ツルムラサキの育て方
ツルムラサキは、東南アジア原産の一年生のつる性植物で、葉や茎にツヤがあり、食べると少しぬるっとした感触がします。茎が長く伸び、葉の付け根には紫色の実がつくことから「ツルムラサキ」と呼ばれています。茎は放っておくと3~4メートルにもなることがあります。
ツルムラサキには青い茎の種類と赤い茎の種類がありますが、食用として一般に好まれるのは青い茎の種類です。ツルムラサキは高温を好み、暑さに強い特性を持っています。種が発芽するためには25~30℃の温度が必要で、栽培にも同じく25~30℃が最適。そのため、夏に最もよく育ち、寒い時期には育てるのが難しくなります。
ツルムラサキは日本には江戸時代に伝わり、当初は観賞用として栽培されていました。しかし、現在では夏の暑い時期に栄養豊富な野菜として重宝されるようになっています。
ツルムラサキの栽培暦
種まき | 4月中旬から6月 |
定植 | 5月中旬から6月中旬 |
収穫 | 6月から10月中旬 |
ツルムラサキは東南アジア原産なだけあって温暖な気候でなければ育ちません。
発芽適温25~30℃、栽培適温20~30℃と高めの気温が必要になるので、十分に暖かくなってから栽培を始めましょう。
種まきについて
ツルムラサキは生命力が高く、種からでも栽培しやすい野菜です。
野菜によっては苗まで育てる、もしくは買ってきて植え付けたほうが安定するものもありますが、ツルムラサキについては、じかまきでも育苗ポットで育ててから移植しても構いません。
種まきの時期
種まきの時期は、4月中旬から6月いっぱいまでです。
発芽適温が25~30℃と高めなので、気温が低い場合はトンネルや寒冷紗(かんれいしゃ)などで保温しましょう。
種まきの方法・コツ
◯種まきの手順
1.株間30~40センチを取り、植え穴を作ります。
2.植え穴1か所につき、3~4粒の種を点まきします。
3.発芽後、本葉4~5枚になったら1本に間引きます。
◯種まきのコツ
ツルムラサキの種は皮が硬いので、一晩水につけて柔らかくしてから種まきします。
種まきするときは、親指の第一関節くらいの深さにまくようにしましょう。
間引きについて
本葉4~5枚になったら、1本立ちにしましょう。
植え付けについて
ツルムラサキの苗を植えつける際のやり方や時期について解説します。
プランターの場合と地植えの場合の違いや注意すべき点など、しっかり押さえておきましょう。
植え付け時期
植え付け時期は5月中旬から6月中旬です。
本葉が4~5枚の苗を植え付けましょう。
プランター栽培の場合
◯用意するもの
・苗
・プランター(35Lほど)
・野菜用培養土
・園芸用支柱
・ネット
・鉢底ネット
・鉢底石
・すのこなど、プランターの土台になるもの
◯プランター栽培の手順
1.プランターに、鉢底ネットを敷き、鉢底石を設置します。
2.培養土を8割くらいまで入れます。
3.鉢を揺らして土をならします。
4.植え付け穴を作り、苗を植え付けます。このとき軽く根の先端をほぐすと良いでしょう。
5.水やりをします。必要であれば、農薬も散布しましょう。
6.株が成長してきたら、支柱をたてネットを張り、つるを誘引します。
◯プランター栽培の注意点
プランターを置くときは、すのこやブロックなどの上に置き、通気性を確保しましょう。エアコンの室外機などの近くには置かないようにしてください。
35Lサイズのプランターでは、2株を目安に植え付けましょう。
地植えの場合
◯必要なもの
・苗
・堆肥(たいひ)や腐葉土
・石灰
・緩効性肥料
◯地植えの手順
1.植え付けの2週間前に土作りをします。1平方メートルあたり堆肥2kgと緩効性肥料 60g、石灰100gを入れ、よくすき込みましょう。堆肥や肥料を入れた直後に植え付けをす ると、根がダメになってしまうことがあるため、時間をおきましょう。
2.植え穴を掘って苗を植えつけます。株間は40センチ取りましょう。
3.たっぷり水やりをします。
◯地植えの注意点
株元に敷きわらなどを敷いて、乾燥対策と保温、雨の跳ね返り対策を行うとよいでしょう。
ビニールマルチでも良いですが、高温になりすぎないよう、シルバーや透明のマルチを使いましょう。
水耕栽培の場合
ツルムラサキは水耕栽培で育てることもできます。
水耕栽培用のキットを使うと便利ですが、ペットボトルなどで自作しても良いでしょう。
◯用意するもの
・水耕栽培キット(ペットボトルなど自作のものでも良い)
・水耕栽培の苗や種
・液体肥料
