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「農福連携フォーラム&マルシェ」開催 ~農業と福祉がつながる魅力的な活動をレポート~

「農福連携フォーラム&マルシェ」開催 ~農業と福祉がつながる魅力的な活動をレポート~

障害者等の農業分野での活躍を通じて、自信や生きがいを創出し、社会参画を促す取り組みが「農福連携」です。令和5年度、全国8か所で開催される「農福連携フォーラム&マルシェ」では、各地域の魅力的な取り組みを紹介。今回、9月に開催された北海道・東北にて開催された内容をレポートします。

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地域の魅力的な取り組みにふれる ~北海道フォーラムレポート~

8都市開催のうちの第一弾は北海道。
すでに農福連携を実施している方やこれから取り組みたい方、関心のある方など、北海道札幌市での現地開催とWEB配信のハイブリット開催で多くの人が参加しました。

プログラムは、【人・地域・未来を耕す、北海道畜産の6次産業化×農福連携】をテーマにした講演のほか、【北海道の地域資源とつながりを活かした農福連携】を語り合うパネルディスカッション、さらに【出所者の雇用について~北海道における就農を中心に~】として法務省(札幌矯正管区)からの情報共有が行われました。

今回は、ノウフク・アワード2022グランプリを受賞した、「農業組合法人共働学舎新得農場」代表の宮嶋氏の講演内容について、ご紹介します。

「できること」の積み重ねで生まれた世界的に認められたチーズ

北海道のほぼ中央に位置する日本有数の農業地帯、十勝。
このうち、昼は暖かく夜は涼しい内陸性の気候が特長の新得町(しんとくちょう)に共同学舎 新得農場があります。広大な敷地で牛を育て、搾った牛乳を使ったチーズ作りの他、野菜作りやカフェの経営なども行っています。

「うちは従業員の1/3が心身に負担を抱えている人です。彼らと働き、生活をしながら、企業として成り立つことを目指してきました。設立は45年も前のことですから、『農福連携』という言葉が生まれるずっと前ですね」と話すのは、代表の宮嶋望さん。

共同学舎は元々、目に障害のある宮嶋さんの父が始めた事業でした。
父を「理想を貫く人でした」と振り返る宮嶋さん。
「それぞれが抱えているものはバラバラの方が良い」と多様性を守ることを譲らなかったと言います。
父の考えを踏襲した宮嶋さんは、「負担のある人でも、一人ひとりが出来ることをやればいい。それを組み合わせて『自活』できればいい」と考えました。

「共同学舎に来た人には、『何をしたいか、何ができるか』を自分で考えてもらいます。本人の意志、意欲を尊重したいのです」と宮嶋さん。
チーズを作るまでには様々な作業がありますが、それらの行程はすべて従業員の『自分ができること』の組み合わせでできあがったとのこと。
「自ら関わったものが売れ、周囲が喜ぶ姿を見ることで、社会の一員になったという自負を得ることにもつながっています」

共働学舎の従業員は、障害のある人、刑務所を出所した人、高齢者など、さまざま。宮嶋さんは「彼らは、『社会が解決できない問題は何か』を伝えてくれるメッセンジャーだと考えています」と、自らも学びを得ていることを強調しました。

新得農場で作られた手作りのチーズは、平成10年に「オールジャパン・ナチュラルチーズコンテスト」で最優秀賞、平成22年には「ワールドチャンピオンチーズコンテスト」で銀賞を受賞。北海道で開催された洞爺湖サミットでも各国首脳のテーブルに並ぶなど、品質が世界的に認められています。
「一人ひとりを活かすための手作りによって、結果的に質の高いものが出来上がっているのでしょう」
 
