マイナビ農業TOP > 農業ニュース > 直播栽培歴30年。カルパー直播によるJA福井県と生産組合の取り組み成功例とは

タイアップ

直播栽培歴30年。カルパー直播によるJA福井県と生産組合の取り組み成功例とは

直播栽培歴30年。カルパー直播によるJA福井県と生産組合の取り組み成功例とは

担い手不足の減少や農業人口の高齢化により新しい農業への転換が迫られている日本の農業。水稲栽培では省力化を図るために旧来の移植栽培の割合を減らし、田んぼに直接種を播く直播栽培を導入する地域も増えつつあります。今回は直播栽培を採用して約30年、「カルパー粉粒剤16を用いた湛水土中直播(以下、カルパー直播)」で地域の農業のあり方を変えたJA福井県 坂井支店と高柳第一生産組合(福井県坂井市)のみなさんにお話を伺いました。

twitter twitter twitter

直播栽培の普及のために始めた「カルパー直播」

福井県北西部に位置する坂井市は、福井県随一の穀倉地帯が広がるのどかな地域です。同地域では、平成7年の土地改良事業を機に、旧坂井町の2地区で有人ヘリを使った水稲直播栽培を開始しました。その後、平成8年から落水出芽(播種後の落水管理)の導入、平成12年頃から有人ヘリから播種機に切り替え、また病害虫雑草防除も新たな栽培技術を取り入れ、行政の主導のもと直播栽培の普及に積極的に取り組んできました。

JA福井県 坂井支店(以下、JA福井県)では直播栽培を普及促進させるために、当初からカルパー粉粒剤16をコーティングした種子を湛水圃場に播種する湛水直播栽培を推奨してきました。カルパー粉粒剤16の有効成分である過酸化カルシウムは、土壌中の水分と反応して酸素を放出し、直播水稲の発芽率の向上と苗立ちの安定に役立つ製品です。

現在、福井県内の湛水直播栽培面積は3,108ha(カルパー直播は3,044ha)で、水稲作付面積の12.7%を占め、カルパー直播の栽培面積、普及率とともに全国一となっています。(農林水産省調べ:令和3年産水稲直播栽培の面積
そのうち、坂井地域では約1,290ha(JA福井県調べ)がカルパー直播栽培を採用し、育苗作業や育苗管理、移植作業(田植え)といった人手と労力を必要としない直播栽培は、農作業の省力化と効率化などに繋がっています。

「この地域で直播を始めた当初からカルパー粉粒剤を使っています。他のコーティング資材を試しに使ったこともありましたが、結局播種時の気温の影響が小さく、発芽率が良いカルパーに戻りましたね」(JA福井県)

(JA福井県 米穀施設課/(左から)寺澤さん、後藤さん)

自動コーティング機で作業の省力化と品質安定を実現

JA福井県では当初、手動の機械を使ってコーティング作業を行っていました。機械を貸し出し、生産者がコーティング作業を行なっていた時代もありましたが、手動の場合は作業する人によって仕上がりにムラが出てしまうのが課題でした。そこでJA福井県が自動コーティングマシンを導入し、コーティングの請負事業を始めたのです。これにより、種籾の浸種作業、コーティング作業、コーティング後の乾燥作業を一連の流れで行なうことができ、「誰がやっても」同じ仕上がりのコーティング籾ができる体制となりました。

カルパーコーティングを行うには、いくつかのステップがあります。JA福井県では、浸種から10日程度で催芽させた後、脱水した種子とカルパー粉粒剤16を自動コーティングマシンに投入し、自動でコーティングを行っています。コーティングが終わった種子は、ベルトコンベヤー上で乾燥させたうえでネット袋に詰め、出荷前々日に発芽促進のために24時間30℃程度の加温を行い、生産者に引き渡すフローが整っています。

(作業面積:415㎡、自動コーティングマシン:6台。①浸種・催芽処理の様子、②コーティングマシンの対応の様子、③ベルトコンベヤーによるコーティング籾の搬送の様子、④コーティング籾の計量の様子)

約2週間程度の間にわずか11人体制で約950ha分もの種籾のコーティング(種籾の浸種・脱水、各薬剤の準備、コーティングマシンの対応、コーティング籾の計量・搬送)を行えるのは、自動コーティングマシンだからこその強み。鉄コーティングと比較してもカルパーコーティング後の乾燥工程がシンプルで、効率的な作業が可能です。

「これらの作業は生産者の播種予定日から逆算して行っています。手動機械でコーティングをしていた頃に比べると自動機の導入で作業効率は格段にアップしました。仕上がりにムラもありません。カルパーコーティングの際、殺虫剤や殺菌剤を加えますが、その作業がシステム化でき、スムーズに混ぜることができるので安心です」(後藤さん)

JA福井県では、直播栽培の普及促進のためにカルパー直播を推奨したこともあり、コーティングに係る費用は当初から安価に設定。この地域では、直播といえばカルパー直播を指し、カルパーコーティングはJAが一括で行う分業体制が確立されていることが強みとなっています。

(自動制御によってカルパーの投入量、水の噴霧量、ドラムの回転・停止をコントロールします。カルパーの薬量と種籾量の設定さえすれば、品質にムラなく仕上げることができます。そのため誰でも作業が可能です。※種籾が赤いのは、事前に処理した殺虫剤、殺菌剤によるもの。)