・ロックウールやスポンジなど
まず水耕栽培キットを組み立て、栽培容器に水と栄養液を適切な比率で混ぜます。次に、ツルムラサキの苗を用意するか、種をスポンジなどに植えます。
日差しが足りない場合はライトで光を当ててあげましょう。また水位を定期的にチェックして、必要に応じて水や液体肥料を追加しましょう。
夏の栽培になるので、水温が上がりすぎないように注意してください。
管理について
ツルムラサキは草勢があることもあり、栽培管理はそれほど難しくありません。
基本的には、次の四つのポイントに注意して栽培しましょう。
1.水やりの頻度に注意 2.摘芯のやり方について 3.支柱・誘引について 4.施肥のやり方 |
それぞれわかりやすく解説します。
水やりについて
乾燥には比較的強い作物なので、頻繁に水をやる必要はありません。
地植えの場合、晴れが続き自然降雨がない場合に水やりをしましょう。
プランターの場合、表面の土が乾いたらたっぷり水をやりましょう。
どちらの場合でも、朝夕の涼しい時間帯に水をやるようにしてください。
摘芯について
ツルムラサキの摘芯は、収穫を兼ねて行います。
草丈が30センチ程度になったら、先端から15~20センチほどの長さで摘芯します。
その後は脇芽が伸びてくるようになるので、脇芽を伸ばしながら適宜収穫を行います。
支柱・誘引について
食用のツルムラサキは支柱を立てずとも栽培できるものが多いですが、株を大きく育てたい場合は支柱を立ててネットを張りましょう。
なお観賞用のツルムラサキをグリーンカーテンとして仕立てる場合は、支柱と誘引が必要です。誘引する際は、麻ひもなどの柔らかい素材のひもを使うようにしてください。
肥料について
まず、植え付けの際には、元肥として1平方メートルあたり堆肥を2kg、緩効性肥料を60g、石灰を100g入れます。こうすることで土壌が豊かになり、ツルムラサキの成長が促進されます。
栽培中は、株の様子を見ながら追肥を行うことが大切です。月に1回、1平方メートルあたり緩効性肥料を一握り株元にばらまきます。このとき、中耕(表面の土を軽く掘り起こすこと)と土寄せ(株元に土を寄せること)も同時に行います。これにより、土壌の通気性が改善され、根の発育が促進されます。
収穫について
ツルムラサキの収穫は、タネまき後約30日から可能です。通常、50~70日が収穫の目安ですが、つる先が15~20センチほどに成長したら摘み取ることができます。収穫の際には、下のほうの葉を2~3枚残して、その先を摘み取ります。その後は脇芽を伸ばしていくと、次々と新しい部分を収穫できるようになります。
増やし方について
ツルムラサキを増やす方法には、挿し木と種まきの二つがあります。
まず、挿し木による方法です。ツルムラサキの茎を15センチほどの長さに切り、水揚げを行います。その後、育苗ポットに育苗培養土を入れ、その中に茎を挿します。約10日ほどで根が張り始め、根がしっかりと張ったら適した場所に植え替えます。ただし、ツルムラサキは寒さに弱く、越冬はできないため、寒い季節には注意が必要です。
次に、種まきによる方法です。ツルムラサキの果肉から種を取り出し、洗って乾燥させます。この乾燥させた種を使って種まきを行います。ただし、種取りは手間がかかるため、種から育てる場合は購入した種を使う方が確実です。購入した種を使えば、手間を省きながらも確実に育てることができます。
病害虫について
基本的に病害虫に強いツルムラサキですが、アオムシ、アブラムシ、コナガ、コナジラミ、タバコガ、ハダニ、ヨトウムシなどの害虫が見られます。また、うどんこ病、黒星病、苗立枯病、灰色かび病といった病気も発生しやすいです。
これらの病害虫は、葉が茂りすぎていたり、株間が狭く風通しが悪い環境で特に発生しやすくなります。ツルムラサキを健康に育てるためには、風通しを良くし、土の水はけをしっかりと確保することが重要です。日常的に株の様子を観察し、異変を早めに発見することも大切です。もし病害虫が見つかった場合は、早めに農薬などを使って対処することで、被害を最小限に抑えることができます。
ツルムラサキは夏の家庭菜園にオススメ!
ツルムラサキは生命力が強く、育てやすい野菜です。病害虫にも強いので、家庭菜園初心者という方にもオススメの夏野菜です。
栽培管理もあまり難しくなく、覚えやすい作業が多いので本記事を参考にしてください。夏野菜の中でも粘りがありスタミナがつくツルムラサキ。ぜひ栽培に挑戦して、夏の家庭菜園を楽しんでください。