コロナを経ても営農は「順調」
祥誉さんは会社勤めをした後、2014年に神奈川県藤沢市で就農した。31歳のときのことだ。現在の面積は畑が2ヘクタールで、約50品目の野菜を有機で育てている。さらに田んぼも0.3ヘクタールあり、家族で食べるためのコメを育てているほか、農作業の体験イベントも開いている。
前回2人に取材したのは、新型コロナの感染が拡大し始めた2020年3月のことだ。4年が過ぎたいま、営農はどうなっているのだろうか。その点をまず祥誉さんにたずねると、明るい声で「順調です」と答えた。
主な販路は3つある。最大の柱は個人向けの野菜セットで、6~8種類の旬の野菜を箱に詰めて販売している。さまざまな野菜を育ててセットで売るのは、新規就農の有機農家としては典型的なパターンだ。
残る販路は飲食店と小売店。飲食店には注文に応じて特定の品目を届ける先もあれば、できた野菜をまるごと買ってくれる先もある。小売店に売るのもその時々の野菜。品ぞろえが重要な野菜セットとは異なる。
小売店向けの売り上げが急増
ここ数年の間に何が起きたのかを、業績の面から見てみよう。売り上げは前年を一度も下回ることなく増え続け、2023年は2019年の2倍近くになった。金額は控えるが、新規就農の有機農家としてはかなりの水準だ。
なぜ2人は順調に売り上げを増やすことができたのだろうか。そのわけを探ると、野菜セットで個人顧客とつながっていることの意義と、それ以外の販路も持っていることの大切さがともに浮かび上がる。