キャベツ王国・嬬恋村で農業デビュー! 現地の生産者に聞く就農のリアル【後編・仕事について】
日本有数のキャベツ産地、群馬県の嬬恋村。前編の嬬恋村の自然環境や農業事情に続いて、就農を検討するなら知っておきたい年間スケジュールや繁忙期、働き方などについて、「つまごい働きやすい環境づくり協議会」のメンバーでもある、かんらんAgriの中澤美穂さんに話をうかがいました。
■中澤美穂さんプロフィール
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嬬恋村にある「かんらんAgri」に所属し、キャベツ栽培に従事している。つまごい働きやすい環境づくり協議会のメンバーとして、就労環境の改善に積極的に取り組む。 |
働くためのキャベツ生産の基礎知識

高原地帯の嬬恋村は夏秋キャベツの一大産地
嬬恋村のキャベツ生産の仕事内容や働き方、繁忙期について、詳しく聞いていきましょう。
新規就農
希望者
中澤さん
まず3月ごろ、嬬恋村から少し離れた比較的暖かい土地にキャベツの種を播いて苗を育てます。かんらんAgriの場合は安中市松井田町に畑を借りて育苗しています。
3月後半から4月にかけて、ある程度の大きさに育った苗を取ります。4月に嬬恋村の寒さが和らいできたらトラクターで圃場を耕して苗を植えます。これを繰り返して6月下旬から第一弾の収穫をします。
6月から8月ごろまでは収穫と同時並行で秋に収穫予定の苗を植えるので忙しくなってきます。
8月後半から9月にかけて収穫の最盛期を迎え、10月中旬まで取り続けます。
そして、11月にキャベツを取り終わった畑を機械で耕して翌シーズンすぐに使える形にして休ませます。畑が雪に覆われる12月から1月は、農機具のメンテナンス、来シーズンの準備や事務仕事をします。

よく耕した黒土の畑に、苗を段階的に植えていく
新規就農
希望者
中澤さん
収穫の最盛期は、午前4時ごろには畑に着いて収穫に入ります。10時半まで収穫し、11時に昼休憩。家に戻ってお昼ごはんを食べたり、お昼寝をします。朝早いので昼休みは長いです。午後は2時に畑に戻って4時まで収穫。一番遅いときは午後5時ごろまでかかることがあります。
新規就農
希望者
中澤さん
キャベツは畑でお店で売られている状態に整え、その場でダンボール箱に詰めてトラクターに積み、集荷場に運んでいます。
新規就農
希望者
中澤さん
包丁でキャベツの球と葉のちょうどいいところを切っていきます。
難しそうですが、コツを掴むのに時間がかかりますか。
新規就農
希望者
中澤さん
難しくはないですが、コツはあります。球の部分の下に葉があるので、その何枚目までを切り落とすという目安があります。1つの箱に8個並べるので、切り口が尖っていると他のキャベツを傷つけてしまうので注意が必要です。収穫する人を切り手と呼んでいますが、普段から包丁を使い慣れている人は飲み込みが早いですね。

コツを掴めばテンポ良くできるキャベツの収穫
キャベツ生産のやりがい・大変なこと
嬬恋村のキャベツ生産現場の雰囲気をさらに知るために、大変なことや楽しいことも聞いてみましょう。
新規就農
希望者
中澤さん
冷涼な気候とはいえ昼間は気温が上がるので大変です。近年は熱中症に注意しながら農作業を行っています。
新規就農
希望者
中澤さん
熱中症にならないように、体調管理に気を付けています。こまめに水分補給をして、あとは睡眠と休憩をしっかり取る。収穫期は朝ごはんの時間や10時のおやつなど、定期的に声がけして休憩を入れています。
新規就農
希望者
中澤さん
農業は体が資本!当社の場合は繁忙期の従業員の負担を少しでも減らすため、朝食と、おやつのお菓子やパンを用意しています。自分で好きなものを持って来て食べる人ももちろんいますが、節約にもなるので喜ばれています。また熱中症予防のためスポーツドリンクも用意しています。
新規就農
希望者
中澤さん
やっぱり良いキャベツができて高く売れたときが嬉しいです!