少人数で大規模化が進む地域にこそ直播が適している

坂井市内で組合設立当初から直播栽培に取り組んできた高柳第一生産組合のみなさんにお話を伺いました。元JA職員で長年、地域の農業課題に向き合ってきた立さんは「直播栽培はハウスで育苗する必要はないし、設備投資もあまり必要ありません。コストの面でも随分良いと思いますよ」と笑顔を見せます。

(高柳第一生産組合/(左から)立さん、木下さん、黒川さん)

一方、農業に従事し始めた頃からカルパー直播を行っている若手スタッフの方は、こう語ります。
「移植の場合は、田植え作業に2~3人は必要ですが、直播なら2人でも作業でき、1日にこなせる面積も大きいです。この地域は(カルパー)直播栽培が当たり前になっているので、芽が出てくれるだろうかという心配はあまりないですね」(木下さん/黒川さん)

新しく直播栽培を始めようとする方は出芽・苗立ちの心配や雑草防除の問題など、不安な側面がないわけではありませんが、大規模化が進む農事組合にとって30年の実績と経験や協力体制は、大きなメリットとなっています。

「(直播と移植のどちらを選ぶかについて)結局は、省力化を選ぶか収量を求めるかの違いではないでしょうか。少ない人数で大規模化せざるを得ない場合、省力化を選ぶことになるでしょう。そうなると直播が良いと思います。大規模化が進む地域にこそカルパー直播が適しているのではないでしょうか」(後藤さん)

行政、JA、生産者の協力・分業体制で持続可能な農業を目指す

全国的に見ても早くから直播栽培に取り組んできた福井県では、行政、JA、生産者が一体となって地域の農業課題に取り組んできた歴史があります。土地改良事業を機に新しい栽培技術や機材の導入にも前向きに取り組み、三位一体の協力体制を構築。栽培技術をコツコツと積み上げ、時代の先を見据えた農業への転換を図ってきました。カルパー直播やJAによるコーティング請負事業もそうした流れの中で定着したものであり、今ではそれが地域にとって当たり前の農業になっています。

また、農業従事者の高齢化や担い手不足などによる離農から、高柳第一生産組合のように年々経営面積が増加している組合では、省力化と効率化はこれからますます重要なキーワードになりそうです。

カルパー直播は省力化と効率化を実現できる方法であると感じました。また、福井県は食味と品質向上の観点からコシヒカリを5月半ばの適期に植えることを推奨しています。食味という点においても、直播コシヒカリと5月半ばに植えたコシヒカリの食味は同等でした」(後藤さん)

省力化、効率化を実現するだけでなく、味や品質の面でも移植栽培に引けを取らないカルパー直播は、これからの農業のあるべき姿になるのかもしれません。

若手農家に今後の目標を訊ねると、
「省力化できることはできるだけして、休みも大事にしながらみんなで楽しくワイワイできる農業をしていきたいです」と明るい回答。

新しい農業への転換にJAと生産組合が一体となって取り組み、ライフワークのように自然体で農業を楽しむみなさんの様子から、福井県の農業の明るい未来が見えてきました。

(苗立ちの様子。田面にヒビが生じているのは、播種後の落水管理によるものです。)

【取材協力】

福井県農業協同組合 坂井営農経済センター
福井県坂井市坂井町上新庄42-19/TEL.0776-67-8211

高柳第一生産組合
福井県坂井市坂井町高柳10-8/TEL.0776-72-0885

【お問い合わせ】

カルパー普及会
原体メーカー:保土谷化学工業株式会社/日本化薬株式会社
販売メーカー:北興化学工業株式会社/協友アグリ株式会社/三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社
事務局:保土谷UPL株式会社

▼記事に関するお問い合わせはこちら
http://www.hodogaya-upl.com/reference.html

【カルパー直播のポイント・マニュアルを紹介中!】

★コーティングのポイントはこちら(作成:カルパー普及会)

★水稲湛水土壌中直播栽培の手引きはこちら(作成:水稲直播研究会)

★自動コーディングマシン(販売元:初田工業(株))に関してはお近くのJA、農機具販売店にお問い合わせください。

関連記事
「カルパー直播」のお米が品評会で最優秀賞に! ある農業法人の成功への道のり【座談会】
「カルパー直播」のお米が品評会で最優秀賞に! ある農業法人の成功への道のり【座談会】
現在の水稲栽培は育苗作業の省力化、栽培規模の拡大に合わせた作業分散などが課題となっています。これらを解決する栽培技術が水稲直播ですが、利点と同時に課題もあり大きな広がりを見せてきませんでした。そこで注目したいのが、『カ…
タイアップ

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

公式SNS

「個人情報の取り扱いについて」の同意

2023年4月3日に「個人情報の取り扱いについて」が改訂されました。
マイナビ農業をご利用いただくには「個人情報の取り扱いについて」の内容をご確認いただき、同意いただく必要がございます。

■変更内容
個人情報の利用目的の以下の項目を追加
(7)行動履歴を会員情報と紐づけて分析した上で以下に活用。

内容に同意してサービスを利用する