宮嶋さんのウィットに富んだユニークな講演。会場では多くの人が、時に真剣にメモをとり、時に顔をほころばせながら、熱心に耳を傾けました。

今後、各地で行われるフォーラムでも、様々な形で農福連携に取り組む人の有意義な話が聴けることでしょう。

「農福連携」の取り組みから生まれた農作物や加工品が多数出品 大好評のマルシェ

フォーラムの同日には、「農福連携マルシェ in 北海道」が開催されました。
札幌地下歩行空間(チ・カ・ホ)に設置された会場は、ひっきりなしに買い物客が訪れる盛況ぶり。開始からあっという間に完売する商品もありました。
北海道各地で行われている農福連携の現場で育てられた農産物、またそれらを使った加工品が販売されたマルシェ。どんな方々が出店したのでしょうか。

連携活動の成果を集めて販売 各店舗とも大盛況、北海道の地域性光るマルシェ

◆共同学舎 新得農場(新得町)
自社の搾りたて牛乳で作ったチーズや、元は自分たちの食材作りのために始めた野菜を販売。
「したい」「できる」という自発性を尊重しているので「みんなイキイキと働いていますよ」とのこと。

◆NPO法人 サトニクラス(月形町)
自家栽培や近隣農家から仕入れた野菜を漬物にしたり、乾燥・加工したりして販売。障害特性に応じた分業を行っています。「保存料、着色料を使っていない漬物が人気ですね」

◆カレイドスコープ(札幌市北区)
人手が欲しい農家と働く場を求める障害者、生活困窮者、高齢者をつなぐコーディネーター。
「作業の仕方を提案するなど、円滑に仕事が進められるよう様々なお手伝いをしています」

◆就労支援事業所リプラぴあ~の(北見市)
オホーツクのゴボウ焙煎茶が人気。
「お茶作りには多くの工程があります。メンバーがやりがいを持てるよう色んな業務を行っています」
タネイモ作りから行う本格的なじゃがいも栽培も実践中。

◆社会福祉法人 空知の風(岩見沢市)
岩見沢で開発された小麦「北の香り」や地元の野菜と卵を使ったパンの製造・販売を分業して行っています。
「作ったものが売れる喜びをメンバーさんと分かち合っています」

◆社会福祉法人 新冠ほくと園(新冠町)
障害者が畑作業をしたじゃがいもや南蛮を自社運営の八百屋で販売。
「南蛮味噌や山椒漬けなど6次化製品にも使っています」
一番人気はワタやタネも食べられるピーマンだそう。えぐみが少なく、ピーマンが苦手な人にも好評です。

◆社会福祉法人 北海道光生会(美唄市)
美唄市内で宅配弁当を運営。製造や宅配作業も分担して助け合いながら行うのに加え、高齢者の安否確認や話し相手になることあります。「地域とのつながりを大切にしています」

◆多機能型事業所ぴ~か~ぶ~WORKS(就労A型・就労B型)(札幌市)
札幌から1時間半の長沼町の畑で、農家があまり作りたがらない足の早いキクイモなどを栽培。チップス状などに加工して販売を行っています。「自分たちの作る野菜がテレビなどで話題になるとみんな大喜びです」

◆札幌刑務所(札幌市東区)
更生支援活動の一環としてじゃがいも、タマネギ、スイートコーンなどを栽培。
「営利目的ではないので、安く地元の方に還元しています」毎年の販売会には長蛇の列ができるそう。

いずれの事業者も、環境特性を生かし、それぞれが「できること」を上手に分担して、メンバーもやりがいを感じながら仕事を楽しんでいることが伝わってきます。

商品が魅力的なことはもちろんのこと、マルシェは地域の農福連携の活動内容や、それに意欲的に取り組んでいる人たちを知る貴重な場にもなっています。
このような空間から生まれる新しい出会いやアイディアが、生産者や消費者の生活をより豊かにするのでしょう。

