食べチョクの広報戦略を構築
下村さんは人材サービスを手がける会社で働いた後、2019年10月にビビッドガーデンに転職した。もとの会社では採用などを担当し、パンフレットやホームページで自社の魅力をアピールする仕事の面白さを体験した。
転職を決めたのは、「もっと多くの人に発信したい」と思うようになったからだ。そのとき考えたのは、「自分は何に貢献したいのか」ということ。併せて祖母がユリ農家だったことも思い出し、「農産物に付加価値をつけて販売できるような選択肢があったらいい」と考えるようになった。
そんな下村さんにとって、ビビッドガーデンは「自分のやりたいことをドンピシャでやってる」と思える会社だった。知人の紹介で代表の秋元里奈(あきもと・りな)さんと会って話を聞き、予想は間違っていなかったと確信した。
入社したときは社員が10人ほどで、広報担当は自分だけ。「1人広報」の時代を経て、徐々にチームをつくりあげ、ビビッドガーデンの広報戦略を軌道に乗せた。入社2年目の2020年にメディアなどで紹介された回数は4000件を超え、その後、取り上げられる件数はもっと増えたという。
独立したのは2023年6月末。それに先立ち、「株式会社しんめ」(東京都渋谷区)を立ち上げて代表に就いた。これまで培ったノウハウを生かし、企業や自治体などからPRの仕事を引き受けることを目指す。
取材で下村さんに聞いたのは、ビビッドガーデンの広報担当として心がけたことと、1次産業の広報戦略に関して生産者に伝えたいこと、そして独立後の活動だ。ではインタビューの内容を紹介しよう。
取材の可否の判断を一任される
――ビビッドガーデンの広報で何に力を入れましたか。
さまざまなテーマについて、代表の秋元さんと同じ思考をするように努めました。そもそもなぜこの事業をやっているのか、普段何を考えているのか、今後どうしていきたいのか、食べチョクの強みは何かといった点です。
ありがたいのは、秋元さんが「どういう取材を受けるべきか」についての判断を一任してくれたことです。秋元さんの日程を共有し、取材を入れていきました。「こういう理由でこの取材を受けます」ということを彼女に伝え、対応してもらいました。あうんの呼吸でそれができるようになりました。
新型コロナウイルスや台風の影響など、生産者に大きく関わるようなテーマの取材は、秋元さんの時間を割くようにしました。一方、企画の具体的な内容は事業の責任者が答えたり、データなどは私が答えたりしたほうがいいケースもありました。そのあたりの判断も任せてもらえました。
生産者の実情を生々しく知る
――生産者に関する情報発信で何を心がけましたか。
大事にしていたのは、「1次産業のことを生々しく知る」ということです。