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落花生の育て方。畑・プランター別の栽培方法や注意点を解説

鮫島 理央

ライター:

落花生の育て方。畑・プランター別の栽培方法や注意点を解説

おやつやおつまみとして愛されている落花生。栽培難易度も高くなく、ポイントを守って育てれば、家庭菜園でも十分に栽培を楽しめる作物です。プランターでも畑でも栽培ができる作物ですが、低温には弱く鳥の食害を受けやすいという注意点も。本記事では、落花生の種まきから収穫まで詳しく解説していきます。採れたての落花生はそのまま茹でて食べてもクリーミーで美味しいので、ぜひ本記事を参考にして栽培に挑戦してみてください。

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落花生とはどんな野菜? 名前の由来や栄養価など

植物名 科名 原産地 草丈 耐寒性 耐暑性 花色 開花時期 栽培期間 生育適温 土壌酸度
落花生 マメ科 南米 25~50cm 黄色 6月下旬 5~10月 15~25℃ 6.0~6.5pH

落花生は南米原産の植物で、マメ科の一年草です。日本にはじめて落花生がやってきたのは18世紀初頭のことで、中国から伝わったと言われています。

一般的に食べられている品種の栽培が始まったのは、明治4年のこと。現在は千葉県が産地として有名ですが、国内最初の栽培は神奈川県で行われたといいます。

名前の由来は、花が咲いたあと地面に落ちるようにして子房柄を伸ばし、実をつけたことから落花生という名前がつけられました。

また栄養価が非常に高く、高カロリー食品としても知られています。悪玉コレステロールを抑制してくれるオレイン酸や、生活習慣病予防に役立つビタミンE、お通じに良い食物繊維やミネラル類も豊富で、体にとても良い食品の1つです。

北海道や東北などの寒冷地でも育てられる

千葉県や茨城県など比較的温暖な地域で栽培されることが多い落花生ですが、北海道や東北などの寒冷地でも育てることができます。

落花生の発芽適温は20℃前後、栽培適温は15~25℃ほどです。温暖地であればそれほど気を配る必要はありませんが、寒冷地で栽培する時は、適温を下回らないように寒冷紗をかけたり、トンネルや黒マルチで地温の確保をしてあげなくてはなりません。

なお、落花生は鳥による食害が多く発生する野菜です。寒冷地以外の地域でも、寒冷紗やトンネルで株を保護してあげることで、収穫量を確保することが出来るでしょう。

落花生とピーナツの違いって?

「落花生とピーナツの違いってなんだろう」というのは、よくある疑問ではないでしょうか。

実は、落花生もピーナツも植物としては全く同じものを指し示します。では何が違うのかというと、その状態によって呼び分けているのです。

日本では、殻に入った状態のものを落花生、剥き身になったものをピーナツと呼んでいます。またピーナツバターなど洋風なものではピーナツと、和食などで使用する時は落花生と呼び分けることもあるようです。

落花生の栽培環境! 日当たりの良さと温度がポイント

落花生は日当たりがよく温かい場所を好みます。栽培適温が15~25℃であるように、寒すぎたり熱すぎたりと、極端な環境ではうまく育ちません。

畑で栽培する際は、一日よく日が当たる場所を選んで植えましょう。また雑草管理と地温確保のために黒マルチを敷くと良いでしょう。マルチは花が咲き、子房柄が伸びる前に撤去しますが、それまでは敷いていて大丈夫です。

なお、落花生は粘土質の土を嫌う性質があるため注意が必要。土壌の状態を事前に確認して栽培しましょう。

落花生を育てる時の注意点

落花生を育てるときに注意すべきことは以下の5点です。

1.種まきの時期は地域によって異なる
2.日当たりと気温がポイント! 寒冷地ではマルチを活用
3.水のやり過ぎは注意! 乾燥したら与えるくらいでOK
4.肥料は控えめがコツ! 窒素よりカリを多めに
5.土寄せ必須! 根本に土がないとさやがつかない

それぞれ詳しく解説していきます。

1.種まきの時期は地域によって異なる

落花生の種が発芽するには、15℃以上の気温が必要になります。地域によって暖かい・寒いがあるので、それぞれ種まきの時期も変わってきます。

関東や関西、近畿などの温暖地(一般地)は5月頭~6月頭まで。北海道や東北など寒冷地は、5月中旬~6月頭まで。九州や四国など暖地は4月下旬~6月頭までが、それぞれ種まきのシーズンとなります。

