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失敗しない水やりのコツと方法を伝授 園芸のプロに聞いた

伊藤 雄大

ライター:

連載企画:凄い!農家のアイデア集

失敗しない水やりのコツと方法を伝授 園芸のプロに聞いた

「水やり3年」という園芸業界の言葉があるとおり、普段何気なくやる水やりにもじつは奥深い技術があります。これからじゃんじゃん水やりをしなければならない真夏に向けて、園芸のプロに「よくある水やりの失敗」「その解決方法」について聞きました。

水やりは決められた量をこなすのでは、うまくいかない

水やりの基本を教えてくれた育種家の池田真樹さん

水やりについて教えてくれたのは、兵庫県西宮市で「船坂農園」として園芸植物の育種・栽培をしている池田真樹(いけだ・まさき)さん。ハウスにお邪魔すると、世界各国の珍しい植物が所狭しと並べられていました。

「水やりは、奥深いですよ」と池田さん。いろんなところで「1日1回」あるいは「真夏は朝夕2回」などと定量的に書かれていることが多いですが、実際は、植物の種類によって要求する水の量が違ううえ、培養土や鉢の種類によっても乾きやすさは違ってきます。そこに置き場の環境(風通しや日照)という要素も加わってくると……、考えれば考えるほど混乱してしまいます。こうした部分は、研究と実践を重ねながらやり方を見つけるほかありません。ゆえに、園芸の世界では「水やり3年」と言われています。

そのため細かい話は無理だとしても、知っておくと便利な「基本」があるそうです。

水やりタイミングで「水もたれ」を防ぐ

もっとも多い失敗は「水もたれ」

水やりタイミングは鉢に割り箸を挿せば一目瞭然。土が付いた部分が湿っているところ

「植物を枯らしてしまう失敗としては、水のやりすぎがいちばん多いですね」と池田さん。「表面が乾いたら」とはよく言いますが、それでは水のやりすぎになってしまうそうです。「水を頻繁にやりすぎて植物が元気をなくすことを『水もたれ』と言うんです」(池田さん)

基本的には「1日◯回」ではなく、「鉢の表面から底までの上半分ほどが乾いているタイミング」で水やりをすると、特殊な植物以外は健康的に育てられるそうです。

わかりにくければ、割り箸が1本あるといいですよ」と、池田さんは鉢植えに割り箸をぶすりと挿し、しばらくして抜きました。

割り箸を見てみると、挿した部分のうち下半分ほどにだけ土が付いていました。上半分に土が付いていないのはさらさらに乾いている証拠です。「だいたい半分くらい乾いてますね。このタイミングで水をやるのがベストです」と池田さん。

ただし、気温が高い真夏と、凍結のおそれがある真冬には要注意です。

真夏の「水もたれ」

真夏は水を欲しがるからとやみくもに水をやっても「水もたれ」になってしまいます。原因は、鉢の中に停滞した水が太陽光でゆだってしまい、根のまわりが高温になってしまうからだそうです。

「植物は、地上部は意外と暑さに強いんです。一方、根はもっとデリケート。47度以上になるとダメになってしまいます。鉢に停滞した水がある場合、ゆだって蒸気となり、コンビニにある肉まんのケースの中のような状態になります。そんなところにずっといると、人間でもおかしくなっちゃいますよね」と池田さんは説明します。

真夏のかん水のコツは、まだ気温が上がっていない早朝や、気温が下がり始めた夕方などに水やりをし、最高気温になる真昼に停滞水がない状態にすることが肝心だそう。

よいタイミングで水やりができない場合は、鉢内を高温にしないように遮光したり、半日陰になる場所に置き場所を変えたり、鉢を発泡スチロールなどの断熱材で囲ったりする、といった手もあります。

真冬の水もたれ

一方、真冬の「水もたれ」は「蒸れ」ではなく「凍結」が原因。特に、真冬に休眠して地上部がなくなるような植物は水を吸う力が弱く、鉢内が乾きにくいとのこと。氷点下になる日に停滞水があると、根に付着した水が凍結し、根っこを痛めつけてしまいます。傷んだ根の表面には低温でも活動する微生物がはびこり、やがて侵入し、枯れてしまうそうです。

「土に優しい」水やりの仕方

遠くから、ふんわりと

水やりの作業にもコツがあると池田さんは言います。
「使う道具はなんでもいいんですけど、基本はできるだけ遠くから、土にふんわりと優しく落ちるようにします。そうしないと……」
池田さんは「近くから、激しく」水をまいてみせます。

一気に水が入った鉢には、水たまりができ、培養土の中にあるパーライトや細かい土などの軽い素材が表面に浮き上がってきました。これを繰り返すうちに、せっかくの培養土の構造が変わってしまいます。表面が目の細かい土で覆われ、水が鉢底へと染みにくくなり、鉢内で水分ムラができてしまうのです。

勢いよく水をやると、水たまりができ、パーライト(白い粒)が浮いた。パーライトは排水性を高める素材なので、表面に上がってしまうと培養土の排水性が悪くなる

これを防ぐには、池田さんが言うように「遠くから、ふんわり優しく」が鉄則。蓮口とホース、ジョーロで実演してもらいました。

蓮口を使う際は、鉢から1メートル以上離して、ふんわりと水やりする

これだけ近づけるのはダメ。培養土の上に水がたまり、構造が壊れてしまう

ホースの場合は、口を親指でふさぐなどして、水を放射状に広げる

蓮口の時よりは粗いが、水が粒となって、地面に優しく落ちる

ジョーロの蓮口は必ずこの向き(上向き)で。反対方向にすると水圧が強くなりすぎる

鉢の容積の1.2倍以上、じゃぶじゃぶと

最初に触れたように、頻繁に水をやるのは厳禁ですが、一度にやる量はたっぷりと。よく「鉢底から水が流れるまで」とは言いますが、これは鉢内の水分を均等にそろえるだけではなく、「鉢内をきれいにする」という意味もあります。

「鉢内には、培養土に含まれる肥料成分が揮発してガスとなってたまっています。これが、根に悪さをします。停滞している古い水も微生物の温床になる。こういうものを新しい水で押し出して、入れ替える、というイメージです」と池田さん。だから、水やりは鉢底から古い水が流れ出るまで、たっぷりと。

室内に置いている場合など、じゃぶじゃぶとはやれない場合は「鉢の容積の1.2倍」が目安。土自身が水を含むため、同量では鉢底まで水が染み込まないからです。

鉢の大きさと同じ容量の水をやっても、鉢底のほうはほぼ乾いている。特に写真のような細かい土の培養土は水を多めにやるのが肝心

肥料や土づくりと同じように知識や技術が必要な水やり。雨の多い梅雨時期や、その後に続く猛暑日には、水やりのタイミングや方法に気を使うことが肝心です。大事な植物を枯らさないためにも、ぜひ参考にしてください。

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