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「1人で戦う時代じゃない」 10年先を見据えた成長戦略は“仲間づくり”

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

「1人で戦う時代じゃない」 10年先を見据えた成長戦略は“仲間づくり”

篠塚佳典(しのつか・よしのり)さんが代表を務める農業法人、芝山農園(千葉県香取市)は自ら野菜を栽培するだけでなく、各地の農家からも仕入れて事業を大きくしてきた。経営を貫くコンセプトは「仲間づくり」。芝山さんが新たな仲間を集め、この先の10年を見据えて描く構想を紹介しよう。

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農業法人同士でOEM

芝山農園はサツマイモやダイコン、ニンジンが主な栽培品目。売り先はコンビニや生協、スーパーなどで、年間の売上高は約6億円。野菜の加工を手がける関連会社などを合わせると、グループの売上高は約13億円に達している。

自社生産に加え、各地の農家からサツマイモやニンジンを仕入れて販売する手法が成長を支えてきた。仲間を増やせたのは、知人の農家の紹介のおかげ。考えが一致する農家のネットワークをつくり、年間を通して同じ品目を切らさずに出荷する産地リレーを実現した。

他の農家とのさまざまな連携を可能にしているのが、本社に隣接する広大な敷地内につくった「しばやまインダストリアルパーク」だ。まず2015年に野菜のカット工場を建て、さらに漬物工場や貯蔵庫なども建設してきた。篠塚さんはここを他の農家と共同で利用するための施設と位置づけた。

しばやまインダストリアルパーク

その成果が6次産業化での連携だ。組んだ相手は同じ地域にある有力な農業法人で、事業規模は芝山農園より大きい。その代表に対し、篠塚さんは「地域で一緒にやっていきましょう」と呼びかけ、サツマイモの加工を提案した。

具体的には、その農業法人が育てたサツマイモの焼き芋への加工を、しばやまインダストリアルパークが受託する。一方、相手は干し芋の加工工場を持っているので、芝山農園のサツマイモの干し芋への加工は相手に委託する。OEM(相手先ブランドによる生産)を農業法人が相互に手がける珍しい手法だ。

芝山農園と相手の農業法人はいずれもサツマイモをつくっており、本来なら競合する関係にある。にもかかわらず、加工施設をお互いに利用し合うことでなぜ合意できたのか。その点について聞くと、篠塚さんは「紳士協定が成り立つから」と説明した。売り先が重ならないようにするのは可能という意味だ。

連携を持ちかける際、篠塚さんがとくに強調したのが、重複投資を避けることのメリットだ。両者が似たような施設をそれぞれつくるのと比べ、連携したほうが加工品の幅を広げ、事業を大きくするスピードが格段に速まる。その意義を確認し、売り先を取り合うのを避けることで意見が一致した。

焼き芋の製造機(芝山農園のホームページより)

天候リスク回避へ地域で連携

篠塚さんはこれまで各地の農家と産地リレーを組むことで、事業を大きくしてきた。だが現在は、サツマイモの加工で地元の有力な農業法人と組んだことが示すように、同じ地域の事業者と設備投資で連携することへの関心を強めている。

背景には、鮮度のいい作物を各地から仕入れて事業を拡大する手法について、篠塚さんが感じ始めた難しさがある。今後も産地リレーの大切さは変わらないし、仕入れを縮小したいと思っているわけではない。だが篠塚さんは「これから10年の農業ビジネスのことを考える必要がある」と強調する。

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