出荷量日本一を誇る群馬のホウレンソウ、昭和村に達人あり
「都心に一番近い高冷地」と言われる群馬県北部の昭和村。冷涼な気候と消費地まで2時間足らずのアクセスの良さに恵まれ、ホウレンソウやレタスなどの高原野菜の産地として知られています。
出荷量日本一を誇る群馬県のホウレンソウは、赤城山麓の標高差を生かした周年出荷が可能。生産者のもとですみやかに袋詰め・箱詰めされ、JA利根沼田・糸之瀬野菜予冷庫で集荷。鮮度が高い状態で消費地の市場へ安定出荷されています。
JA利根沼田管内最大規模のホウレンソウ生産者が、星野吉徳さんです。昭和村を中心に標高差の異なる広域5地帯の露地とパイプハウスでホウレンソウを栽培。その年間出荷量は4〜5万ケースにもなり、管内最大量です。
星野さんはこれまでにさまざまな野菜栽培を経験し、現在のホウレンソウを中心とした作型は20年ほど前に確立しました。延べ面積70haの露地では、ホウレンソウのほか、トウモロコシ、レタス、コマツナ、ヤマウドを輪作。夏場のホウレンソウ需要に応えるために、パイプハウス栽培面積1.5haを用いて初夏から翌春にかけて2〜3作、年末年始にコマツナ1作を挟んで回しています。
収量だけでなく、品質の高さにもこだわる星野さんは農家3代目。初代である祖父からは「土を扱うには輪作が大事」と教えられ、自身の知見を踏まえて最適なパターンを編み出しました。同時に徹底しているのが、薬剤のローテーション防除。発生が予想される病害虫に対して色々な薬剤を組み合わせながら防除を行い、被害を未然に防いでいます。
しかし、3~4年前ごろから、ハウスの一部に異変が確認されるようになりました。それまで一度も発生したことがないケナガコナダニによる芯の食害が、時折見られるようになったのです。
ケナガコナダニ類の防除を模索、薬剤ローテーションに新たな切り札
「被害が拡大する前に、ケナガコナダニ類の防除もしっかりやらなければならない状況になってきた」と話す星野さん。最も被害が懸念されるのは冬場のハウス。11月に播種したホウレンソウは2月に収穫をするため、生育期間が長くなる分、病害虫のリスクにさらされる期間も長くなるからです。
これまでも徹底した防除で病害虫を出さないように努めてきましたが、既存の薬剤だけでは抑えられていないところをどうカバーするかが大きな課題でした。
思案するさなか、「ケナガコナダニに効く新しい薬剤が出ました」と、星野さんのもとに駆けつけたのは、日頃から連絡を取り合うJA利根沼田のホウレンソウ担当者。
手にしていたのは『ネコナカットフロアブル』でした。
『ネコナカットフロアブル』は、ホウレンソウを加害するケナガコナダニ類およびニラを加害するネダニ類に特化した防除剤として、2022年秋に協友アグリから上市されたばかり。
有効成分のエトキサゾールには、幼若虫の脱皮を阻害する作用があり、成虫から産まれた卵を孵化させず、優れた密度抑制効果を発揮します。
『ネコナカットフロアブル』について、「最初は変な名前の剤だなと思いました」と苦笑する星野さん。従来の薬剤にない効果を期待し、まずは処理区・無処理区・土壌処理剤との体系処理区を設けてテストを実施することにしました。
テストでは、栽培初期に一度、中期にもう一度、1000倍希釈で10aあたり200リットルを目安に散布しました。収穫3日前まで使える薬剤ですが、収穫が近くなってから使わなくてもいいように初期防除を徹底するのが星野さんのやり方です。「ダニ類は発生するとどんどん増えて手に負えなくなってしまうから、初期防除が一番大事です」。
「ネコナカットだけの処理区でも目立った被害はなく、体系処理区では完全に抑えることができました。従来の薬剤では効かなくなっているところに、期待通りの効果が出ました」と星野さんは満足げ。「パッケージはかわいくてインパクトがあるし、他の薬剤と区別がつきやすくていいよね」と笑顔を見せます。
星野さんのホウレンソウの防除は、シーズン前の土壌消毒に始まり、播種前に粒剤を土壌混和し、本葉が出たら散布剤によるローテーション防除を行います。その初期防除に『ネコナカットフロアブル』を施用する防除体系で、今期のハウス栽培をスタートさせます。
環境の変化に臨機応変に対応し、たぐいない産地の土壌を守っていく
「土を相手にする限り輪作をしなければだめだ」と、50年前に星野さんを諭したのは大先輩である祖父。以来、星野さんの土壌環境へのこだわりである輪作は、連作障害を防ぐためだけでなく、栽培作物の食味にも好影響を与えています。
「トウモロコシの後のホウレンソウは調子がよくて、その後のレタスもまたいいんですよ」と星野さん。有機肥料も入れてつくる星野さんのホウレンソウは肉厚で、えぐみが少なく糖度が少し高いのが特長です。
「ダンボール箱や袋には生産者名を入れて出荷しているので、自分の顔を汚さないようにしないとね」と、常に高品質なホウレンソウを届け続け、取引先の期待と信頼に応えています。
そんな星野さんでも、栽培については「まだまだ勉強中。まだまだ小僧です」と姿勢は謙虚。気象や環境は変わり続け、毎年ホウレンソウを作っていても、水分・温度・日照時間などが同じであることは一度たりともありません。昔なら真冬に気温マイナス15℃まで下がっていた昭和村も温暖化で、土壌病害虫が越冬して2023年は3月に桜が咲くほどの変化が起きています。
「恵まれた立地だからこそ、環境の変化に臨機応変に対応して土壌を持続させたい」と抱負を話してくれた星野さん。
「ネコナカットフロアブルはよく効く薬剤だから、これだけに頼らずローテーションの中で大事に使い続けていきたいです」。
コナガケナダニ類にお悩みの方は、協友アグリ株式会社までお問い合わせください。
取材協力
星野吉徳さん
JA利根沼田
お問い合わせ先
協友アグリ株式会社
〒103-0016 東京都中央区日本橋小網町6番1号山万ビル11F
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