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つる割病5つのレースとえそ斑点病に耐病性! 果実品質のよい赤肉メロン「レノンスター」

連載企画:注目の春タネ新品種

つる割病5つのレースとえそ斑点病に耐病性! 果実品質のよい赤肉メロン「レノンスター」

2023年注目の春タネ新品種について、育種のプロである大手種苗会社・タキイ種苗のブリーダーさんに解説してもらう本連載。第4回のおすすめ品種は「メロン」です。

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メロン生産の動向

メロンの生産現場では、昨今の気象変動により栽培が不安定になっており、加えて連作による病害リスクが年々高まっています。特にメロンつる割病は被害拡大、および各地でのレース分化が報告され、大きな問題と言えます。

主要産地では耐病性台木の利用が一般的となっていますが、接ぎ木を含めた育苗労力や、苗購入費の負担を余儀なくされ、メロンの栽培離れにもつながっています。

そこでタキイは、つる割病とえそ斑点病に複合耐病性を示し、自根で栽培可能な赤肉ネットメロン「レノンスター」を育成しました。「レノン」シリーズの特長である「可食部が多い肉厚な果肉」「食べごろが長続きする日もちのよさ」を備えており、贈答用として喜ばれることはもとより、近年需要が高まるカット販売にも最適な品種です。

「レノン」シリーズの使い分けでリレー栽培も可能!

早出しをねらった低温期のハウス作では「レノンハート」や「レノンスター」が適します。これに続く中間期のハウス作や早いトンネル作の作型には「レノンスター」やあるいは「レノン」の守備範囲です。特に「レノンスター」は、暖地では4月中旬~6月上旬収穫、中間地では5月上旬~7月中旬収穫の作型が適しており、適応作型幅の広い品種です。

つる割病のリスクが低くなる高温期にかかる作型で、“念のため”の接ぎ木栽培には「レノンスター」の作型幅の広さや耐病性が生かせます。また、気温が上昇する高温期のトンネル栽培には耐暑性にすぐれる「レノンウエーブ」が適しています。

品種特性

つる割病とえそ斑点病に耐病性

土壌病害である、つる割病全レース(F0、F1、F2、F1,2y、F1,2w)とメロンえそ斑点病(MNSV)に耐病性があり、自根で栽培可能な赤肉ネットメロンです。また、うどんこ病(PM)にも比較的強い耐病性を示します。
※つる割病レース1,2y、1,2wにも安定した耐病性を示しますが、完全抵抗性ではありません。耐病性台木を使用しても萎凋(いちょう)が見られる強汚染圃場(ほじょう)では、土壌消毒を併用してください

強めの草勢でつるもちがよい

強めの草勢で、栽培初期に低温に当たっても生育が緩慢になりにくいことに加え、つるもちがよく、裂果もしにくいため、栽培が容易です。

秀品率の高い美しい外観

果ぞろいがよく、太めのネットが密に安定して発生するため秀品率が高くなります

均一で緻密な肉質

可食部が大きく、カット販売でも見ばえのする「レノン」の肉厚性を引き継いでいます。高糖度で日もちがよく、食べごろの状態が長く続きます。肉質は緻密で、赤肉特有のカロテン臭が少なく、老若男女問わず好まれる味わいです。

右:レノンスター 左:他社品種

栽培ポイント

活着を促すための苗作りのポイント

メロンの着果節位の雌花は定植後間もなく分化してくるため、スムーズな活着が良品出荷につながります。そのためには、メリハリのある潅水(かんすい)と徹底した地温管理がポイントです。発芽が確認でき次第、地温を28℃に下げ徒長を防止し、ポットへの移植後本葉1枚目が1㎠程度になるまではなるべく潅水せず、極少量の潅水で対応します。定植前、ハウスの地温(18℃)より低い地温(16℃)を目標に1日2℃ずつ下げ、徐々に苗を順化させます。

採光の確保とこまめな換気を

結果枝の伸長期までは採光と換気を図り、じっくりと生育させることが「レノンスター」を作りこなす上で最も重要なポイントです。「レノンスター」は低温期の伸長性にすぐれるため、極端な蒸しこみ管理による32℃以上の高温や空中湿度が過多となると、地上部と地下部の生育バランスが崩れ、生育後半の草勢低下につながりやすくなります。活着後は根域の拡大を優先し、少しでも株に光を当てるためにもトンネルや内張り資材を開閉し、余計な湿気を抜くことに努めます。

結果枝を観察し交配期を設定

交配期までの体づくり(根づくり)ができているかは結果枝に表れます。結果枝決定のタイミングで、結果枝が弱い場合は潅水を行うなどして、節位にこだわらず、草勢の回復を図り結果枝の伸びと根域の拡大を促した後で交配期を設定してください。

結果枝伸長期から交配前は夜温を暖かめに保つよう努めるとともに光を十分に当て、雌花と雄花の充実を図ります。

着果後の潅水はムラなく行う

着果確認後は、摘果時期まで圃場水分に応じて積極的に潅水を行います。日中は26〜30℃、夜間のハウス内温度は18℃を目標に、温度を高めに保持します。細かいネットが密に形成され大割れのリスクが少ない特性を生かし、極端な蒸しこみ管理は行わずに、ムラのない潅水を心掛けることで、草勢回復と玉肥大を図ります。ネットが全体に回ってからも、果実の緩みを確認しながら積極的に潅水することで、目標果重までの肥大とネットの発生を促します。

適期収穫を心がける

収穫目安は着果後55〜57日。遊びづるで草勢判断を行います。つるが動き続ける場合は強勢なので約14日前から、逆に伸長が緩慢で成長点と開花節位の距離が近い場合は7日前ごろからを目安とし、水切り、除湿を心掛け登熟を促します。水はけのよい土壌の場合は、極端な水切りはせず、茎葉が維持されるように、緩やかに水量を減らしてください。

(執筆:タキイ研究農場 髙橋 昌平)

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