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「収穫は最長40日」「田んぼは厳選」 2代目が考える規模拡大の鉄則

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

「収穫は最長40日」「田んぼは厳選」 2代目が考える規模拡大の鉄則

農業は地域密着の仕事なので、地域での人間関係が往々にして経営を左右する。それをうまく生かせば営農にプラスになるが、時代が変われば新たな経営の形が必要になる。前回に続き、稲作を営む沼南ファーム(千葉県柏市)の橋本英介(はしもと・えいすけ)さんの取り組みを紹介したい。

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早場米地帯の利点を生かして販路変更

沼南ファームは橋本さんの父親が1994年に設立した。面積が130ヘクタールの大規模経営で、主な売り先は地元のコメ卸。創業から30年を経て、2024年6月に橋本さんが経営のバトンを受け継いで社長に就いた。

トップ交代を機に、新たに手がけたことは2つある。1つは販路の見直し。それまではコメを精米して工場の社員食堂や病院食向けに販売していたが、収益性が低いので取りやめた。その点については前回触れた。

精米の販売は父親が知人のつてで広げてきた。全体の3分の1を占める販路の柱だったが、配送にかかるコストなどが課題になっていた。それをやめることは、橋本さんがトップになったからこそ可能になった。

沼南ファームの収穫の様子

販路の大幅な見直しは普通ならリスクを伴う。それを決断できたのは、柏市をはじめとして千葉県が早場米地帯だからだ。東北の米所などと比べると収穫がピークを迎えるのが1カ月早く、新米の需要は十分ある。

この販売環境が橋本さんの背中を押した。工場の社員食堂などに売っていたコメを、以前から取引のあるコメ卸にすんなり振り変えることができたのだ。コメ卸の側も、今夏のコメ不足を受けて新米を求めていた。

消費地に近いこともあり、需要は確実にある。この恵まれた環境の下で、生産面も見直すことにした。借りる田んぼの選別だ。

条件の悪い田んぼを返却

橋本さんの父親は現在と違い、農地の貸し借りが当たり前になる前から規模を拡大してきた。借りた田んぼの中には、売り上げ増にはつながるが、収益性を考えると有利とはいえないものも少なからずあった。

パターンは2つある。1つは田植え機やトラクターが沈み込んでしまうほどの湿田。もう1つは、木立の奥にあるような田んぼだ。農道が崩れていることが少なくなく、田んぼまで機械でたどり着くのが難しい。

それでも借りたのは、条件のいい平場の田んぼとセットで貸すことを地主が望んだからだ。それを受け入れなければ、田んぼを増やすのが難しい時代だった。かつてはそうやって大規模化するのが当たり前だった。

橋本さんによると、そんな田んぼが10ヘクタールほどあるという。

機械が沈む湿田。すでに返却した

時代は変わり、高齢農家の引退で田んぼは格段に借りやすくなった。その結果、機械が沈むような田んぼまで借りる必要はなくなった。

そこで着手したのが、条件の悪い田んぼの返却だ。これから借りる際は、そうした田んぼを引き受けないことも決めた。当事者がOKすれば、隣接する異なる地主の田んぼのあぜをなくして1つにすることも考えている。

工場の社員食堂向けの精米販売と同様、借りる田んぼの見直しもトップが変わることで可能になった。言うまでもなく、効率の向上は収益性のアップにつながる。代替わりで、経営が新たな発展段階に入ったのだ。

10年後に200ヘクタール

では橋本さんはどこまで規模を大きくできると見込んでいるのだろう。その点について聞くと、「あと5年で150~160ヘクタールになるのは確実。10年先は200ヘクタールになる可能性がある」という答えが返ってきた。

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