第二弾は東北にて開催、以降の開催地も注目!是非お気軽にお越しください

9月22日、第二弾として東北でもフォーラム&マルシェが開催されました。

フォーラムでは、ノウフク・アワード2022準グランプリ「未来を耕す」を受賞した社会福祉法人 月山福祉会の石川一郎理事長が登壇。
「未来を耕す共生の牧場~月山福祉会の農畜産事業と障がい者支援~」について講演し、パネルディスカッションでは「東北の地域資源とつながりを活かした農福連携」をテーマに議論が盛り上がりました。

マルシェは、宮城県仙台市の中心地、仙台駅のほど近くに設置されたAER(アエル)2階の会場で実施。
ガラス張りのひらけた会場では、各事業者が立ち寄った人に商品についてていねいに説明するなど、さかんに会話が交わされ、穏やかな時間が流れていました。
農福連携の取り組みを知らなかった購入客は「この機会に農福連携を知ることができてよかった」などと話し、新しい魅力に触れる1日となりました。

ノウフクアワード2020優秀賞を受賞した「社会福祉法人 こころん」のブースでは、たまねぎ、オクラ、卵などを出品。畜産、青果物のJ-GAPを取得してこだわりの食材を提供するほか、耕作放棄地の再生や、経営困難な養鶏場の継承、直売所の運営などの多様な活動に取り組んでいます。

「一般社団法人 空」では、なす、ピーマン、とうがらしなどを出品。人々が健やかに暮らせる生活などを目指して、児童発達支援、放課後等デイサービス、生活介護、居宅サービス、移動支援にも取り組んでいます。

地元、石巻産のホップを使用したクラフトビール3種、ホップソルトを出品した「一般社団法人 イシノマキ・ファーム」は、ノウフクアワード2022チャレンジ賞を受賞し、ソーシャルファームでのホップ栽培、ビールの醸造等の活動、社会的弱者の農業就職支援などを実施しています。

障害のある人が親元から自立し、ありのままの自分で働くことを目指す「中城建設 まちワクファーム」では、めんこちゃんにんにく、干ししいたけ、などを出品。グループホームの「まちわくホーム」や障害者就労事業所「まちわくワーキン」との連携を通して野菜の栽培が行われています。

「了美 vineyard and winery」では、4種類のワイン、ガーリックオイルなどを出店。敷地内の就労継続支援事業所で、ワインの製造や野菜の栽培、炭・薪製造販売、菓子製造などに取り組みます。また、レストラン内での調理から接客、清掃などの業務は、障害者も担当しています。

地域の高齢化によって農業従事者が減少する中、防災の機能を果たし地域の景観を作る農地・農村を保全・活性化していくことを目指している「株式会社 耕野」では、米、ベビーリーフを出品。水稲の作業委託や、ベビーリーフなどの軟弱野菜栽培に取り組みます。

古着ネット販売、植物工場の野菜栽培、野菜加工補助を通して、衣・食・住をテーマに循環型ビジネスに挑戦している「一般社団法人 ステージパス」では、ホワイトセロリ、ルッコラ、青パパイヤ、乾燥青パパイヤの他、米袋をエコバックに加工した商品も出品。

「社会福祉法人 みんなの輪」では、米粉クッキー、ジャムの他、利用者の方が作った小物を出品、絵の作品も展示。人と人との「輪」、人と自然との「和」をつなぎ、障害の有無に関わらず誰もが安心して暮らせる地域社会を目指しています。

今後も、北海道や東北に続いて、各地でのフォーラムとマルシェが開催されます。
地域の農福連携の魅力について、知っていただけるこの機会にぜひご来場、ご聴講ください。

今後開催される各地のマルシェの詳細こちらから

【お問い合わせ】

農都共生総合研究所
mail:all@notosoken.jp

特設ページ
農福連携魅力物語
農福連携魅力物語
障害者等の就労の場の創出だけではなく、農業従事者の減少等の課題を抱える 農業側にとっても、人手の確保や地域農業の維持・活性化等が期待でき、「農業」と「福祉」の双方の課題解決につながる取組として、様々な形で全国的な広がり…

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