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いまさら聞けない、軟腐病の症状や原因とは? 効果的な予防方法や対処法を農家が解説

鮫島 理央

ライター:

いまさら聞けない、軟腐病の症状や原因とは? 効果的な予防方法や対処法を農家が解説

春先から夏ごろにかけて罹患(りかん)することが多い軟腐病(なんぷびょう)。株の地際から葉や茎が腐敗して枯れてしまう病気のことで、一度発病すると進行が早く、周りの株にも伝染してしまいます。読者の中にも「育てていた作物が軟腐病によって全滅してしまった」、「大きな被害を受けた」という方は少なくないでしょう。そこで本記事では、軟腐病の原因や発生しやすい環境、主な症状や対処法について解説していきます。軟腐病はしっかり予防を行えば、発生率を下げることのできる病気です。ぜひ本記事を参考にして、軟腐病の発生しにくい環境づくりに生かしてください。

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軟腐病とは? 主な症状や発生原因

軟腐病とは読んで字のごとく、茎や葉が軟化し、腐ってしまう病気のこと。軟腐病は細菌性の病気であり、発生する環境が整うと、さまざまな作物に発生してしまいます。

主な症状や発生原因、どのような作物に発生するのか、それぞれ詳しく解説していきます。

軟腐病の主な症状

軟腐病になると、植物の葉や茎の下の部分に、水にぬれたようなシミができる症状が見られます。特に地際部に多く発生します。このシミはだんだん茶色っぽく変わり、しだいに柔らかくなって腐っていきます。そこでの腐敗臭もやっかいです。

原因菌に感染すると、植物の水分や養分の通り道をふさいでしまいます。すると、植物の上の部分は水分や養分が抜けてしおれ、根元の周りは腐ってしまうというわけです。

原因や発生しやすい条件

軟腐病の主な原因は土壌中の病原菌。害虫による食害や管理作業で生じた傷口から感染します。また、葉についた傷や誘引ひもによる傷が感染経路となることも多いです。軟腐病は気温22~33℃の暖かい時期や、土壌の水分が多く、空気中の湿度が高い条件下で発生しやすくなります。また雨が続いた後、台風の後に病気が急に広がることがあります。

発生しやすい作物の例

軟腐病は、特に柔らかい野菜によく発生する病気で、タマネギやネギ、大根やニンジン、ブロッコリーなどの野菜で多く見られます。特に、キャベツやハクサイ、レタスのような結球する野菜が罹患しやすいとされています。

軟腐病の治療法は?

軟腐病は一度罹患すると、基本的には治すことができない病気です。
発病して対処せずに放置していると、病状は急速に悪くなるほか、他の株にも広がってしまいます。そのため、発生段階での素早い対処がまん延を食い止めるカギとなります。ここでは、軟腐病が発生したときに取るべき対処法をいくつか解説していきます。

発生初期は農薬散布が有効

軟腐病を治療できる農薬はありません。ですが、軟腐病が発生した際は周辺の株の発病予防のために、農薬散布を行ったほうが良いでしょう。
一つの株が発病したということは、原因菌が土壌中や周辺の株にも付着しているということです。そのため、予防薬を散布し、病気が広がらないようにしてください。
軟腐病の防除に使うことができる農薬には、Zボルドー水和剤やバリダシン液剤5、バイオキーパー水和剤などがあります。

発生した株を除去する

軟腐病の原因菌は、もともと土壌に潜む細菌です。発病した株を放置していると、周囲の株に伝染するのはもちろん、増えた細菌が土壌に戻って汚染されてしまいます。

細菌がまん延してしまった土壌では、軟腐病が発生しやすくなってしまいます。
予防のためにも、発病した株は圃場外に持ち出して、焼却処分しましょう。家庭菜園などで燃やすことができない場合は、ビニール袋に入れて持ち帰り生ゴミや燃えるゴミとして処分しましょう。この際、誤って生ゴミ堆肥(たいひ)などと混ぜてしまわないよう注意が必要です。

