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オリーブの剪定方法を農家が解説! 必要な道具や効果的なやり方を伝授

鮫島 理央

ライター:

オリーブの剪定方法を農家が解説! 必要な道具や効果的なやり方を伝授

食用のほか、観賞用としても人気の高いオリーブの木。庭木や鉢植えで育てている人も多いのではないでしょうか。生命力が強く、地植えにするとすくすくと大きく育ってくれるのが特徴的なオリーブですが、樹勢が強すぎて枝葉が茂りすぎてしまうということも。ボサボサになってしまうと病害虫が発生しやすくなり、景観としても良くありません。本記事ではオリーブの木の剪定(せんてい)に必要な道具や時期、具体的な方法など詳しく解説していきます。ぜひ記事を参考にして、樹形の整ったオリーブの木を維持できるようにしましょう。

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オリーブの剪定

オリーブの木の剪定が必要な理由は、主に以下の五つです。

樹形を整えるため

オリーブの木は生育期に新芽が伸びやすく、形が崩れやすいため、剪定によって樹形を整えなくてはなりません。伸びすぎた枝をバランスを見ながら剪定することで、理想的な形を維持しましょう。

病害虫を予防するため

枝葉が密集して風通しが悪くなると、病気や害虫の発生につながります。剪定によって風通しを良くし、病害虫の予防をしましょう。

生育不良をリセットするため

枝先が枯れたり葉色が悪くなったりする生育不良をリセットするためにも、剪定が必要です。ダメな部分を取り除くことで、他の枝葉に悪い影響を与える可能性を下げ、新しい枝の成長を促すことができます。

成長を抑えるため

樹高が高くなりすぎるのを防ぐためにも、剪定が役立ちます。特に、大きくしたくない場合には、幹の先端を剪定することで成長を抑えることができます。

根とのバランスを整えるため

鉢植えのオリーブの木の場合、植え替え時に根を切ることがありますが、その際には枝も剪定してバランスを整える必要があります。根が少なくなると全体にストレスがかかり、枯れやすくなるため、根と枝葉のバランスを整えることが重要です。

オリーブの剪定時期

オリーブの剪定を成功させるには、時期と方法を正しく理解することが重要です。
2月~3月に強剪定を実施します。この時には木の骨格を形成するために大胆な剪定を行います。
3月~4月には間引き剪定を行い、木の成長や見た目に影響を与える不要な枝を取り除きます。
さらに、5月~10月には切り戻し剪定を実施し、伸びすぎた枝を整えて形を美しく保ちます。花や実がついている枝は切らないようにすることがポイントになります。

剪定の時期を誤ると木が枯れてしまう可能性があるため、剪定時期には注意が必要です。

オリーブの剪定に必要なもの

実際にオリーブの木を剪定する時、必須の道具は次の通りです。

・剪定バサミ(小さな枝に使用)
・軍手
・癒合剤(切り口の消毒と治癒の促進のために使用)

また、必要があれば下記の道具も購入すると後々便利です。

・刈り込みバサミ(高い位置の枝や固い枝に使用)
・剪定のこぎり(太い枝や主幹を切り落とす際に使用)
・脚立(高い位置の剪定に使用)

オリーブの剪定のコツ

オリーブの剪定をする際、気をつけたい点やコツをまとめました。
それぞれ詳しく解説していきます。

理想の形を決める

オリーブには、上に伸びる直立型の品種と、横に広がる開帳型の品種の二つがあります。
そのため、栽培するオリーブがどちらの特性を持った品種なのか、事前に把握しておき、特性にあった樹形を作っていきましょう。
直立型では縦長の形にしていき、開帳型では木の幹から四方に枝が伸びるような樹形にしていきましょう。

枝を切る際は、芽の上5mmで切る

枝の先を剪定で落とす時は、残したい芽の上5mmほどの位置で切り落としましょう。
残した芽から新しい枝が伸びてくるので傷つけないように、切る位置には注意してください。

切り口は癒合剤で保護する

剪定後、切り口を放置せずに癒合剤を塗布することが大切です。癒合剤は樹木の傷口を保護し、傷口の治りも早めてくれる、キズぐすりのようなものです。
癒合剤を塗布せずに放置すると病気や木が枯れる原因になることもあります。癒合剤を塗ると、切り口にカルスと呼ばれる保護組織を形成し、ダメージを軽減してくれます。
塗る際には切り口にたっぷりと塗り、しっかりとふたをするようにします。さまざまな癒合剤がありますが、トップジンMが入手しやすく、使いやすさも簡単でオススメです。

