【お話を聞いた人】
鈴木寛人(すずきひろと) 株式会社ファーマインド 国産事業本部 国産商品部門 国産開発部 部長 株式会社ファーマインド農園 代表取締役 株式会社ファーマインド茨城農園 代表取締役 2012年に株式会社ファーマインドに入社。国産商品部門で青果物の商品開発や調達、新商品開発を手がける。 これまでに、規格外品のリンゴを使ったカットフルーツや「冷やし甘いも」などの商品を農家やJAと一体となって開発・販売。実家はナシ農園で、大学時代は果樹の栽培研究に打ち込み、前職では大手市場でセリ人をつとめた。 |
国産ブロッコリーが並ぶ未来を実現、いま抱く食料自給への危機感
2023年8月、農林水産省から2022年度の食料自給率が発表されました。カロリーベースでは、前年度から横ばいの38%、生産額ベースでは5ポイント低い58%と過去最低。
―――日本の食料自給率の下降に歯止めがかかりません。
食料自給率が38%ということは、毎日の食事の約6割を海外の食材に頼っているということになります。
ただし、これは品目によって大きな差があります。たとえば野菜では、100%国内生産できているものから、すべてを海外に頼っているものまでさまざまです。
鈴木さん
出典「農林水産省 食料自給率のお話 その1:食料自給率って何?日本はどのくらい?」
生産事業では、最初に本格的に取り組んだのがブロッコリーです。グループ会社が大規模生産モデルの構築に成功し、国内トップクラスの生産量を誇ります。
鈴木さん
―――ブロッコリーと言えば、栄養価が高く、人気の野菜のひとつです。
そこで私たちは、2018年に、すでに1998年からブロッコリーの生産を手掛けていた『I LOVE ファーム』グループと手を組みました。自給率の向上を目指して、大規模化に挑戦したのです。
現在は、北海道から九州まで日本全国に生産拠点を持ち、年間を通して供給できる体制が整っています。農地面積は国内最大級のおよそ1,100ha。ブロッコリーは1年を通してスーパーで気軽に買える野菜となりました。
鈴木さん
―――国内であまりない、大規模生産の成功事例ですね。
この事例をもとに、ファーマインドだからこそできる新しい栽培モデルの構築を他の生産現場でも進めました。
鈴木さん
ファーマインドだからこそできる生産モデルで、持続可能な供給に寄与する
大規模栽培が実現した理由
―――どんな作物で大規模化を進めたんですか。
鈴木さん
―――なぜ果樹なんでしょうか。
農林水産省の調査では、国内の果樹の栽培面積は年々減少している一方で、卸売価格は上昇しています。果樹を食べたい人はいるのに、供給が追いついていないのです。
鈴木さん
果樹は、収穫までに時間を要することや剪定などの栽培技術が複雑なことから、参入の難易度が高いことで知られています。海外では大規模な果樹生産が行われていますが、日本の産地は中山間地域に集中していることが多く、大規模に行っている事例はほとんどありません。
そこでブロッコリーと同じように、自社農園の開設を決意しました。
ファーマインドだからこそできる、果樹の新しい生産モデルに挑戦しようと考えたのです。
鈴木さん
―――「ファーマインドだからこそできる」とはどういうことでしょうか。
ファーマインドには、全国規模のコールドチェーンと情報ネットワークによる青果の総合流通プラットフォームがあります。全国14か所の青果専用センターと陸海の物流がコールドチェーンで繋がり、全国1,600以上の納品先へ365日配送。これにより、新鮮でおいしい青果物を消費者へ安心安全にお届けできるようになります。
また、青果流通を集約化し独自の情報ネットワークを活用することで、消費者へ欲しい時に欲しい量をお届けできるようになりました。このように青果物を大規模に効率よく生産者から消費者へ届ける仕組みを作りあげることで、中間流通コストの削減も実現します。
こうした環境を整えることで、これまでになかったスケールでの栽培を目指せるようになりました。
鈴木さん
※生鮮食料品を低温状態で鮮度を保ちながら生産者から消費者に届ける、輸送・保管の一貫した流通体系のこと
――でも、たくさん作っても売れないと食品ロスなどの問題が生じませんか。
ファーマインドでは、生産した果物をそのまま売ることはもちろん、規格外品などは加工して販売することが可能です。すでに全国のスーパーなど小売店とのパイプも構築できているので、生産したものが無駄にならないよう全国の食卓へと届けることができるのです。
また、当社には消費者調査を専門に行う部署もあります。今後はその部門が集めたデータを活用して、消費者に選ばれる新しい商品を開発することも考えています。
鈴木さん
鈴木さん
果樹栽培の可能性を切り開き、マーケットと地域に還元していく
―――先ほど「果樹の栽培は難しい」という話がありましたが、栽培方法に何か工夫はありますか。
たとえば、初めに手掛けたリンゴ農園では、フルーツ大国であるイタリアの栽培方法を採用しました。
リンゴの樹の間隔をあけずに密集して植樹し、なるべく栽培に手をかけずに済むよう工夫しています。そうすることで1反(約1,000㎡)当たりの生産量は、通常のリンゴ農園の2~3倍に当たる約6tに。整然と並んで密集した樹で栽培と収穫を行うので、作業効率が高く、労働時間も通常より約40%ダウンできるため、生産者と消費者に対価を還元することができます。
鈴木さん
鈴木さん
―――リンゴやブドウに続く、次のチャレンジも考えているのでしょうか。
こちらでは、樹と樹を繋げるジョイント栽培を採用しています。ジョイント栽培は、作業動線が簡略化され、かつ大型機械の導入も行えるため、作業時間の大幅な省力化ができる栽培方法です。さらに結果枝をV字に配列することで上向き作業がなくなり、作業者の身体的負担が大幅に軽減されますし、収穫量も慣行比でおよそ1.5倍増加する予定です。
鈴木さん
このように国内では今までになかった、大規模省力化モデルでの果樹栽培が、日本の食料の安定供給に寄与するものと信じています。
鈴木さん
「豊かな日本の未来を創る」というチャレンジに興味を持った人、募集中です!
―――茨城農園は2022年に始まったばかりとのことですが、農園の成功に必要なものは何でしょうか。
果樹農園の運営には、年間通して様々なミッションがあります。私たちの想いに共感し、ともにチャレンジしてくれる人が必要です。
鈴木さん
―――どんな人に仲間になってもらいたいですか。
また、農家として独立したい人や、学んだ農業の知識を活かしたい人にも、「新しい農園を自分で作る」というまたとないチャンスが得られる場所です。
鈴木さん
―――就業先として、ファーマインド茨城農園にしかない魅力はありますか。
農業は、天候などの要因によって収穫量が大きく変動し、収入が不安定になることが少なくありませんが、当社では「社員」としての給与収入になりますので、安定的に、安心して働いてもらえるはずです。
また、ブロッコリーと同様、供給量をより安定させるために生産拠点を全国に展開することも視野に入れています。その場合は、農園での成果を鑑みて、新しい農園を創るリーダーになってもらうといったキャリアパスも考えられます。また、本部で農園計画、つまりこれからのチャレンジを共に考える側になる、という可能性もあります。
希望や実績に応じて様々なキャリアが描ける。それもファーマインドという大きな企業が運営する農園だからこその魅力ではないでしょうか。
鈴木さん
日本で類のない果樹栽培の挑戦という意義あるチャレンジに共感し、面白さを感じた人と出会えることを楽しみにしています。
鈴木さん
【お問い合わせ】
株式会社ファーマインド茨城農園
住所:茨城県かすみがうら市中志筑63-1
e-mail:info-agri@farmind.co.jp