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【元気な農作物育成ガイド】やりすぎは禁物! 上手な水やり入門

連載企画:元気な農作物育成ガイド

【元気な農作物育成ガイド】やりすぎは禁物! 上手な水やり入門

農作物や植物の成長に欠かせない「水やり」は、とても重要な日課の一つです。ですが、品種や環境を考慮せず誤った方法を施すと、病害虫にかかりやすくなる危険性を高めてしまいます。今回は誰でも実践できる作物に優しい上手な水やりの方法を紹介していきます。

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上手な水やりの基礎知識

水やり
水やりを施す際は、葉や花には直接かけることはせず、株元の周辺に与えてあげることが基本です。花に直接かけると花粉が失われて受粉を妨げる原因となり、果菜類では実つきが悪くなるおそれがあります。

葉の部分には病原菌が潜んでいる場合があるため、下手に水をかけると株全体に病気が広がってしまいます。乾燥してハダニが発生してしまう夏場には、葉裏をめがけて葉水(はみず)を与えることがありますが、これはあくまでも例外ですので花や葉には水をかけないことに注意して下さい。

また、ホースなどで乱暴に水やりすることも禁物です。株元の泥が跳ね上がってしまうことで土壌中の病原菌が葉裏に張りつき、感染を引き起こすことにもなりますので、丁寧な水やりを心がけましょう。

水はけの悪い場所での水やり

水やり
水はけの悪い土壌で頻繁に水やりを施してしまうと、水が土中に停滞してしまい、やがて根は窒息状態に陥り、枯れる原因となってしまいます。このような土壌では腐葉土などの有機質を加えて耕したり、粒の粗い砂質の用土を加えるなどの対策をして水はけの改良をはかるようにしましょう。

また、土壌の団粒化(※1)を促すために、冬期には土壌を掘り起こして寒気にさらすなどの対策も効果的です。

(※1)団粒化…目の細かい粒が集まり、団子状になった状態。

水やりを施す際の注意点

植えつけ時

水やり
植えつけ時は根が傷んだり切れたりすることがあるため、水が十分に根の最先端まで染みわたるように水やりを行わなければなりません。根が傷んでしまうと、葉や茎にも負担をかけることになりますので、株の隅々までまんべんなく行き渡るように水分を送り届けてダメージから回復させる必要があります。

植え穴を掘り、堆肥や元肥(※2)などを施したら一度水やりを行い、水が引いたら再度植えつけていきます。続いて、植えた食物の根元の部分に環状の溝をひいていき、ジョウロのハス口を下に向けて水を与えていくと、水がゆっくりと土中にしみ込んでいくので根の先端まで十分に行き届くことになります。植えつけた翌朝に葉がしおれていなければ、農作物や植物が順調に水を吸い上げている証拠です。

(※2)元肥…植えつける前に多量に施しておく肥料。

地植え時

水やり
地植えの株に水やりを施すときに必ず注意してほしいことは、鉢植えの品種と同じような方法で水やりをしないことです。

植物の根は本来、水分を求めるために地中に向かって深々と根を伸ばしていく性質があります。限られた用土内で生育していく鉢植えの株とは条件が全く異なり、地植えの株元に頻繁に水を与えてしまうと根は伸びることをやめてしまうため、地中深くまで根が張らなくなり、夏場の強い日差しの中や強風にさらされると抗う術がありません。

もちろん、病害虫が寄生した場合、ダメージを1番に受けるのは生育の軟弱な株です。植えつけた後の人為的な水やりについては極力控えるように心がけてください。

果樹や庭木の植えつけ時

水やり
果樹や庭木を植えつける時は、深々と掘った植え穴に元肥を施して、間土(※3)を入れていきます。次に、穴の中央へ苗木を植えたら、掘り上げた際にあらかじめ細かく砕いておいた土を戻していき、たっぷりと水やりを行います。水が土に染み込んでいくのを確認してから再度水をやり、これを数回繰り返しながら丁寧に土を戻していきましょう。

(※3)間土(まつち)…肥料が直接苗の根に触れないように、間に入れる土のこと。

次に、苗木を植えつけたら水鉢(みずばち)を作ります。小さい株であれば株元からおよそ30センチ、大きい株なら50センチ~1メートル程度株元から離したところに環状の土を盛り、その内側に水を目一杯溜まるように与えます。

あとは株の大きさに応じて適切な支柱を立てれば完了です。根づいたあとの水やりは、雨が1ヶ月以上も降らないようなケースを除けば必要ありません。

植えつけに選ぶ場所や扱う品種など、様々な条件によって効果的な水やりの方法も変わってきます。つい頻繁にあげてしまいがちな水やりですが、やりすぎも決して良くありません。農作物や植物の状態を観察して、本当に水を必要としているかどうかを適切に見極めながら、丁寧で優しい水やりを実践していきましょう。

参考:『病害虫百科』(万来舎)

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