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農産物を輸出したい! でもどうやって? 海外の販路開拓に必要なこととは

農産物を輸出したい! でもどうやって? 海外の販路開拓に必要なこととは

全国の農場を渡り歩いているフリーランス農家のコバマツです。今回やって来たのは、沖縄県うるま市にある「熱帯資源植物研究所」という名の農業生産法人。熱帯植物の研究を行い、栽培や加工品の製造、販売を手がけています。そしてなんと、加工品は海外に輸出もしているとか! 物価高騰などの影響で国内の消費が低迷する今、日本の生産者は海外の販路も視野に入れる時かもしれません。そこで、実際に海外に販路を獲得しているこの農業生産法人に、どのようにして海外まで展開できるようになっていったのか取材してきました!

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熱帯植物の生産から健康食品の加工へ!

今回訪れたのは沖縄県うるま市。最近農産物の海外輸出について気になっているコバマツ。
沖縄ならなにか面白い事例があるんじゃないかといろいろと調べてみると……。

見つけた!

株式会社熱帯資源植物研究所?

農業生産

研究開発

加工品の海外輸出

自社の農産物を加工してヨーロッパや中国に海外輸出をしている農業生産法人とのこと。

農業法人が作る加工品といえば、普通はジャムとかジュースとかになりがちですが、ここは健康食品やサプリメントにして輸出しているようです。

これは気になる! いろいろと聞いてこようと思います!


熱帯資源植物研究所 農業生産法人 株式会社熱帯資源植物研究所
1989年、沖縄県うるま市にて創業。マンゴー、パパイヤ、ウコン、コチョウランなどの熱帯植物の研究・栽培に力を入れてきた。自社で生産した作物を原料に、加工品の製造・販売も行い、ヨーロッパなどへの海外輸出も手掛けている。

代表取締役の名護健(なご・たけし)さんにお話を聞いてきました

コバマツ

自社で熱帯植物の研究から生産、加工、国内外への販売と手広く事業展開しているそうですね! どういった経緯で今の事業スタイルにたどり着いたのでしょうか?
もともとは、1989年に洋ランの新品種の開発・生産をするために、僕の父がこの会社を立ち上げました。

名護さん

お祝い事などで贈答されるコチョウランなどの洋ランは花きの中でも高い単価で取引されている

コバマツ

お父さんの代から始まっていたんですね! 洋ランという高単価の花きの栽培から始めたのは、やはり高収益が見込めるという利点があったからでしょうか?
そうですね、高単価であることもそうなのですが、外貨を稼ぐという目的があったのも理由の一つです。

名護さん

コバマツ

外貨を稼ぐということは、最初から輸出が視野に入っていたんですね。
栽培技術はどうやって習得したんでしょうか?
僕の父が琉球大学の農学部出身だったんです。父がお世話になった琉球大学の教授が、有用微生物を活用した洋ランの栽培研究に力を入れていたそうです。その師弟関係の中で、「研究ベースだけではなく、実際に研究したことを現場で実践していこう!」ということになり、洋ランの栽培だけではなく、マンゴーやパパイヤ、ウコンなど栽培の品目も増やしていきました。

名護さん

研究所では名護さんの弟の幹人(みきひと)さんがパパイヤの栽培を担当している

健康食品を海外輸出するわけ

コバマツ

今はどのような事業をしているのでしょうか?
現在は、県内向けに生食用のマンゴー、自社加工品の原料のためにパパイヤ、ウコンを生産しています。主にサプリや健康飲料に加工していて、国内外に販売しています。

名護さん

沖縄では栄養価が高いことから「まんじゅ(万寿)」などと呼ばれる青パパイヤ

パパイヤを活用した健康飲料の加工品

コバマツ

加工品といえばジュースやジャムとかにされがちだと思うんですけど、どうしてサプリなどの健康食品を作るようになったのでしょうか?
微生物の働きを栽培だけではなく、パパイヤやウコンの発酵飲料にも活用して製造販売しようと琉球大の教授から言われたからです。
創業初期のころ、父と創業したこの教授が、有用微生物群の可能性について世界中を講演して回っていたんです。その中で、海外で健康食品としての需要があることがわかり、開発が始まりました。

名護さん

コバマツ

だからサプリや健康食品として加工が始まったんですね! 輸出はどのように取引を始めたのでしょうか?
輸出は、1997年にオーストリアの企業から声がかかったのがきっかけです。青パパイヤなどを発酵させた健康飲料の「萬壽(まんじゅ)のしずく」を輸出するようになりました。

名護さん

コバマツ

海外の企業の側から声がかかったんですね。でも加工品として輸出するメリットって何なんでしょうか? やっぱり生鮮食品だと賞味期限が短いからでしょうか?
その理由が大きいですね。輸出はスムーズにいかないことも多くて安定的に取引を続けることも大変なんですよ。

名護さん

コバマツ

どんなところが大変なんでしょうか?
輸出した先の国の港で輸入拒否をされたり。加工品でも、ラベルで取引先の国の規定にそった表記をしていなかったら受け入れてもらえなかったりもするんです。

名護さん

コバマツ

せっかく輸出しても現地で入れてもらえないこともあるんですね……。生鮮品のまま出して港で足止めをくらったらすごい損失になりそう……。安定的に取引が続かなかったら、生ものだと保存もきかないから急なロスとかも出ちゃいそうですね。だから輸出するなら日持ちと保存がきく加工品がいいんだ!

農産物輸出に必要なこと

コバマツ

なかなか輸出が広がらない理由も少しわかった気がします。
輸出をしたい生産者は何から始めればいいんだろう……。
現地で動いてくれる信頼できるビジネスパートナーを見つけること。あとは一生産者が現地に商談に行っても交渉力が弱いので、自治体や県などの商談会に乗っかって一緒に行くことをおすすめしますね。
そういった場にまずは自分で足を運んで、現地の担当者からアドバイスをもらうことが大切だと思います。現地の人から見たパッケージデザインや、味などいろいろなアドバイスももらえますし。自治体と行くと補助などのサポートもありますし、現地のコーディネーターもいるので1人で行くよりもスムーズに現地のことを知ることができますよ!

名護さん

コバマツ

いきなり1人で行ってもいろいろとわからないことだらけですもんね。今は地方も輸出に力を入れているから、公的な機関のサポートも受けつつ、まずは現地に行って現地の人のニーズを知ることから始めるのがよさそうですね!
輸出はコストも時間もかかりますが、今後農業経営を安定させていくための販路として、考えられる選択肢だと思います!

名護さん

「農産物の輸出は、農業経営を安定させるために必要な取り組みの一つなのではないか」。そのように考えている生産者も少なくないと思います。一方で、実際に輸出に取り組む農家が多くない背景には、さまざまな理由があるのだと今回の取材でわかりました。
日本の農産物、特に果物は海外で高い評価を得ていると聞きますが、あえて青果としてではなく加工品で輸出をするというのも一つの選択肢ではないでしょうか。熱帯資源植物研究所の取り組みを通じて、工夫次第で輸出の壁を乗り越えられるのだなと実感した取材でした。

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