土壌消毒する

軟腐病の原因菌は土壌中の生存力が高く、放置すると病気が再発しやすくなってしまいます。
そのため、土壌消毒を行って土壌中の細菌を殺菌してしまいましょう。
土壌消毒には、夏の暑い時期に行うものと、冬の寒さを利用するものがあります。

夏の時期に行う場合は、ビニールマルチを使って太陽光と気温を利用し、熱消毒を行う方法が一般的です。
冬の時期に行う場合は、土の天地を掘り返して、冷たく乾燥した空気に1カ月ほど当てて消毒します。

ちなみに、大規模農園では薬剤を使った土壌消毒を行うことがありますが、家庭菜園には不向きです。

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軟腐病の予防と対策

軟腐病の予防と対策には、先ほど説明した農薬散布や発生した株の除去、土壌消毒のほか、発生しづらい環境を整えること、使用した道具を都度消毒することが必要になります。それぞれ詳しく説明していきます。

水はけと風通しをよくする

軟腐病は、土壌中の水分量が多く、空気中の気温と湿度が高いと発生しやすくなります。そのため、排水性の良い土壌を作り、株間をしっかり確保して高温多湿を防がなくてはなりません。

土壌の排水性を高めるためには、堆肥を使ったり、高畝にしたりすると良いでしょう。
水やりの際も、株元に優しく水をかけてあげましょう。スプリンクラーや株の頭上から水やりをすると、水はねや泥はねで軟腐病の原因菌が広がってしまう恐れがあるので注意しましょう。

使用する道具を消毒する

管理作業のときに使う道具の取り扱いについても注意してください。
病気が出ている株を除いたときや、葉や茎を切り落としたハサミを、そのまま他の株や作物の管理作業に使いまわすと、病気が広がってしまうことがあります。

ハサミに限らず、使った道具は必ず消毒しましょう。手指やグローブなどもしっかり洗って病原菌を落とすことを心がけてください。

軟腐病の防除に効果的な農薬3選

軟腐病の防除に有効な農薬はいくつかありますが、ここでは筆者が特におすすめしたい三つの農薬について紹介します。

それぞれどのような農薬なのか、見ていきましょう。

Zボルドー水和剤

Zボルドー水和剤は、銅殺菌剤の一種です。殺菌力が高く、カビ類や細菌類の防除に使えます。使用可能な作物も幅広く、耐性菌が発生しづらいという特徴もあり、有機栽培でも使うことができる薬剤です。

バイオキーパー水和剤

バイオキーパー水和剤は微生物農薬の一種です。非病原性の軟腐病原因菌を有効成分としています。非病原性原因菌が繁殖することで、病原性原因菌の繁殖を許さず、結果として病気を予防できるという薬剤です。化学成分を使っていないので、有機栽培でも使うことができます。

バリダシン液剤5

バリダシン液剤5は、バリダマイシンという放線菌由来の抗生物質を有効成分とした薬剤です。菌類の酵素活性を阻害することで殺菌するという仕組みです。自然由来成分を使用した薬剤ではありますが、有機JAS栽培で使うことはできないので注意しましょう。

気温と湿度が高くなるこれからの季節は要注意

軟腐病は気温と湿度が高まる春先から夏にかけて発生しやすくなる病気です。
強風や台風などによって植物が傷つき、水や泥がはねて感染するため、この時期は特に気を使わなくてはいけません。

一度病気になってしまうと治癒は難しく、株ごと処分するしかありません。気づいたときにはもう手遅れ、周りの株にもうつってしまっている、ということも珍しくないので、油断は大敵です。

水はけの良い土作り、風通しの良い畝作り、予防薬剤の散布、発生後の対応の早さなど、予防するためには日ごろの努力が必要になります。

本記事を参考にして、軟腐病の発生しない圃場づくりに挑戦してみましょう。

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