灰色かび病の症状や原因とは?
灰色かび病は、植物の花弁やつぼみなどにシミが現れ、黒く変色し枯れるように見える病気です。この病気は糸状菌というカビの一種が原因で、特に温度が20℃前後で湿度が高く、日照が少ないときに発生しやすくなります。
過湿状態が続くと発生しやすく、雨水や水やりの際、水がはねて他の株に付着することで病気が広がります。まん延するのが早く、梅雨時など圃場の状態を確認しづらい時期は特に注意が必要です。
また灰色かび病は一度発生すると治療することができず、被害を受けた箇所を切り取って処分しなくてはならないのも特徴。病気が広がってしまう前に、しっかりとした予防をすることが必要になります。
灰色かび病の発生時期は春から秋
灰色かび病は春から秋にかけて、特に梅雨時に発生しやすいカビ由来の病気で、雨や曇りが続くとまん延しやすくなります。20℃前後の温度で湿度が高く日照が少ない条件下で特に発生しやすく、窒素肥料を過剰に使用することでも発病しやすくなります。
予防策としては、植物の間隔を広げて良好な通風を確保し、土壌の湿度管理に注意しましょう。また、窒素肥料の使用は植物の成長に合わせて適量に抑えることが重要です。雨の後や湿度が高い時期には特に、これらの対策を徹底することが灰色かび病の発生と拡散を防ぐ鍵になります。このほかの予防方法については後ほど詳しく解説していきます。
灰色かび病はどのような植物がかかる?
灰色かび病は幅広い植物に感染する病気です。
野菜ではトマト、ナス、キュウリ、レタス、タマネギなどに多く見られ、発生しやすい果物としてはイチゴ、ブドウ、ミカンなどが挙げられます。
花や木ではバラ、パンジー、ビオラ、ツツジなどに多く発生します。
野菜について
トマト
発生時期:4月~6月
トマトのヘタに水やゴミがたまると発病しやすいので注意しましょう。
発病すると果実のヘタあたりから灰色のかびが生え、腐敗します。
◯ナス
発生時期:11月~5月(ハウス)、6月~7月(露地)
ナスの花弁から感染し、果実のヘタあたりから灰色のかびが生え、茶褐色に変色したり腐敗したりします。
◯キュウリ
発生時期:11月~5月(ハウス)
花や果実、葉に発生します。病気になると花弁からかびが生え、果実が腐敗していきます。
◯レタス
発生時期:11月~4月
外側の葉が地面に触れる部分、葉の柄や葉そのものに水浸状の斑点が現れます。次第に全体にかびが広がって腐敗します。
◯タマネギ
発生時期:6月~7月
葉に白褐色の病斑が現れ、病気が進むと枯れてしまいます。
果物について
◯イチゴ
発生時期:12月~4月
感染すると、枯死した花弁や雌しべから果肉に広がり、粉をかぶったように白くなります。対策として、良好な換気と湿度管理が重要です。マルチングで土壌からの伝染を防ぎ、必要に応じて農薬を使いましょう。
◯ブドウ
発生時期:5月~7月
感染すると、花穂や葉、果実にも灰色のかびが生じたり、茶褐色に変色したりしてしまいます。花がつかなくなったり、果実が腐敗したりするなどの被害が出るので対策は早めに行いましょう。
◯ミカン
発生時期:5月~6月
花弁から感染するため、花弁が落ちにくい温州(うんしゅう)ミカンなどの品種で発生しやすいといわれています。花弁がかびたり、果実の皮にウロコ状の傷やコルク状の傷がつき、価値が下がってしまいます。
花や木について
バラ、パンジー、ビオラ、ツツジなどに発生する灰色かび病は、花弁に特徴的な水滴のような跡や色に応じて異なる斑点を生じさせ、やがて褐色に変色して腐敗を引き起こします。白い花には赤い斑点が、色付きの花には白い斑点が現れます。
枯れた葉、枝、花は病気の拡散源となるため、こまめに取り除くことが必要です。また、水やりの際は、水が直接花や葉にかからないように根元にゆっくりと水を与えましょう。泥水が花に跳ね上がると灰色かび病に罹患するリスクが高まるため、注意しましょう。
灰色かび病とうどんこ病の違いとは?
