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農場をどれだけ大きくすべきか?立地と循環を重視して見つけた最適解

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

農場をどれだけ大きくすべきか?立地と循環を重視して見つけた最適解

資材価格の高騰を受け、農業界が1つの課題に直面した。「適正な経営規模とは何か」という問いだ。答えのヒントを探るため、酪農を手がける松本牧場(埼玉県狭山市)の松本陽一(まつもと・よういち)さんを取材した。キーワードは「循環」と「立地」だ。

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大学の卒論に見る経営方針の原点

「地理的条件や気候に合わせることが大切。埼玉県は経営面積が限られるので、適正規模を維持しながら循環型の経営をやっていきたい」。経営方針について質問すると、松本さんはまずこう答えた。

松本さんは現在41歳。酪農学園大学(北海道江別市)を卒業した後、2005年に実家で就農した。

牧場で働いているのは、両親と妻を含めて4人。立地としては都市近郊の部類に入る。

飼養頭数は子牛を産んだことのある経産牛とまだ妊娠したことのない育成牛を合わせて54頭。9.5ヘクタールの畑でデントコーンや大麦を育てて粗飼料の多くを自給しているほか、エコフィード(食品残さから製造する飼料)や配合飼料などを購入している。

営農の中身を具体的に説明する前に、松本さんの卒業論文を簡単に紹介しておこう。現在の営農スタイルの原点が、卒論で考察した内容にあるからだ。この中で松本さんは北海道十勝地方の複数の牧場と千葉県のある牧場、実家の3つのデータを比較したうえで、自分の牧場の強みが何かを考察した。

松本牧場の様子

飼料作物を育てる畑を増やすべきかどうかが、焦点の1つになった。実家の畑は当時5.5ヘクタール。その面積のままで飼料作物の収量を増やすとともに、配合飼料を買う量も併せて増やすことを考えてみた。

松本さんの結論は「それだと限界がある」。幸い、実家の周囲で農地が余り始めていたので、畑をある程度広げるチャンスはあった。それを踏まえ、面積を増やしたときに、経済的なメリットがどれだけあるのかを卒論で分析した。

では卒論の内容に照らして、現在の9.5ヘクタールという面積をどう評価すべきなのか。そうたずねると、答えは「当時考えていたのと似たような規模になった」。今後も多少規模を大きくする可能性はある。だがそれは隣りの畑が空いたときなど、効率よく無理なく拡大できることが条件になる。

しかも肝心なのは、単に畑の面積がイメージしていた水準になったということではない。その過程で、1頭当たり1日の乳量が2~3割増えたのだ。営農の質が高まった点にこそ、この間の努力の成果が示されている。

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