見事に結球した嬬恋キャベツ。生食・加熱調理どちらもおいしい
キャベツ栽培に向いてるのはどんな人だと思いますか。
新規就農
希望者
中澤さん
私個人の意見ですが、キャベツ栽培に限らず、農業は自然と向き合う仕事だと考えています。天候の影響を受けたりして思い通りに育たないことが常です。そういったことを割り切った上で、キャベツ栽培自体を楽しんで、最善を尽くすチャレンジ精神のある人が向いているのではないかと思います。
つまごい働きやすい環境づくり協議会が発足
頑張れるムードがある嬬恋村のキャベツ。よりやりがいを持って働ける環境づくりの取り組みについて聞いてみました。
新規就農
希望者
中澤さん
繁忙期も休日の設定はもちろんありますが、キャベツの生育が良く、収穫を急ぐ時や、割り当ての出荷数がありますので、休日返上で収穫をすることもあるのが実情です。まずは従業員の方が第一にお休みを取れるように、最終的には、経営者も繁忙期にきちんと休んでリフレッシュできるようにしたいと考えています。
新規就農
希望者
中澤さん
まずは属人的な業務を減らしていくことから考えています。例えば、トラクターを使った運搬業務は、大型特殊免許がある人しかできないので、大型特殊運転免許の取得を推進し、運転できる人を増やすことで業務を分散させることができると考えています。
同じように労務改善の課題を持っていた仲間の農家さんとともに、改善に取り組もうと「つまごい働きやすい環境づくり協議会」を立ち上げました。
新規就農
希望者
中澤さん
就業規則の見直し、情報の共有を頻繁に行っています。
直近では労務コンサルタントを受け、就業規則を見直しました。また、協議会のメンバーと月1回以上の会合を行うことで新たな視点から気づきもありましたので、働き方などを適宜見直していきます。

嬬恋村で農業機械の運転にもチャレンジしたい!
運転免許などの資格取得などは支援してもらえますか。
新規就農
希望者
中澤さん
資格取得に意欲的な従業員の方に声をかけ、支援をしていく予定です。資格取得は冬のオフシーズンが条件にはなります。
新規就農
希望者
中澤さん
何年か一緒に働いてみることが前提ですが、独立を考えているのであれば、畑を買う・借りるときのアドバイス、農作業用の機械の貸し出しなどのサポートは必要だろうと考えています。協議会メンバーなど複数の農家で助け合いながらサポートできれば、より強力に独立就農を支援できるのではないかと思います。

高原キャベツの産地、嬬恋村が呼んでいる
新規就農
希望者
中澤さん
農業のはたらきやすい環境を意識して活動を始めましたが、まだまだ模索中です。自身もまだまだ改善できる課題があることに気づきました。そんな模索中の私たちと一緒に嬬恋村のキャベツ栽培をしてくれる仲間が増えてくれたらうれしいなと思います。
ありがとうございました。最後に就農希望者に向けて一言ください!
新規就農
希望者
中澤さん
嬬恋村のキャベツ栽培に興味がある方の中には、「農業をやってみたい」「農機械が好き」「おいしい野菜をつくりたい」「お金を稼ぎたい」など十人十色の目標があると思います。一緒に働く中でみなさんの目標達成のサポートをしていきたいです。その環境が嬬恋村にはあります。
嬬恋村のキャベツ栽培はスケールの大きさが魅力。かんらんAgriを始めとした「つまごい働きやすい環境づくり協議会」が、収穫・出荷の効率化や独立支援を目指して活動中の嬬恋村で、雇用就農から生産者の仲間入りをすることも検討してみてはいかがでしょう。