藻類の可能性を追求して新たな地域産業を創出!
藻類と言われて、まず多くの方が思い浮かべるのは海苔や昆布、わかめなどの海藻類ではないでしょうか。また、同時にクロレラやミドリムシなど、健康食品や化粧品などの原料となる微細藻類をイメージされる方も多いと思います。この藻類のスゴイところは、ただ単に美味しかったり、人間のカラダに良い影響を及ぼす成分が含まれているだけではありません。
全世界が一丸となってカーボンニュートラルの実現をめざしている現在、注目されているのは光合成によってCO2を取り込んで貯蔵し、酸素を放出する藻類の働き。そのCO2吸収効率は、なんとイネ科植物の数十倍と言われています。また、窒素やリンを回収する水質浄化能力があるというところも、その大きな特徴だと言えるでしょう。
さらに、この微細藻類はすでに製品化されているサプリメントや食品、化粧品などの原料になるだけではなく、繊維や飼料、医薬品、ジェット燃料にも活用することができ、近年はその研究・開発が急速に進められているのです。バイオマス産業都市をめざし、全国に先駆けて廃棄物焼却施設から排出されるガスから純度99.5%以上、食品添加物の基準もクリアしたCO2を分離回収するCCU設備※を導入した佐賀市では、このCO2を活用して藻類を培養し、産業化するプロジェクトを推進しているところ。もはや世界的課題となっている「環境保全」と「経済発展」の両立。その実現に向け、佐賀市では産学官が連携して、この藻類の可能性を追求しているのです。
※発電や産業活動で排出されるCO2を回収し、活用するための設備
藻類のチカラを利用して高付加価値の卵づくりに成功
持続可能な社会づくりにおいて大きな役割が期待されるこの藻類を活用し、産学官が連携して新産業を創出するために、佐賀市は2017年に『さが藻類バイオマス協議会』を設立。会員企業に向けた情報発信やビジネス支援、ビジネスマッチング、佐賀大学との連携による研究やワークショップ、人材育成などを実施しています。また、筑波大学の研究者を招聘(しょうへい)し、佐賀大学内に『さが藻類産業研究開発センター』を整備。この組織と研究体制のふたつが相互に連携を図りながら、藻類の培養(第1次産業)から有効成分の抽出・製品加工(第2次産業)、そして流通・販売(第3次産業)まで、つまり6次産業化を推進しています。
『佐賀市清掃工場』がCCU設備を通じて供給するCO2を活用して藻類(ヘマトコッカス)を培養している株式会社アルビータ。(同社では、培養したヘマトコッカスから強い抗酸化作用を持つアスタキサンチンを抽出し、それを化粧品やサプリメントなどへと商品展開しています。)さらにこのヘマトコッカスを飼料として鶏に与え、その卵を商品化したという事例が生まれています。
佐賀市の仲介によりこのヘマトコッカスに興味を抱いたのは、佐賀市内でベーカリーや洋菓子店を展開する有限会社ムーラン・ルージュの石井利英社長。洋菓子に使う卵にこだわるため、佐賀市三瀬村に養鶏場を立ち上げ、美味しく独自性のある卵づくりを試行錯誤していたところに、この話が舞い込んできたのです。
収穫したヘマトコッカスを乾燥させてフレーク状にしたものを鶏に飼料として与えてみると、生まれてきた卵からは抗酸化成分であるアスタキサンチンが検出されました。こうして開発された『壮健美卵』を使った卵かけごはん専門店『サーグラ』や洋菓子店『パティスリーシュシュ』の看板商品のバームクーヘン『三瀬バウム』は、TVや新聞など大手メディアにも数多く取り上げられ、現在では地球にとっても人間のカラダにとってもやさしいレストラン・商品として認知されています。
高校生たちのアイデアが地域社会の未来を変える?
アスタキサンチンを含んだ画期的な卵が誕生した背景について、『さが藻類バイオマス協議会』の中溝康介さんは、「これは市内の高校生が発案したアイデアから生まれたものなんですよ」と教えてくれました。高校生による政策提言コンテストで最優秀賞を獲得したのは、「全国的に知られている佐賀名物のムツゴロウは海中の藻を食べて育つから、『佐賀市清掃工場』が供給しているCO2で育った藻類をムツゴロウのエサにし、そのムツゴロウを活用して佐賀をPRしてはどうか」という提言。とは言え、ムツゴロウは養殖されている魚ではありません。また、株式会社アルビータが培養している藻類は、海洋性ではなく淡水性です。そこで発想を少し変え、藻類をエサにするというアイデアを有限会社ムーラン・ルージュの卵へと応用して生まれたのが『壮健美卵』です。
「実は高校生たちと話をした時、『こんなアイデアを提言しても結局は何も実現されないんでしょ』といったニュアンスの発言があったんです。そんなことを言われてしまうと、『じゃあ大人たちの本気を見せてやろう』となりますよね(笑)」と、中溝さんは当時の舞台裏を明かしてくれました。脱炭素社会、持続可能な社会というのは、当然ながら一朝一夕につくり上げられるものではありません。その技術や思いを次世代へと引き継ぎながら、長期的な視野で進めていかなければならないものです。だからこそ、未来を担う高校生たちに夢を与える佐賀市のこうした心意気も、また評価されて然るべきではないでしょうか。
【動画もチェック!】SDGs 高校生が発案~CO2活用で優れた食材に 佐賀市
企業が藻類ビジネスを展開するには最適なフィールド!
今回、高校生たちを招いて説明会をおこなったのも、佐賀市の取り組みをより深く地域の未来を担う若者に伝えるため。参加した高校生たちからは、
Cさん
Dさん
といった感想が聞かれました。
前述した国内の大手メディアはもちろん、海外のメディアにも数多く取り上げられるなど、佐賀市のバイオマス事業への注目度は日に日に高まっており、企業が地方自治体の取り組みを応援する企業版ふるさと納税は2021年度には2千万円を超えたそう。事業の窓口となるバイオマス産業推進課では、視察や講演の依頼にも対応しています。2021年度の視察・講演実績は、なんと104件。また、「さが藻類バイオマス協議会」には、世界的な「脱炭素」の流れを受けてCO2の有効活用を模索する大手企業も続々と参加しており、現在加盟社は74社に達しています。「藻類関連の事業を推進させるために佐賀市へ進出したい!」「バイオマス関連で提携できるパートナーを探している」という企業の方は、まずは窓口に問い合わせてみてはいかがでしょうか?
■お問い合わせ■
佐賀市 バイオマス産業推進課 政策推進係
〒849-0919 佐賀県佐賀市兵庫北三丁目8番36号 佐賀市保健福祉会館2階
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Mail:biomass@city.saga.lg.jp