マイナビ農業TOP > 農業経営 > 希少品種のバジルが看板商品。珍しい作物に興味を持ってもらうための生産者の工夫

希少品種のバジルが看板商品。珍しい作物に興味を持ってもらうための生産者の工夫

希少品種のバジルが看板商品。珍しい作物に興味を持ってもらうための生産者の工夫

日本では生産が少ない「ホーリーバジル」をはじめ、あまり市場に出回らない希少な品種を中心に無農薬で生産している「星降るはたけ」。希少品種は販路を獲得しにくい側面があるが、同社では販売はもちろん、加工して料理として提供するまでを全て自社の店舗で行っているという。

twitter twitter twitter

生産、加工、販売、全てを自社で行う

熊本県熊本市中央区に店舗を構える「星降るはたけ」。
ショーケースで販売している野菜は全て、自社で生産した無農薬の野菜やハーブたちだ。

価格は“110円”とお手頃なものが多く、訪れる人々からは「無農薬でこの値段?」と驚かれることも多いそう。無農薬野菜を普通の野菜と同じように手軽に手にとってほしいという思いから、この価格帯をなるべくキープしているという。

ホーリーバジル

星降るはたけのメインとなっているのはバジルだ。
よく見かけるスイートバジルはもちろん、ホーリーバジルやレモンバジル、シナモンバジルなど希少な品種も含め、バジルだけで数種類育てている。

ホーリーバジルはインドの伝統医学であるアーユルヴェーダなどでもよく使用され、生で食べることもあればお茶にすることもあり、タイ料理ガパオライスなどにも使用される。

農業、そしてバジルとの出会い

代表の小森裕暢(こもり・ひろのぶ)さんは30代で新規就農し、生産から店舗運営、販売まで全て行っている。

畑があるのは、店舗から20キロほど離れた御船町。棚田でのコメの栽培が盛んな土地だ。
遊休農地だった棚田を約3反ほど借り、畑として活用している。

前職は広告代理店で働いていたという小森さん。
いつしか「生涯を通してできて、何か人のためになるような職業に就きたい」と考えるようになり、導き出した答えが“農業”だったそうだ。

農業は未経験からのスタートだったが、試行錯誤しながらも独学で学んでいったという。
YouTubeの動画を見たり、マイナビ農業の記事や連載も熟読していたそうだ。

就農当初は野菜をメインに育てていた小森さんだが、バジルとの出会いは意外なところにあった。病害虫を抑えるコンパニオンプランツとして、バジルを野菜と混植していたのだ。とてつもない勢いでバジルが育っていく様子を目の当たりにし、「いっそ商品にしてしまおう」と思いついたのが始まりだったという。

関連記事
コンパニオンプランツとは? 正しい植え方やオススメの組み合わせ例なども紹介
コンパニオンプランツとは? 正しい植え方やオススメの組み合わせ例なども紹介
近頃では趣味で家庭菜園を始める人が増え、自治体が貸し出す市民農園も盛況です。いざ野菜づくりを始めてみると、なぜか途中で枯れてしまったり、害虫が増えてしまったり、期待したほど実が大きくならなかったり、さまざまな悩みに直面…
園芸家が選ぶ!手軽なコンパニオンプランツ5選【家庭菜園向け】
園芸家が選ぶ!手軽なコンパニオンプランツ5選【家庭菜園向け】
畑に一緒に植えることで害虫を避けたり、病原菌の予防効果が期待できたりと、多彩な効果を発揮してくれる「コンパニオンプランツ」。農薬のなかった時代から、先人たちが経験則の中で見つけ出した知恵です。今回は園芸家の原由紀子(は…

ナスと混植するスイートバジル

ひとえに“バジル”といってもさまざまな種類があり、それぞれ違う特性がある。
ゆえに、そのまま生葉の状態で販売していても、使い方がわからないと敬遠されることも多かったという。日本では栽培も少なく希少なこともあり、認知度が低いのもその要因の一つだった。

そこで、料理人として飲食店で働いていた経歴も持っていた小森さんは、それぞれの特性が生かされるような料理やドリンクメニューを考えた。バジルを使った“バジルペースト”を考案し、自店舗で販売し始めた。

バジルペーストをお餅に塗った料理“バジル餅ーズ”

更に、そのバジルペーストを使用したフードメニューも自店舗で販売。たちまちリピーターが付き、今では完売してしまうことも多いという。

本来ならばハウス栽培が多いバジルだが、星降るはたけではあえて露地栽培で育てている。
これにより、味が強くなり、より特徴を引き出すことが出来るのだそうだ。

お客さんからは「実際に自分でバジルを育てて家で作ってみたが、味が全然違った」という声もあるほど。バジルだけでなく、野菜を使った料理も、時期ごとにメニューが考案され、店舗で実際に食べることができる。

クラフトバジルコーラなどのドリンクも、看板メニューの一つだ

飲食との同時並行で、“食べること”に興味を持ってもらう

星降るはたけでは現在、年間を通して50〜60種類の野菜やバジルを栽培している。
自然栽培寄りの、無農薬栽培を目指しているのだという。

バジルはもちろん、ミニトマトやキュウリ、ナス、ジャガイモやエゴマ、クウシンサイといった希少な品種も多数生産している。

中華料理などでよく使われるクウシンサイ

星降るはたけでは、品目を多くすることで“選べる楽しさ”を提供しているのだという。

農業と飲食を同時並行することで更なる付加価値を付ける。
珍しい食材でもチャレンジする機会を増やして行くことで、まずは“食べること”に興味を持ってもらいたいと話してくれた。

星降るはたけで食べられるパスタメニュー。季節ごとに使用する野菜が変わっていく

「ただそのまま売っていても、みんな食べたことがないから分からないので手が出ない。
だったら実際に食べてみて、まずはおいしいかどうか試してほしい。気に入ったら買って帰れますし(笑)」

まず“食”に興味がなければ、“農業”どころか食物にも無関心になってしまう。
加工という、本来は購入した後に家でやる一手間をこちらが担うことで、より特徴を生かすやり方をプレゼンすることができる。

スーパーではあまり見かけない希少な野菜や、無農薬野菜も、生産者が直接その野菜の良さを発信して行くことが大切だと小森さんは考えているそうだ。

2日に1回ほど畑に通い、店舗での調理や加工はほとんど小森さんが担っているのだという。スタッフと話し合い、試行錯誤しながらも挑戦の毎日だ。

今後の展望を尋ねた。

「『継続は力なり』じゃないけど、続けて行くことを目標にしていきたいですね。
やりたいことはいっぱいあるけど、欲を出すと、ろくなことにはならないから、まずは着実に少しずつ」

たった2人で広大な畑と店舗を運営する星降るはたけ。どのように発展していくのか、今後も注目していきたい。

星降るはたけ Instagram @hoshifuruhatake

あわせて読みたい記事5選

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

公式SNS

「個人情報の取り扱いについて」の同意

2023年4月3日に「個人情報の取り扱いについて」が改訂されました。
マイナビ農業をご利用いただくには「個人情報の取り扱いについて」の内容をご確認いただき、同意いただく必要がございます。

■変更内容
個人情報の利用目的の以下の項目を追加
(7)行動履歴を会員情報と紐づけて分析した上で以下に活用。

内容に同意してサービスを利用する