研究機関が抱えていた計測作業時の課題
宮崎県総合農業試験場は100年以上に渡り、宮崎県の農業を取り巻く情勢変化や生産現場の課題に対応すべく、技術開発・新品種の育成などを行ってきた研究機関です。
試験場での研究において、果実の直径を測る“肥大計測”作業は、新品種の成長具合の調査分析や品質向上の条件を知るために欠かせない重要な作業です。
にもかかわらず、実はこれまで“果実専用”のノギスがほとんど存在しなかったため、果実に適していない市販のノギスを使用していたといいます。
「サイズバリエーションも少なく、素材も壊れやすいプラスチック製だったり、スチール製のデジタル計測機が商品化されても水に弱かったり、なかなかスムーズな計測が出来ませんでした」と長年の苦労を語るのは、同試験場果樹部の山名宏美主任研究員。
数年前から品質を優先し、株式会社ミツトヨ製の「デジタルノギス+受信ユニット(Bluetooth機能なし)」を採用していますが、この度その進化版であるBluetooth版ワイヤレス通信システムの導入を決断されました。
「研究機関において、データを活用した農業技術の向上や新品種開発と、作業効率化による労務費等削減の両立は非常に重要です。今回のBluetooth版通信システム導入は、『複数人数で、複数工程』を必要としていた計測作業を、『一人で瞬時にデータ登録』に変えてくれました。計測データはすぐに農業経営に活用でき、まさに『組織』にも『計測者』にもメリットのある導入となりました」と話す山名さんに、新商品の導入の決め手を聞きました。
【決め手その1】Bluetooth機能によるリアルタイムなデータ登録の実現
試験場内の農地では、一般的な短期調査で10日間隔、長期的な生育調査で1カ月間隔で柑橘類の肥大計測が行われます。
「1回の作業で多い時に600個近く計測し、少なくとも2時間程はかかります。アナログ計測時代は計測後に事務所に戻ってデータを入力し、さらに入力ミスがないか最終チェックをしていたため、全ての作業を終えるのに一日の大半を要していました」
そんな手間のかかる計測作業が、Bluetooth通信システムの導入で大幅に改善されました。
操作は簡単で、果実を計測した際、手元の送信ユニット部にあるボタンを押すだけ。リアルタイムにデータが手持ちのタブレット(もしくはスマートフォン)に転送されるため、計測作業が終了した時点でデータ登録も完了します。
「以前は二人一組で一人が計測し、もう一人が記録をしていましたが、計測現場でデータ登録までを一人で完結できるようになりました。とにかく、計測後の事務所での入力作業がなくなったことが最大のメリットです」と新しいBluetooth通信システムによる作業効率化を実感されている様子。
転送されたデータは自動的にエクセルに登録されるため、グラフ変換や平均値計算も簡単にでき、研究資料や営農指導の際にも資料として活用しているといいます。
また、導入の決め手の一つとして「これまで使用していた同社製デジタルノギスに、『Bluetooth版U-WAVE(ワイヤレス通信システム)』を追加購入するだけでノギス自体を買い替えずに使用できる」という点も大きかったといいます。
【決め手その2】ジョウの素材・形状の進化による操作性の改善と豊富なサイズ展開
これまでのノギスは、サイズのバリエーションも少なく、デコポンなどの果径が大きいものはなんと測定部(ジョウ)を自作でカスタマイズして伸ばし計測していたそう。
さらに、ジョウの素材は一般的にはステンレススチール製のため、桃などの繊細な果実に傷がつきやすく、計測時の配慮も手間の一つだったといいます。
新しいプラスチックジョウデジタルノギスは、ジョウにプラスチック素材を採用し、果実に傷をつけることが減りました。
また、最小80mmから最大290mmまで測れる5種類のサイズ展開があり、果実に合わせてベストなサイズ選びができます。
「先端がとがった硬い金属製のジョウだと、同じ果実を何度も計測する際に果実を傷つけてしまうことが度々ありましたが、ジョウの素材と形状が果実に適したものに変わり、安心して使えるようになりました。ジョウが長くなったことで大きい果実も測れるようになり、とても計測がしやすくなりました」
【導入の決め手その3】雨天時でも気を遣うことなく計測ができる防水機能
肥大計測は定期的に実施することに意味があるため、雨の日でも行います。その際、防水機能がないデジタルノギスでは雨や葉についた水滴が電子パーツへ悪影響を及ぼす可能性がありますが、新商品は電装回路を強力に保護する保護等級IP67モデル(※2)を実現。
(※2)塵埃が内部に侵入しない。一定の圧力、時間で水中に浸漬しても有害な影響を受けないモデル
「防水機能がついたことで、水滴などを気にすることなく計測できるようになりました。土や泥が付くことが多いので、使ったあと簡単に水洗いできる点も便利です。また、デジタル表示部は経年劣化による黒ずみなども見られません。数値もくっきり見やすく、そんな所にもミツトヨ製品のクオリティの高さを感じます」
果実の“肥大計測”には大きなメリットが。今後のスマート農業に欠かせない管理項目です!
そもそも果実のサイズを測ることにはどんな意味があるのか。研究機関で長年肥大測定を行っている山名さんに、その重要性やメリットについて教えてもらいました。
「出荷基準を満たした糖度やサイズの果実を生産することが最大の目的ですが、新品種の生産時に、計測データを蓄積することで、『ある時期にこれくらいの大きさなら収穫時期にはこれくらいになる』ということがわかるようになります。そうすると、摘果時期に基準サイズ以下や以上のものは収穫時期に出荷基準を満たさないと事前判断ができるため、摘果するものを選別できるようになり収量も上がります」
さらに、品質管理面においてもこんなメリットが。
「過去のデータと比較することで、その年の生育度合いを見極めて臨機応変に生育をコントロールすることができます。柑橘類では、水分を抑えたり根域を制限して糖度を上げますが、ストレスを与えすぎると酸度が上がったり生育が遅れたりするため、タイミングを見極める目安があると品質維持につながります」
肥大計測のデータに基づいて効率的に生産管理を行うことで、収量や品質面、販売単価や労務費の面でも大きなメリットが生まれます。
みなさんもぜひ、今後、農業のIoT化が進む際にも便利なデバイスとして応用が期待される『プラスチックジョウデジタルノギス+Bluetooth版U-WAVE』を使って作物の肥大計測を取り入れてみませんか。
株式会社ミツトヨは全国各所に営業所を設置。カスタマーサポートセンターも備え、全国どこでも安心してお客様にご利用いただけるような体制を構築しております。
本商品に興味を持たれた方は、是非お気軽に下記へお問合わせ下さい。
商品の仕様に関するお問い合わせ
株式会社ミツトヨ 営業戦略企画部営業戦略課
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