紅白のイチゴを完熟出荷、ギフトや製菓で絶大な支持を得るいちご園
温暖な気候に恵まれた静岡県は、全国有数のイチゴの産地。牧之原市の畠農宝いちご園では、静岡県生まれの「紅ほっぺ」と白イチゴの「スウィートミルクベリー【Sweet milk berry】」の2品種に特化して、ハウス面積3反5畝(約3500平方メートル)で2万8000株を栽培しています。
園主の畠功樹さん(39)は、今から20年前、地域では最年少の19歳(当時)でイチゴ生産者として就農しました。実家はサラリーマン家庭で農業は初心者でしたが、周囲の生産者や取引業者の方々から教わりながら実績を積み、現在は中堅として産地をけん引しています。
畠さんはイチゴを完熟した状態で出荷する数少ない生産者。色・形・食味に優れた畠さんのイチゴは、贈り物やケーキのデコレーションにもぴったりと評判で、全国の洋菓子店からも注文が入ります。ギフト需要に応えるために紅白の2品種に絞って生産しており、ギフトの注文が入ると、お届け先の在宅時間を確認し、出荷日の早朝に収穫して冷蔵庫で実を引き締め、集荷の直前までクール便のトラックと同じ5℃で保管して届けるという徹底ぶりです。
そのかいあって、毎年リピートしてくれるお客さまもいるといいます。
クリスマス需要に応えるために、花芽分化を1日でも早く
イチゴはクリスマス期に需要が多く最も高値がつきます。ギフトやケーキ用に力を入れている生産者にとって、この時期の出荷は外せません。
「12月20日をピークに、1日過ぎるだけでも価格が半値まで落ちるため、それまでにいかにたくさん出せるかは毎年気にしています」と畠さんも話します。
早期に収穫するためには、早く花芽分化することが大事。畠農宝いちご園では、早い時は9月からクリスマス期のイチゴの予約注文が入りますが、実際にその時期に採れるかどうかは9月の定植後の気候次第。近年は育苗中の高温多湿だけでなく、定植後も気温が高いままで根がストレスを受け、花芽分化が遅くなる傾向があります。
「採れなかったときは謝るしかないですよね」と話す畠さんですが、できるだけ早く一番花を咲かせるために肥培管理や育苗で工夫を重ねてきました。
その一つが、昨年試験的に導入した育苗資材『ジフィーセブンC』です。ココピートを生分解性の不織布で包んで圧縮した培養土で、種苗会社から紹介を受け、紅ほっぺ300株分を導入しました。
もともとは育苗の作業負担を軽減する目的で導入したそうですが、うれしい驚きで、同じハウスの従来区と比べて3日も早く開花が見られたのです。
「定植2週間後にランナーを抜こうと触ったとき、『ジフィーセブンC』を使用した苗はしっかり根が張っているのがわかりました」と畠さん。従来も、気化熱の効果でビニールポットと比べて花芽分化が早いという理由で育苗には紙ポットを使用していましたが、『ジフィーセブンC』の苗はそれよりさらに開花が早かったといいます。
『ジフィーセブンC』で育苗した苗の活着が良い理由の一つは、ココピート100%の培養土に適度な空気層が保たれ、根がのびのびと育つ環境であることが挙げられます。
また、根は暗闇に向かって伸長するため、ビニールや紙のポットでは壁面に沿って根巻きを起こしやすくなりますが、不織布に包まれた『ジフィーセブンC』では伸長を休止し、代わりに新たな根が生まれます。こうして根が増えた状態で定植すると、休止していた根が一斉に土の中でぐんぐん伸び、初期活着が良くなると考えられています。
「『ジフィーセブンC』の苗は定植時に根がポット内で巻くことなくツンツンと出ていました。活着が良いので、開花のばらつきも少なかったです」と手応えを感じた畠さん。
今シーズンは紅ほっぺ全7,000株中5,000株に『ジフィーセブンC』を導入しました。
活着の良さだけでなく、育苗の省力化・効率化も実感
『ジフィーセブンC』を試して、根の初期活着の良さ、開花の早さ、生育のばらつきの少なさに加え、もともとの狙いだった育苗・定植の省力化にも効果を感じているという畠さん。「まず、育苗トレーにポットを並べて培養土を入れるという重労働から解放されました」と話します。
『ジフィーセブンC』は、ココピートを乾燥させた圧縮培養土を水で戻して使います。畠さんは、水を張った大きなおけに入れて戻し、トレーに並べてランナーを受け、育苗時は5cm間隔の点滴チューブでかん水します。これらの作業を、昨年までは家族に手伝ってもらっていましたが、5,000株分を導入した今年は、畠さんと従業員の2人だけで行うことができました。
定植の作業性の向上も実感したようです。これまでは紙ポットを破いて剥がし、根巻きがあればほぐしてから定植していましたが、「『ジフィーセブンC』の苗はポットを破く必要がなくなった。しかも根巻きがなく、培養土が少ないぶん高設ベッドの定植穴を掘る量も少なくて済むので作業しやすい」と畠さん。
「育苗中は培養土が多いぶん紙ポットの苗のほうが大きく生育しますが、定植後は『ジフィーセブンC』の苗が一気に追いついてきますね」と実感を込めて話してくれました。
新規資材を使いこなして、ギフトをしっかり届けたい
19歳で就農してイチゴ栽培のコツをつかむまでに3年かかったという畠さん。『ジフィーセブンC』を導入して3年目になる来年は、紅ほっぺ5,000株に加えて、スウィートミルクベリー【Sweet milk berry】5,000株にも使ってみたいと考えているそうです。
「同じ環境で育てた場合、白イチゴは赤イチゴより生育が遅いので、これまでは遅い白に合わせてギフトを組んでいましたが、白イチゴの収穫を少し前倒しできればその分早く完熟イチゴをセットで出せますね」と、抱負を語ります。
「今年5,000株やってみて、ランナーの採り方などについて慣行との違いがわかりました。適した方法がシミュレーションできたので、来年はもっと上手に育苗できると思います」と畠さん。従来のやり方を変えることは大きなチャレンジですが、良いと思ったことは突き詰めて試してみるのが畠さんの性分です。
気候変動によって活着不良や花芽分化の遅れが生じるなかでも『ジフィーセブンC』を上手に使って、多くの人に喜ばれるイチゴを作り続けてくれることでしょう。
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