉土自体には肥料効果はそれほどありません。しかし、腐葉土による通気性の効果や、腐葉土内の植物体それ自体が微生物にとって住み心地の良い環境となり、微生物が増加・活発化します。

微生物は土壌の有機物を分解して植物に養分を供給してくれます。また、植物の病気や連作障害の原因となる病原菌から守ってくれる働きもします。

化学肥料・農薬を極力減らしていくことを目標に掲げる昨今の循環型農業においても、土壌微生物の働きは注目されています。

3.マルチング効果

植物の株元を覆うように、土壌の表面に腐葉土を敷き詰めることでマルチング効果が得られます。一般的には「マルチ」と省略して呼ばれています。

マルチングには、保温・保湿、雑草の抑制、病気の予防、土壌の保護など、作物を育てる上での多くのメリットがあります。

土壌中にはさまざまな病原菌が住んでいて、大雨が降ると土がはね返って植物の葉に付着し、そこから病気が発生することがあります。また、雨が直接土に当たると、土の団粒構造が壊れたり、肥料分が流出したりしてしまいます。マルチングをすることで、そうした雨による被害を抑えることができます。

腐葉土の使い方とは? 実は意外な用途もある!

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では、腐葉土は家庭菜園やガーデニングなどでどのように使うのでしょうか。実は、植物の栽培の他にも、意外な用途があります。

1.基本的な使い方は「土に混ぜる」
2.ビニール代わりの「マルチング」
3.意外な使い道「カブトムシの飼育」

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.基本的な使い方は「土に混ぜる」

基本的に、腐葉土は堆肥として土に混ぜて使います。通気性などの土壌改良効果や、微生物の活性化など、植物の生育に関わる腐葉土の役割や効果は、土壌に混ぜ込むことでその力を発揮します。

補助用土である腐葉土は、最初の土づくりの段階では基本用土と混ぜて使います。割合は「土2:腐葉土1」が好ましいです。

ただし、腐葉土を入れすぎると、植物が根を張りにくくなったり、排水性が高くなりすぎてしまったりと、かえって植物にとってマイナスの影響を及ぼします。腐葉土を入れる際には、土の状態を見ながら適切な量を混ぜましょう。
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2.ビニール代わりの「マルチング」にも

前章でも説明したように、腐葉土は土の表面に敷き詰めることでマルチングの効果が得られます。3~4センチの厚さで土を覆うようにしましょう。

腐葉土でマルチングを行うと、いずれ土に還るメリットがあります。ビニール製のマルチは、使用後にゴミになってしまうため、腐葉土を用いたほうが自然環境への負荷は少なくなります。

ただし、腐葉土をマルチとして用いると、コガネムシやヨトウムシなどのすみかとなったり、産卵場所となったりしてしまう恐れがあります。どちらも植物にとっては食害を加える害虫なので、発生しやすい地域での腐葉土マルチには注意が必要です。

3.意外な使い道「カブトムシの飼育」

家庭菜園・ガーデニングの用途とは異なりますが、腐葉土はカブトムシの飼育にも使うことができます。「カブトムシ用」という表記のないガーデニング用の腐葉土でも飼育材として使えます。

ただし、腐葉土をカブトムシの飼育に使う際には二つ注意点があります。一つは、殺虫剤などが使われていないこと。もう一つは広葉樹だけを使用した腐葉土であることです。

殺虫成分が含まれている腐葉土を用いると、カブトムシの幼虫が死んでしまう可能性があります。また、針葉樹には虫の嫌う成分を含むものがあるため、カブトムシの健康を考えると好ましくありません。

購入する際は、袋の表記を見るか、お店のスタッフさんに聞くなどして確認しましょう。

腐葉土を買う前に! 質のいい腐葉土を選ぶコツ

家庭菜園・ガーデニング用の腐葉土にはさまざまな種類があり、購入する際にはどれがいいのか迷ってしまうかもしれません。

質のいい腐葉土の選び方には次のようなコツがあります。

1.発酵して葉の形が崩れている
2.イヤな臭いがしない
3.安すぎるものは避ける

それぞれ詳しく解説します。

1.発酵して葉の形が崩れている

落ち葉が発酵して腐葉土になるまでには数カ月単位の長い時間がかかります。落ち葉は長い時間をかけて朽ち、形を崩していきますが、中には葉の形がそのまま残っているような腐葉土が売られていることがあります。それは発酵が不十分である可能性があります。

発酵し、葉の原形がなくなっている腐葉土を選びましょう。

2.イヤな臭いがしない

しっかりと発酵・分解された腐葉土はイヤなにおいがしません。未熟な腐葉土の場合、腐敗臭やカビ臭、酸っぱい刺激臭などを発していることがあります。
購入前に臭いを嗅ぐことは難しいかもしれませんが、ネットショップでのレビューを参考にするのも一つの方法です。

3.安すぎるものは避ける

相場よりも安すぎる腐葉土は避けたほうがいいかもしれません。
安すぎる腐葉土は、コストを下げるために海外の落ち葉で殺虫剤が使われているものだったり、発酵具合の不明なバーク堆肥が混ざっていたり、何かしら安価になっている理由があると考えられます。相場に合った製品や信頼できるメーカーの腐葉土を選んだほうが確実です。

腐葉土の価格相場はいくら?

腐葉土は2Lや5Lといった小型のものから、25Lや40Lといった大型のものまで販売されています。

ホームセンターで購入する場合は、25L入りで1袋500~600円程度が相場です。
インターネットで購入する場合は、25L入りで1袋1400~1800円程度になります。

ネット通販が高くなるのは、梱包資材と送料が含まれているためと考えられます。掲載の価格からさらに送料がかかる商品もあります。

ネット通販は大型の袋を自宅まで送ってもらえるメリットはありますが、近くのホームセンターで購入したほうが、価格を安く抑えられる可能性があります。

腐葉土の使い方や選び方でよくある質問

腐葉土の使い方や選び方などで、まだまだ不安なことがあるかもしれません。
よくある質問をいくつかまとめました。

Q.腐葉土と石灰は同時にまいていいの?

腐葉土と石灰は同時にまいても大丈夫です。
石灰は、豚ぷんなど窒素成分の高い堆肥を混ぜると化学変化を起こす可能性がありますが、腐葉土の窒素成分は微量なのでほぼ影響はありません。

Q.腐葉土はまくだけでも効果はある?

基本的に、腐葉土は土に混ぜ込むことで、土壌改良や微生物の活性化につながるものです。土の表面にまくだけだと、マルチングの効果はあるかもしれませんが、土壌改良材としての効果は期待できません。

Q.腐葉土は自分でも作れる?

腐葉土は自分でも作れます。身近にあるものだけで腐葉土づくりに取り組めます。
詳しくは下記の記事を参考にしてください。

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腐葉土は、土壌の通気性、保水性、保肥性などを高め、植物が成長しやすい環境を整えるために有効な農業資材です。また、有機物の分解や、病害虫・連作障害の抑制といった働きをする微生物を活性化する力もあります。土づくりには欠かせないものといっていいでしょう。

腐葉土は落ち葉を堆積・発酵させて作られますが、発酵具合が不十分だと植物の成長に影響が出る恐れがあります。腐葉土は質のいいものを選ぶようにしてください。

腐葉土の効果と使い方を正しく理解し、健康な野菜や花を育てましょう。

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