なお、山間部や海沿いなど、住んでいる地域によっては上の区分に当てはまらないこともあるので、事前にしっかり確認しましょう。

2.日当たりと気温がポイント! 寒冷地ではマルチを活用

落花生の収量を上げるためには、長い日照時間と暖かい気温が必要です。
15~25℃の気温を好むので、寒冷地ではマルチングをして地温を確保するようにしましょう。

また、家庭菜園などでは特定の時間帯に、近隣の住宅やマンションなどの影に隠れてしまうということも考えられます。栽培する場所には気をつけましょう。

3.水のやり過ぎは注意! 乾燥したら与えるくらいでOK

水のやり過ぎにも注意が必要です。特に地植えの場合、落花生を定植・種まきするときにたっぷりと水をやれば、後は自然降雨に任せて問題ありません。もし、晴天が続き土の表面がサラサラになるまで乾いていたら水をあげましょう。

一方、プランターで栽培する場合は毎朝の水やりが必要になります。真夏の暑い時期は、朝夕の2回、水やりを行います。プランターや鉢植えは畑と比べ乾きやすいので、様子を見ながら灌水しましょう。

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4.肥料は控えめがコツ! 窒素よりカリを多めに

落花生などのマメ科植物は、根粒菌と呼ばれる共生菌が根についています。この根粒菌は窒素を植物に供給する働きがあるので、肥料をやる際は窒素成分が少ないものを与えるとよりよいでしょう。

また、肥料が多すぎるとつるボケのような状態になって実付きが悪くなります。普段から耕作している土地であれば、元肥は控えめで構いません。詳しい肥料のやり方については、後ほど詳しく解説していきます。

5.土寄せ必須! 根本に土がないとさやがつかない


落花生栽培で最も大切な作業と言っても過言ではないのが土寄せ。落花生は、花が咲いて受粉すると、子房柄というつるを地面に伸ばし土中で実をつけます。このため土が遠かったり、硬かったりするとうまく結実せず、全く収穫できないという事態になってしまうことも。美味しい落花生を作るためには、必ず土寄せを行いましょう。

落花生が発芽しない原因と対処法

1.発芽適温に達していない

落花生が発芽するためには、20℃前後の地温が必要です。それ以下の場合は発芽しなかったり、発芽が揃わなかったりします。

マルチングをして地温を確保したり、適した時期に種まきを行いましょう。

2.鳥獣の被害を受けている

落花生の種はカラスやハトの格好の標的です。少し土をかけた程度ではほじくり返されてしまいます。種まき後は保温や害虫対策も兼ねて寒冷紗をかけましょう。

3.水やりのしすぎ

地植えは種まき時にたっぷり水をやった後は、降雨に任せて構いません。プランターのみ毎朝水やりを行います。

4.土壌が落花生にあっていない

落花生は水はけのいい土を好みます。粘土質の土や、栄養素が少なすぎたり多すぎたりする土では腐ってしまいます。元肥は控えめに、堆肥を事前に多く入れて土壌を改良すると良いでしょう。

落花生を畑で育てる時の流れ


実際に落花生を栽培する時の手順は次の通りです。


1.畑の土作り
2.種まき
3.鳥よけ設置
4.水やり
5.土寄せ・追肥
6.収穫
7.保存

以上の手順について、詳しく解説していきます。

1.畑の土作り

植え付けの2週間前までに、苦土石灰を1平方メートルあたり200グラムまき、鋤き込みます。

植え付け1週間前までに、化成肥料(窒素3:リン10:カリ10)を1平方メートルあたり100グラム、堆肥を2キログラムまいてよく耕します。また化成肥料の代わりに、ボカシ肥を使っても構いません。

畝は幅70センチ、高さ10センチほどに仕立てると良いでしょう。この時、黒マルチを先に敷いておくと後が便利です。

2.種まき

植え穴は直径5センチで、深さは2~3センチほどとします。
2列で栽培する時は、条間45センチ、株間は30センチほどあれば良いでしょう。

市販の種であれば関係ありませんが、自家栽培のものを使う時はさやから出して植え付けます。種は横向きにして1つの穴につき、2~3粒まきます。種同士がくっつかないように注意しましょう。その後、3センチほど覆土してたっぷり水をやりましょう。

