農業法人を3人で事業継承
ゆうふぁーむは栽培面積が30ヘクタール。ニンジンやトウモロコシ、キャベツ、ジャガイモなどを育て、主に多古町(たこまち)旬の味産直センター(多古町、以下産直センター)に出荷している。産直センターの売り先は各地の生協が中心だ。
境野さんは1982年生まれで、出身は東京。中学生のころから農業に興味を持っていた。母親が生協の組合員で、産直センターが主催する田植えイベントなどに参加していた縁で、ゆうふぁーむで働きながら農作業を学ぶことにした。
ゆうふぁーむで一緒に働いていた仲間に、川島健次(かわしま・けんじ)さんと森泉智史(もりずみ・さとし)さんがいた。3人は同世代。境野さんはもともと栽培技術を習得したら、独立しようと思っていた。
前社長の菅沢博隆(すがさわ・ひろたか)さんの一言をきっかけに、独立とは別の道が開けた。「3人で農場を引き継いでくれないか」。後継ぎがいない菅沢さんにとって、農業に前向きに取り組む3人は頼もしく見えた。
こうして3人は、ゆうふぁーむの事業の譲渡を受けた。2015年のことだ。境野さんが社長になり、川島さんと森泉さんはそれぞれ専務と常務として経営の一翼を担うことになった。菅沢さんはいま会長の立場にある。
3人が経営を引き継いでから現在までに、栽培面積は10ヘクタール近く増えた。境野さんによると、自分から積極的に畑を借りに行ったというより、地主から「農地を預かってほしい」と頼まれることが多いという。地域の農業の担い手として、3人が周囲から認められたことを示している。
3人の目で収支をチェックして品目を見直し
2015年に経営を任されると、境野さんたちはどの作物に力を入れるべきかを点検し始めた。菅沢さんもかねて収支を細かく分析したいと思っていたが、数字を管理しているのが自分だけだったので、手が回っていなかった。