幼木の剪定は避ける

成長が本格化する前の幼木は、なるべく剪定しないようにしたほうが良いでしょう。
幼木のうちに剪定する際は、軽く樹形を整える程度のイメージで行いましょう。

剪定後に虫が出てきたら殺虫剤で対応

オリーブには、オリーブアナアキゾウムシ、ハマキムシ、スズメガがよく発生します。
オリーブアナアキゾウムシは、木の根元や下部に小さな穴をあけて木を食害します。
ハマキムシとスズメガは、柔らかい新葉を好んで食べてしまいます。

剪定後、枝葉がスッキリして木の状態がよく見えるようになると、害虫も発見しやすくなるので、防除も一緒に行いましょう。

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切るべき不要枝

オリーブを剪定する際、積極的に切りたい不要枝は以下の通りです。

・枯れ枝
・ふところ枝
・徒長枝
・かんぬき枝
・絡み枝
・下り枝
・胴ふき枝
・ひこばえ
・逆さ枝
・車枝
・並行枝

それぞれ、詳しく説明していきます。

枯れ枝

枯れ枝は文字通り、枯れてしまった枝です。
手で触れると、簡単にポキっと折れてしまいますし、見た目も乾燥していて枯れているのがひと目でわかるため、判別しやすい不要枝です。
木に残しておいても良いことはないので、取ってしまいましょう。

ふところ枝

主枝や幹に密着して成長する枝で、内側に向かって生えています。光が当たりにくく、風通しも悪いため、病害虫の発生源になりやすく、また、実の品質を下げる原因にもなります。

徒長枝

特に栄養状態が良いときに、他の枝よりも急速に成長する長い枝です。光を求めて不自然に伸び、樹形を乱し、他の枝への栄養分配を妨げるため、剪定で取り除きましょう。

かんぬき枝

幹や主枝の間に横に伸びる枝で、幹と幹、または枝と枝を「かんぬき」のようにつなぐ形をしています。これらは樹内の風通しを悪くし、病害虫の発生や成長の妨げになってしまいます。

絡み枝

他の枝に絡みつくように成長する枝で、密集している場合は風通しが悪くなり、光合成の効率を下げます。また、他の枝の成長を妨げることもあります。

下り枝

下向きに成長する枝です。地面に近いため、害虫や病気に感染しやすく、また、収穫作業を妨げることもあります。

胴ふき枝

幹から直接生えてくる枝のことで、栄養を大量に消費し、樹の成長バランスを悪化させます。特に幹の下部から生える胴吹き枝は、樹形を整えるためにも取り除きましょう。

ひこばえ

根元近くから出る新芽や若い枝のことで、栄養分を大量に消費し、本来の枝や幹の成長を妨げるため、剪定で除去しましょう。

逆さ枝

外向きではなく、幹向きに成長する枝のことで、下がり枝と同様に風通しや収穫作業に影響を与えるため、取り除きましょう。

車枝

枝の先端から歯車状に細かい枝が出ている枝で、放っておくと細かい枝葉が伸び、過密状態になってしまいます。

並行枝

他の枝と平行に伸びる枝で、光が均等に行き渡らず、樹内の風通しも悪くなるため、剪定の対象となります。

具体的な剪定の方法

実際にオリーブを剪定する際、どのようなやり方で剪定をすると良いのか、次のポイントにまとめました。
それぞれ詳しく解説していきます。

強剪定

強剪定は、オリーブの木の樹形を大きく変更するために行われます。この剪定方法は、主に冬の終わりから春の始めにかけて、オリーブの木が休眠期にある時に行います。強剪定では、木の全体的なサイズを小さくするために、大きな枝を大胆に切り取ります。こうすることで、理想的な木の骨格を形成し、新しい成長を促進することができます。しかし、強剪定は木に大きなストレスを与えるため、頻繁に行うのではなく、必要な時にのみ行うべきです。

間引き剪定

間引き剪定は、木の内部の光と空気の流れを改善することを目的としています。この方法では、枝を完全に取り除く代わりに、選択的に枝を間引きます。特に、交差している枝や病気の枝、成長が過密になっている部分を取り除きます。
間引き剪定により、木の内部がすっきりとし、病害虫のリスクが減少します。間引き剪定は、春から初夏にかけて行うのが一般的です。