3.鳥よけ設置

種まきが終わったら、そのまま寒冷紗をべたがけします。
こうすることで、鳥による食害を防ぐことができます。また、地温の確保や害虫対策にもなるので、べたがけは忘れずに行いましょう。

寒冷紗を外すタイミングですが、落花生が発芽して、窮屈そうになったら外します。そのままにしておくと正常な成長ができないので、忘れずに外すようにしましょう。

4.水やり

水やりは、種まきや定植のタイミングでたっぷりと行います。それ以降は、雨に任せて大丈夫です。ただ、8月以降晴天の日が続いている時は、水やりが必要になります。1週間に1回くらいの間隔で、たっぷりと灌水しましょう。日中の暑い時間帯にやってしまうと根が腐ってしまうので、朝方の涼しい時間帯に行ってください。

5.土寄せ・追肥


栽培期間中に、土寄せは2回行います。最初の土寄せは、落花生の花が咲いたタイミング。マルチをしている場合は、まずマルチを剥がして、たっぷりの土を株元に寄せます。この時、1平方メートルあたり30グラムほど追肥を行います。

2回目の土寄せは、1回目の土寄せから2~3週間経った頃に行います。伸びている子房柄を切らないように注意しながら、たっぷり土を寄せましょう。この時は追肥は行いません。

6.収穫

10月下旬~11月上旬ごろになると、いよいよ収穫です。落花生の茎や葉が黄ばみ、下葉が枯れ始めたら試し掘りを行います。さやの網目模様がはっきりと出ていて、膨らんでいれば大丈夫です。せっかく出来た実を傷つけないように気をつけながら、スコップなどで土を掘り、株ごと収穫します。あらかた収穫が終わったら、土の中にこぼれた落花生が残っていないかよくチェックしてみましょう。

7.保存

長期保存したい場合は、天日干しをして落花生を乾かす必要があります。
収穫後に付着している土を奇麗に払い落とし、実を空に向けるようにして7~10日間ほど天日干しにします。この際、鳥に食べられないようネットをかけると良いでしょう。
十分乾いたら実をとって軽く水洗いし、再び天日干しして乾燥させれば完了です。

プランターや植木鉢で落花生を育ててみよう


地植えのイメージが強い落花生ですが、プランターや植木鉢でも栽培することができます。
庭やベランダなど、目の届くところに置いておけるので、成長の様子も楽しむことができます。
プランター栽培の手順は以下の通りです。

1.植木鉢やプランター選び
2.培養土と肥料を準備
3.種まき
4.鳥よけを設置
5.日当たりのよい場所に置く
6.水やり
7.土寄せ・追肥
8.収穫
9.保存

それぞれ、詳しく解説していきます。

1.植木鉢やプランター選び

落花生は子房柄を地面に伸ばし、実をつける植物です。このため、ある程度の深さと表面積の広さが必要になります。小さい物を使うと、子房柄がうまく土につかず、実付きが悪くなるのでなるべく大きいものを選びましょう。

プランターであれば、深さ30センチ前後、幅60センチ前後、奥行き30センチくらいのものが良いでしょう。植木鉢もプランターに準じたサイズのものを選んでください。このサイズで1株か、少し窮屈ですが2株栽培できます。

2.培養土と肥料を準備

栽培に使う土は必ず市販の野菜培養土を用いましょう。培養土には野菜の成長に必要な肥料分があらかじめ含まれているため、元肥が必要ありません。
プランターの底に鉢底ネットと鉢底石を敷き、その上から培養土を入れましょう。

なお他の野菜の栽培に使った培養土を使い回すのはおすすめできません。栄養が抜けていたり、病気の原因菌が潜んでいる可能性があるためです。新しく栽培を始める時は、新しい土を使いましょう。

3.種まき

種まきは地植えとあまり変わりません。1株だけ育てる時は、プランターや鉢の真ん中に植え穴を作って、2~3粒を三角形のように配置して、横向きで植え付けます。その上から土をかけてやり、軽く手で押さえ、水やりをすれば完了です。

