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規格品も規格外品も同じ値段、生産者が納得する農産物流通のわけ

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

規格品も規格外品も同じ値段、生産者が納得する農産物流通のわけ

曲がっていたり、少し傷がついていたりして規格に合わない農産物をどうするか。昔からある食品流通の課題だ。解決策のひとつは、農家が納得する値段で規格外品も買い取ること。農産物の卸売会社、コロット(埼玉県所沢市)を運営する峯岸祐高(みねぎし・ゆたか)さんはこの取り組みを各地に広げることで、地方の農家と買い手をウィンウィンの関係でつなげようとしている。

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選別が要らないのでコスト大幅減

コロットは峯岸さんが2010年に設立した。事業内容に「地域特化型野菜コーディネート事業」を掲げ、主に埼玉県や東京都の農家から農産物を仕入れ、埼玉や東京の飲食店などに販売している。祖父母の住んでいた古民家で民宿を運営しているほか、レストランも経営している。

コロットでは規格外品をどう扱っているのか。それを理解するために、2020年に宮崎県の農家のAさんから仕入れ始めた規格外のミニトマトの例を取り上げたい。

地域密着で農産物を販売してきた峯岸さんが宮崎から仕入れるようになったのは、Aさんの実家が所沢市にあるという縁からだ。知人の紹介でつながりができ、まず農協を通して規格品を仕入れてみた。6~7年前のことだ。

この取引はそれほど長く続かずに終わった。2020年から改めて取引が始まったのは、Aさんが規格外のミニトマトをたくさん廃棄していることを知ったのがきっかけだ。Aさんが廃棄していたのは、農協が示した規格と比べてほんの少し小さかったり、ちょっと傷がついていたり、ヘタがとれていたりするトマトだ。

峯岸

峯岸祐高さん。手に持っているのは宮崎の農家から仕入れた規格外のミニトマト

規格外のトマトを農協に出しても引き取ってもらえないので、Aさんはやむなく廃棄していた。そのころ、農協以外に売り先がなかったからだ。そのトマトを見せてもらった峯岸さんは「これが規格外になるなんて信じられない」と思ったという。形がゆがんでいたり、大きな傷がついていたりするわけではなく、規格品との違いがほとんどなかったからだ。

2020年にスタートした取引は、3つの段階を経て拡大してきた。1年目はAさんの要望に応える形で、規格外品だけを買い入れた。

2年目は規格外品だけでなく、規格品も仕入れるようになった。ただしAさんは2つを別々に送ってきた。当時は規格品をまだかなり農協に出荷しており、両者を分けて出荷する作業の流れができていたからだろう。

そして3年目からは規格外品と規格品を分けずに送ってくるようになった。選別の手間が省けるので、Aさんにとっては大幅な経費削減になる。この時点で、峯岸さんはAさんにとってメインの売り先になっていた。

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