産業革命が起きるかも!?
50アールの小さな畑で1人兼業農家をしている筆者にとって、タマネギをつるす作業は憂鬱なものでした。
秋のあいだに張り切ってタマネギをたくさん植えてはみたものの、持ち前の不器用さもあいまって、つるす作業に膨大な時間がかかったり、そもそもつるす場所の確保に苦労したりと、タマネギ臭を全身にまといながら悪戦苦闘していました。一時期はタマネギをやめてしまったほどです。
「このままじゃ、いかん」と、近所の何軒かにつるし方を教わりに行ったこともありましたが、まさに千差万別。家々で工夫を重ねて、よりよい方法を編み出しているようです。
そんななか、自分にとってのベストなつるし方が以下に紹介する「タマすだれ」です。数年前に、徳島県の農家がこの方法を紹介していたのを雑誌で読んでマネしたところ、わが家に産業革命が起きました。
筆者のように、「タマネギをつるすのが下手」「時間がかかりすぎる」「つるすスペースがない」という悩みを持つ人には、すごくいい方法だと思います。
「タマすだれ」のやり方
用意するのは針金と小枝だけ
筆者は非常に不器用なので、ひもで何かを結ぶのが非常に苦手です。しかしこのやり方なら、一般的なやり方で使うひもは必要ありません。用意するのは「針金」と「枯れた小枝」のみ。
針金と小枝が1本あれば、上の写真のように、50個以上のタマネギをほとんど時間をかけずにつるすことができます。500個のタマネギでも、1時間もかかりません。また、すだれのように長くできるので、場所もとりません。
実際の手順
まずは、針金の一方の先端を、軒先の梁や、倉庫の鉄筋など、とにかくタマネギの重みで折れてしまわない頑丈なところに巻きつけて、固定します。
もう一方の先端には、そのへんに落ちている小枝を巻きつけます。枝にこだわる必要はありません。腐ってさえいなければ、鉛筆ほどの太さがあれば十分です。小枝じゃなくても、何かしらの細長いもので代用できます。ただしこれは、筆者のように1カ所に50個程度のタマネギをつるす場合。もっと多くつるしたい人は、針金も小枝もより丈夫なものを使った方がいいでしょう。
準備が整ったら、針金に葉っぱを巻きつけて固定していきます。ここで大事なのは、葉っぱの先がタマネギの下になるように巻きつけることです。
まずタマネギの葉を針金に絡めます。
次に針金に葉っぱを巻きつけ、タマネギの下を通します。
ほんの数秒で1つのタマネギをつるすことができます。
あとは、この作業を何度も繰り返すだけ。
3〜4玉をまとめて茎をヒモでくくる普段のつるし方では、葉っぱが枯れるとヒモがゆるみ、タマネギがポロポロと落ちていく失敗がありました。しかし、この方法では、タマネギの葉が枯れるにつれて自重で締まっていくので、その心配はありません。
なお、わが家では、つるす前にあらかじめ表面を硬くしておきたいため、畑や倉庫で数日予乾しています。
タマすだれの注意点
ただし、この方法にも、いくつか注意点があります。
ひとつは、トウが立ってしまった(花茎が伸びネギ坊主が出た)タマネギは、茎元の柔軟性がないので針金に巻きつけにくい、ということです。筆者はその場合、従来の方法でつるすか、優先的に新タマネギや葉タマネギとして直売所に出荷しています。
もうひとつは、大玉ほど貯蔵期間が短くなること。自重で締まってくると、タマネギ同士が密着し、接した部分に圧力がかかります。そこが変形したり、ひどい場合は腐りの原因になったりしますので、大玉から優先的に販売するなり、食べるなりしたほうがよいと思います。
つるして売るのにオススメの品種
最後に、筆者が好きな品種を紹介します。それは、「緋蔵っ子赤玉葱(ひぞっこあかたまねぎ)」(タカヤマシード)という赤タマネギです。
従来の赤タマネギは貯蔵期間が短いものが多かったのですが、これは品種名のとおり、12月末まで長期貯蔵ができるという画期的な品種です。赤タマネギといえば飲食店の需要も安定しているので、すぐには売らずに貯蔵して、品薄になる秋冬に販売するととても喜ばれます。
これまでタマネギはつるすのがおっくうだからあまり作りたくないと思っていた筆者のような人は、ぜひチャレンジしてみてください。