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野菜セットを売らない有機農家、「適地適作」で選んだ販路

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

野菜セットを売らない有機農家、「適地適作」で選んだ販路

有機農家にとって、野菜セットを個人向けに販売するのが営農の1つのパターンになっている。だが、神奈川県愛川町で就農した千葉康伸(ちば・やすのぶ)さんはそうしたやり方を選ばず、小売店や飲食店向けの販売で営農を軌道に乗せた。背景には「無理せず適地適作で」というコンセプトがある。

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SEから農業の世界へ転身

千葉さんは46歳。金融系の会社でシステムエンジニア(SE)として働いた後、30歳で退職。高知市の特定非営利活動法人(NPO法人)と高知県が有機農家の育成を目指してつくった学校で学び、2010年に就農した。

SEをやめようと思ったのは、「自分の仕事が誰かの笑顔につながっている」という実感を持てなかったからだ。そのとき頭に浮かんだのは、父親や祖父の「昔は良かった」という言葉。知人の勧めもあり、その意味を探るため、毎年のように東南アジアを訪ねるようになった。

行く先々で「高度成長時代の日本はこんな感じだったのだろうか」と感じた。人と人との距離が近くて、日々を大切にしながら、楽しく生きているように見えた。「夢をつかもうとみんなギラギラしていた」(千葉さん)。

都市部でも少し車を走らせると農地があり、牛が田んぼを耕していた。「バシッとスーツを着込んだ会社員」が、仕事が終わると屋台で食事を楽しんでいた。食と農に関係するこうした光景の中に、人を笑顔にさせる何かがあると感じた。

「どうしたら農業は持続可能になるのか。それができないと、日本は大変なことになるのではないか」。そんな思いに背中を押され、脱サラを決めた。当初は栽培技術を身につけて、農家カフェを開こうと思っていた。高知県の学校で有機栽培を学んだことで考えが変わり、専業農家の道を歩むことになった。

千葉康伸さんが育てているノラボウナの畑

千葉さんが育てているノラボウナの畑

高知の学校で有機栽培の技術を習得

有機栽培を学ぼうと思ったのは、経済的なメリットを考えたからだ。脱サラ後、試しに慣行栽培と有機栽培のニンジンを食べ比べてみたところ、味の違いがわからなかった。にもかかわらず、有機野菜が高く売られているのを見て、「ビジネスチャンスがあるのではないか」と思ったのだ。

有機を専門に教える高知県の学校に入ってみて、「味が変わらない」という印象がいい意味で覆された。千葉さんが「師匠」と呼ぶ学校の代表が育てた野菜を食べてみて、予想外のおいしさに驚いたのだ。1年間そこで学び、さらに代表が運営する農場で1年間研修した後、愛川町で就農した。

千葉さんによると愛川町は「ひとめぼれ」だった。

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