大きなプランターで2株作る時は、株間を30センチあけて植え付けましょう。

4.鳥よけを設置

地植え栽培と同じように、プランター栽培でも鳥よけの設置は必須です。
種まき後、プランターに寒冷紗をべたがけします。草丈が10センチ前後になるまではかけたままにしておきましょう。

寒冷紗をかけることで、鳥よけのほか害虫対策や保温にも繋がるので、鳥よけは必ずしておきましょう。

5.日当たりのよい場所に置く

落花生は日当たりを好む作物です。プランターや鉢植えは日当たりと風通しの良い場所に設置しましょう。また、ベランダなどで栽培をする場合は、エアコンの室外機の近くに置いておくと、熱で株が駄目になってしまうおそれがあります。室外機からは十分距離を離して置きましょう。

6.水やり

プランター栽培においては、水やりが大切になります。地植え栽培では降雨に任せて良いと言いましたが、プランターではしっかり水やりを行う必要があります。
畑などの自然の土と比べ、プランターは保水力が低く乾きやすいので、毎朝水やりをしてください。夏の暑い時期などは、朝夕2回水やりをしても良いでしょう。

7.土寄せ・追肥

土寄せと追肥は同じタイミングで行います。落花生の花が咲き終わると子房柄を伸ばしだすので、そのタイミングで増し土をしてください。株元に土を盛り、子房柄が地面に付きやすい環境を作ってあげましょう。

また、追肥は株に直接かからないように、プランターの縁に施します。油かすやぼかし肥などの肥料を10グラムほど与えましょう。

8.収穫

株全体が黄色くなり、下葉が枯れてきだしたら収穫のタイミングです。うまく育っていれば、落花生のさやに網目模様が出ていて、膨らんでいるはずです。

地植えではスコップを使いましたが、プランターであればそのまま引き抜いても良いでしょう。土の中に取り残しがないかよく確認してください。

9.保存

保存方法は地植え栽培と変わりません。落花生を裏返し、実を空に向けて天日干ししてください。鳥よけのネットをかけるなどの注意点も同じです。

落花生を育てる時によくある質問

落花生を育てるときによくある質問をまとめました。

Q.収穫した落花生は種として翌年も使える?

落花生を保存するときに、天日干しがうまくいっていれば種として利用できます。
ただ、保存中に湿気ってしまったりすると種が駄目になっていることもあるので、過信は禁物です。

保存した種は2~3年すると発芽率が下がってくるので、播種目的なら長期保存は避けましょう。特にこだわりがなければ、市販の種を買って使ったほうが確実です。

Q.落花生栽培の失敗例は?

コガネムシの幼虫など、害虫に食害されることがよくあります。食害を受けた落花生をよく見ると、小さな穴があいていたり、黒ずんでいたりします。栽培前に土壌を消毒したり、適宜農薬を散布することで被害を抑えましょう。

また、カラスなどの鳥に食べられてしまうというケースもよく見られます。種まき後はすぐに鳥よけをして、被害を防止しましょう。

Q.種の向きはどれが正解?

現在は、横向きで植え付けるのが一般的です。一時期は縦向きでの植え付けが勧められたということもありましたが、研究が進み、横向きでも十分発芽することがわかりました。

縦向きだと勢い余って深く植え付け過ぎてしまうこともあるので、横向きで植え付けるのが無難でしょう。

落花生栽培は比較的簡単だが、鳥対策がとても重要

落花生は比較的簡単に栽培ができる作物です。背丈も高くならないので、アパートやマンションのベランダでも作りやすいのではないでしょうか。

真夏の暑い時期は水やりなどに注意しなくてはなりませんが、その時期以外であれば、意外と放任栽培していても健康に育ってくれるので、初めて野菜の栽培に挑戦するという人にもおすすめです。

ただ、とにかくカラスなどの鳥が種を食べにやってくるので、鳥よけだけは忘れずにしてください。種まき後、なかなか発芽しないなと感じた人は、一度掘り返してみると良いでしょう。もしかすると、鳥に食べられてしまっているかもしれません。

5~10月と長い栽培期間の落花生ですが、その分収穫できたときの嬉しさはひとしおです。ぜひ本記事を参考にして、落花生栽培に挑戦してみてください。

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