頻繁に使う刈払い機、マニュアルに沿って点検を行うのが基本
カントリーサイド、つまり田舎の夏は草刈りの日々である。今朝も1時間ほど田んぼに入り、出穂したイネに紛れて育つヒエを抜いてきた。明日も朝から地域の草刈りがある。
草刈りは、毎年4月から9月頃まで続く。その間、田んぼと畑の除草は、ほぼ毎日ちょっとずつやる。雑草が伸びてきてからでは手遅れなのだ。草をなるべく伸ばさないこと、根付かせないことで除草は楽になる。とはいっても、そこそこ広い田畑を管理していれば、完全に草を抑えることはできない。畑の周りや田んぼのあぜは放っておけばすぐに草が伸びてしまう。特に日照時間が長く、気温が高く、雨が多い6月から8月にかけての草の成長はものすごい。この時期は1~2週間に1回のペースで刈払い機による草刈りが必要だ。田んぼのあぜを刈るのに1時間、庭と畑に1時間かかる。
こういう暮らしをしていれば、刈払い機はなくてはならない道具だ。私が愛用しているのはゼノアの「BC2620-EZ」。13年前、今の暮らしを始めたときに入手したオールドモデルだが、これまでノートラブル。今もエンジンはいたって快調である。これはマシン自体のポテンシャルによるところが大きいが、日々の点検と手入れも耐久性に関わってくるのではないかと思う。その方法は何も特別なことではない。マニュアルに書いてある程度の簡単なことである。
ゼノアのエンジン式刈払い機のマニュアルには、「作業前後点検」と「定期点検」の項目が記されており、それを忠実に行うことが基本である。中でも、重要なのが刈刃の状態確認だ。
作業前点検では刈刃周辺を念入りにチェック
作業前点検というのは、大まかにいうと「各部に緩みや破損はないか」を確認する作業である。ただ、マニュアルに書いてあったとしても、おそらく多くの人はたいしてチェックしないと思う。しかし、ほんの1~2分、全体に目を通すだけでも、トラブルを避けられたりするものである。
特に刈刃の状態とそれを留めているボルトの緩みは、ケガにつながる恐れも高いので、必ず確認するべし。刈刃に触れるときは作業用のグローブをするのも忘れずに。
刈刃は、刃先に超硬チップを取り付けたチップソーが主流だが、ひび割れや曲がりがあったり、チップの破損がひどかったりすると、回転が安定せずに危険なので、新しいチップソーに交換する。
作業後は点検に加えて掃除が大事
作業後も作業前と同様の項目の点検を行うが、それに加えて大事なのが掃除だ。
メンテナンスの基本として、使用後はギアケースにからまった草を取り、飛散防止カバーやシャフトにこびりついた汚れをきれいに洗い落としておく。
冷却用空気取り入れ口も要チェック。ゴミがたまっているとエンジンの冷却効率が悪くなり、オーバーヒートを起こしたり、最悪の場合、エンジンが焼き付いてしまったりする恐れがある。すみずみまできれいにすることで、部品の破損やネジの緩み、燃料漏れなどの不具合を発見できることもある。使用後の掃除は道具をきれいにしておきたいというのもあるけれど、不具合がないか確認する意味も大きいのだ。作業前や作業中にトラブルが発生するより、作業後に問題を発見して修理したほうが合理的だ。
摩耗したチップソーは危険! すぐに手入れを
摩耗して刃先が丸くなった刈刃は、切れ味が悪く、草が巻き付きやすく、体やエンジンにかかる負担が大きくなる。燃費も悪くなる。さらにケガにもつながる。切れない刃物ほど危険なものはない。
そういうわけなので、作業前後点検でチップソーの摩耗に気づいたら、交換するか、鋭い状態に直す「目立て」を行ったほうがいい。
高価なチップソーであれば、目立てをして長く使い続けたいが、目立てにはダイヤモンドカッターやディスクグラインダーなどの道具に加えて、それなりの技術も求められる。慣れていない人は1000円前後の安価なチップソーを交換しながら使うほうが手軽だ。ただ、個人的には、使い捨てというのは好きじゃないし、切れ味のいい高価なチップソーを目立てして長く使ったほうが、経済的で作業効率もいいと思う。頻繁に刈払い機を使うならチップソーの目立てはできたほうがよいが、難しければ専門業者に相談してやってもらうこともできる。
定期点検は農機具店に依頼してもOK
日常点検に対して、定期点検というのは、使用時間25時間および、100時間ごとに行うものである(ゼノアのマニュアルによる)。1回の草刈りの作業時間が2時間とすると、12~13回で25時間だ。だいたい1シーズンと考えればいい。25時間ごとの定期点検の項目はエアクリーナーエレメントの清掃やギアケースのグリース注入などだが、自分でできなければシーズン終了後に、農機具店に点検整備を依頼してもいい。費用はかかるが、次のシーズンも気持ちよく使えるし、道具も長持ちする。
保管場所・方法にも気を付けるべし
刈払い機の保管は、雨の当たらないガレージや物置に横にして置くのが基本。床に直接置いてもいいし、専用の棚を作ってもいい。
横置きするスペースがない場合は、エンジンを下にして縦置きする方法もあるが、その場合、倒れないようにひもなどでしっかり固定し、燃料が漏れないようにタンクを空にしておこう。
保管するときは刈刃にカバーをつけたほうがよい。万が一足を引っ掛けてしまったときなどにケガの防止になるし、湿気によるサビも発生しにくくなる。
頻繁に使用するシーズン中は、いちいち燃料を抜く必要はないが、長期間(2カ月以上)使わないときはタンクの中の燃料を抜いたうえで、エンジンをかけてキャブレターの中に残っている燃料も使い切る。燃料を入れたまま長期保管すると燃料が変質して、キャブレター内部が詰まる恐れがあるからだ。
日々のメンテナンスが刈払い機の長持ちのコツ
こうした使用前の点検や使用後のメンテナンスは、やったほうがいいのはわかっていても、面倒に感じてなかなかできないのが実情である。
でも、読者のみなさん、それではいけませんね。安全に効率よく草刈りをするためにも、点検やメンテナンスはきちんとやりましょう!
刈払い機は農業機械の中でも、最もシンプルな道具だ。日々のちょっとしたメンテナンスで長持ちさせられるし、チップソーは目立てや交換をすれば切れ味を取り戻せる。不具合が出やすいエンジンやギアケースも部品さえあれば、修理はそれほど難しくない。修理は農機具店に依頼しても比較的安価に済むことが多いし、多少費用がかかったとしても、使い慣れた愛着のある道具なら長く使い続けたいと思う。だからだろうか、わが家にある道具はおしなべてオールドモデルばかりだ(モノ持ちがいいのだ)。
この刈払い機にもまだまだ働いてもらわなくてはいけない。そのために使い終わったあとの掃除だけはまめにやっておこうと思う。