切り戻し剪定

切り戻し剪定は、オリーブの木の外観を整え、望ましい形を維持するために行われます。伸びすぎた枝を切り戻すことで、木の形を整え、バランスを取ります。切り戻し剪定は、生育期間中に何度か行っても良いですが、木の状態を見ながら行いましょう。この剪定方法により、木の密度を適切に保ちながら、健康的な新しい枝の成長を促進することができます。

幹を太くするには

オリーブの木の幹を太くするためには、木の枝を適切な場所でカットして、新しい枝がたくさん生えてくるように促します。新しい枝が増えることで、木の根も幹も太くなっていきます。

具体的には、葉が生えている部分の枝を短く切ります。そうすると、その切った場所から新しい枝が生えてきます。この「切っては生やす」を繰り返すことで、オリーブの木の幹が徐々に太くなっていきます。

この方法は、特にオリーブの木が若い時に効果的です。若い木は成長が早いので、剪定によって幹を太くしやすいのです。ただし、幹がしっかりと太くなるまでには、2~3年ほど時間がかかります。

剪定は木にとって大切な手入れの一つですが、急にたくさんの枝を切りすぎないように注意が必要です。枝を切ることで新しい枝が生えやすくなり、結果的に木全体が健康に成長するようになります。

二股になってしまったら

幹から伸びている主枝が二股になってしまったオリーブは、どちらか細い方の枝を切り落として、一本に仕立てます。
残した方の枝は、支柱を立てて誘引し、時間をかけて真っ直ぐ上に伸びるようにしていきましょう。

二股のまま育てることもできますが、路地植えなどで大きく育てる場合、成長後の剪定が少し手間になってしまいます。なるべく一本に絞ったほうが良いでしょう。

切った枝を使って挿し木に挑戦

オリーブは挿し木で増やすこともできます。オリーブは発根しづらい特性があるため、難易度は高めですが、剪定で切り取った枝を使うことができるので、興味がある人は挑戦してみても良いでしょう。

オリーブは発根するまで4~8週間かかり、この期間、少しの環境変化にも敏感に反応し、条件が悪いと枯死してしまうことがあります。

一般的に、オリーブの挿し木は2月~3月と、6月~7月の2シーズン中に行われていますが、9月に行うのが良いとする研究結果も出ています。まとめると、発根率でいうと6月以降、管理のしやすさでいうと2月~3月に行うのが良いでしょう。

6月~7月、または9月(緑枝挿し)

成長中のオリーブの木から新芽が出ている枝先を使用します。この時期は気温が高いため、水切れに注意が必要ですが、1~2カ月程度で発根する特徴があります。

2月~3月(休眠枝挿し)

オリーブの木を強剪定した際に得られる、直径5㎝以上の太い枝を使用します。この時期は気温が低く、土が乾きにくいため、管理が比較的簡単ですが、発根には時間がかかります。

挿し木の方法

挿し木には以下の道具が必要です。

・オリーブの木から切り取った枝
・剪定ハサミ
・挿し木を挿す鉢
・挿し木用の土
・鉢底ネットと鉢底石
・水をためる容器
・細い棒(土に穴をあける用)
・スコップ

これらを用意した上で、次のように挿し木を行っていきます。

挿し穂を作る

枝先から10~15㎝の長さで切り取ります。若い枝ほど発根しやすいので、選択に注意しましょう。

挿し穂の葉を調整する

枝についている葉を2~3枚に減らし、葉からの水分蒸発を抑えます。

切り口を水につける

切り取った挿し穂の切り口を1時間ほど水につけて、水分を吸収させます。

挿し木用の土に植える

挿し木用の土を鉢に入れ、挿し穂を植えます。この時、土が乾燥しないように注意しましょう。

明るい日陰で管理する

挿し木した鉢を明るい日陰で管理し、土の乾燥を防ぎながら発根を待ちます。
水やりは、鉢の底面から行います。水を放置していると根腐れや雑菌の温床になってしまうので注意しましょう。

まとめ

オリーブは地植えで育てると、どんどん大きくなっていきます。寿命も長く、数十年から数百年は元気に育つといわれています。
世界を見渡すと、樹齢1000年や2000年を超えると推定される巨大なオリーブの木もあるのです。

もしかすると、木を植え付けた本人よりも長生きするかもしれないオリーブの木。しっかり手入れや剪定を行って、木本来の生命力や力強さを引き出してあげましょう。
本記事を参考にして、素敵なオリーブの木を育ててください。

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