コメの売価引き上げは「不本意」
横田さんが運営する横田農場は面積が171ヘクタールと、稲作で有数の規模を誇る。もち米を含めて8品種を作ることで作期を分散し、生産効率の向上を追求していることで知られる。
生産するコメの6割は主食用。地元のスーパーや自社のホームページ、ECサイトで販売しているほか、大手の外食チェーンなども販路にしている。残りの4割は味噌や酒、煎餅などの加工用と飼料用だ。
今回の騒動で起きたことの1つがコメの値上がりだ。
横田農場は地元のスーパーで、店頭価格を自ら決めて販売している。棚にコメを並べるのも店員ではなく、横田農場のスタッフだ。
8月半ばに出荷が始まったとき、2023年と同じ価格をつけた。それが隣にあった千葉県産のコメよりずっと安かったため、横田農場のコメが飛ぶように売れた。千葉県産の価格は最近の米価高騰を反映したものだ。
これを受けて、横田農場では値段を若干引き上げることにした。利益を増やしたかったからではない。「こんなに安いのは何か問題があるんじゃないの」という消費者の声を、その場にいた農場のスタッフが聞いたからだ。
生産コストが上がれば値段を見直すが、きちんと利益が出ているなら必要以上に高値を求めないのが横田農場の基本ポリシー。横田さんは値上げについて「不本意だが周りの値段との差が大きすぎたので、価格を見直した」と話す。
その真意については後段で改めて触れたいと思う。
業者の新規注文を断ったわけ
この間に起きたもう1つのトピックが注文の殺到だ。スーパーでコメの品薄が顕著になった8月以降、取引のない米穀店やコメ卸、飲食店から連日のように「コメはありますか」という問い合わせが入るようになった。