病気の症状が似ているものとして、うどんこ病が挙げられます。
うどんこ病とは、葉や茎にうどん粉をまぶしたような白い模様が出る病気で、春から秋にかけてよく見られます。特に晴れた日と雨の日が交互に続く秋ごろは、うどんこ病の原因菌が繁殖しやすくなり、土壌中の窒素分が多かったり、植物を密に植えて風通しが悪かったりする状況でも、病気となるリスクが高くなります。
このうどんこ病と灰色かび病とでは、感染源となる原因菌が異なります。
灰色かび病は「Botrytis cinerea(ボトリティス・シネレア)」という菌によって引き起こされます。この菌は多湿な環境を好み、植物の弱っている部分や傷ついた部分から侵入することが多いです。
一方のうどんこ病は、真菌の一種であるウドンコカビ目(Erysiphales)()の菌によって引き起こされ、植物の葉、茎、時には花にも白い粉末状の斑点を形成します。
感染した部分には白または灰色の粉末状のカビが生じ、葉が変色したり枯れたりすることがあります。光合成の効率が低下し、植物の成長が抑制されることもあります。
とはいえ、目視で確認できる症状は似ているため、判別がつかない場合は園芸店や農協の農業指導員に尋ねると良いでしょう。
灰色かび病の予防法
灰色かび病を予防するためには、次の四つのポイントを押さえることが大切です。
- 植え方や環境に注意する
- 湿度に注意する
- 自然農薬を利用する
- 化学農薬(ベニカなど)を利用する
それぞれ詳しく解説していきます。
植え方や環境に注意する
灰色かび病の予防には、まず植物を植える際に間隔を適切に空け、排水性の良い土を使うことが基本です。この病気は湿度が高い環境で繁殖しやすいため、植物の間に空気が流れるようにし、水はけを良くすることが重要です。植物が成長し、葉や茎が密集してきたら、重なり合う部分を剪定(せんてい)して通風を促し、湿度を下げましょう。
植物の表面に傷があると、灰色かび病の菌が侵入しやすくなるため、日々の観察が欠かせません。枯れた葉や枝、咲き終わった花は早めに取り除き、清潔な環境を保ちます。水やりは植物の根元に集中させ、葉や花へ水がかからないように気をつけることが大切です。
湿度に注意する
灰色かび病は、湿度が高い環境(80~90%)で活発になる胞子によって引き起こされます。特にビニールハウスや温室では、高い湿度と一定の温度が胞子形成を促し、病気の発生リスクを高めます。このため、空気の入れ替えや換気を行い、湿度をコントロールすることが非常に重要です。
また、室内での鉢植え育成では、除湿機やエアコンを活用し、湿度を下げると良いでしょう。さらに、植物を日当たりの良い場所に置くことで、自然の条件下での健康的な成長を促進し、灰色かび病の予防に役立ちます。
自然農薬を利用する
灰色かび病の予防には、自然由来の農薬を使う方法も効果的です。
それぞれ簡単にどのようなものか説明しますので、参考にしてください。
重曹水(500倍希釈)をスプレーすると胞子の形成を抑えることができます。
石灰は殺菌作用と植物の細胞壁を強化する効果があり、病原菌の侵入を防いでくれます。使いすぎると土壌が荒れてしまうので、使用量には注意しましょう。
竹酢液や木酢液には殺菌効果があり、200~300倍に薄めて使用すると、病気予防に役立ちます。ストチュウは酢と糖、焼酎を混ぜたもので、殺菌効果があるといわれています。使う時は水で500倍に薄めてスプレーで吹きかけます。
納豆菌は灰色かび病を抑制する力があり、納豆菌類を使ったオーガニック農薬のバチスター水和剤という薬剤が売られています。
化学農薬(ベニカなど)を利用する
簡単かつ長期間にわたって灰色かび病を予防したい時は、化学農薬を使ってもよいでしょう。灰色かび病予防にはさまざまな薬剤が販売されていますが、家庭菜園でも使いやすいものというと、ベニカXガード粒剤がオススメです。
植え付け時や植え付け後に、株元に粒剤を置くだけで散布ができるので、面倒な調合や準備、後片付けがいりません。
灰色かび病だけでなく、うどんこ病の予防や、アブラムシ・コナジラミ・アオムシなど家庭菜園でもよく見る害虫に対しても効果があるので、農薬の使い分けが難しいと感じる方にもオススメです。
灰色かび病は何よりも予防が大切
灰色かび病は、一度発生してしまうと被害を受けた箇所を治療することはできません。そのため、灰色かび病を起こさない、周りに移さないことがとても大切です。
予防するためには、風通しの良い環境を作ること、マルチングなどで水はねを防ぐこと、自然農薬や化学農薬を使うことが重要です。
春先になると、灰色かび病だけでなくうどんこ病や、さまざまな害虫などが活発に動き始めます。病害虫の防除には、早め早めの対処が何よりも必要です。本記事を参考にして、ぜひ楽しいガーデンライフを送ってくださいね。