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かき菜ってどんな野菜? 旬や栽培方法、おいしく食べるレシピを解説【日本伝統野菜推進協会監修】

sato tomoko

ライター:

連載企画:解説!全国伝統野菜

かき菜ってどんな野菜? 旬や栽培方法、おいしく食べるレシピを解説【日本伝統野菜推進協会監修】

春の野菜として知られる菜の花ですが、その仲間は全国に数多くの種類があります。中でも、北関東の両毛地域で栽培されている伝統野菜が「かき菜」。古くは万葉集にも登場し、厳しい冬の寒さに耐え、甘みを増しながら春を迎えるため、産地では「春を呼ぶ野菜」として親しまれています。近年は栄養価の高さから健康野菜としても注目されるかき菜。一般社団法人日本伝統野菜推進協会の取材協力の下、その特徴や栽培方法、食べ方、レシピを紹介します。

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かき菜とはどんな野菜?

ザルにのったかき菜

かき菜は、アブラナ科アブラナ属の野菜で菜花(なばな)の仲間です。北関東の両毛地域(群馬県館林市や栃木県足利市、佐野市など)で古くから栽培されている伝統野菜です。

「佐野の茎立」として万葉集にも登場し、産地では冬を乗り越えて春を呼ぶ野菜として親しまれています。秋に種をまき、冬から春にかけて伸びてくる芯を手でかいて摘み取ることから「かき菜」と呼ばれるようになりました。

JA佐野では、かき菜を「佐野そだち菜」の名称で商標登録しブランド化を図っています。とちぎ農産物マーケティング協会が、地域の気候や風土の特徴を生かして栽培される農産物を認証する「とちぎ地域ブランド」や、佐野市が認証する「佐野ブランド」のひとつにもなっています。

味の特徴

他のアブラナ科の野菜と比べると苦みが少なく、ほのかな甘みが感じられます。葉茎は柔らかく、クセのない味でどんな料理にも合い、茎はアスパラガスのような風味があり、シャキシャキとした食感がアクセントになります。

旬の時期

かき菜は越冬して春に収穫され、3~4月が旬です。冬から春にかけて霜に当たったかき菜は甘みが強く感じられます。

含まれている主な栄養や効果

かき菜を含む菜花は、ビタミンやミネラルを豊富に含む緑黄色野菜です。特にカルシウムやビタミンCの多さは野菜の中でもトップクラス。栄養素が総合的に働いて体の抵抗力を高める他、鉄分や葉酸が貧血予防に役立つとされています。

ミネラルの一種で、赤血球のヘモグロビンに含まれる鉄は酸素を運搬し、筋肉のミオグロビンに含まれる鉄は血中の酸素を細胞に取り入れる働きがあります。各細胞の鉄は、酸素の活性化に関係し、栄養素の燃焼に役立っています。

カルシウム

ミネラルの一種で、歯や骨の形成に役立つ他、筋肉を収縮作用を促進する働きがあります。血液をアルカリ性にし凝固作用にも関係します。

ビタミンC

水溶性のビタミンで、皮膚や骨を構成するコラーゲンの合成に必要な栄養素です。また、ストレスに対する抵抗力と免疫力を高める働きがあるとされています。

葉酸

水溶性のビタミンで、赤血球の生成を助け、DNAなどの核酸やタンパク質の合成を促す他、各種貧血の改善にも効果が期待されます。熱や水に弱い性質があるため、生食や水を使わない短時間の加熱調理がおすすめです。

かき菜の育て方

かき菜の種

かき菜は、生育旺盛で寒さに強く、家庭菜園で栽培しやすい野菜です。再生力も旺盛で何度も収穫できます。9月から10月の秋まきで2月下旬から4月頃まで収穫可能です。

畑の準備

種まきの2週間前に畑に苦土石灰をまいて耕し、1週間前に元肥をまいて混ぜておきます。プランターの場合は野菜用培養土を使用するのが手軽です。

種まき

条間30cmで深さ5mm程度のまき溝を作り、種をすじまきして軽く覆土し、たっぷり水やりをします。数日で発芽します。

管理・水やり

葉が込み合ってきたら随時間引きをして、最終的に株間10cmにします。水は土の表面が乾いてきたら与えます。

収穫

春先、主枝が伸びてきたら花茎を2葉残して摘み取って1回目の収穫を行い、その後、随時伸びてくる側枝を収穫します。その際、枝を1節ほど残すことで脇芽が育ち、何度も収穫できます。

かき菜を育てる時に注意したい病害虫と対策

他のアブラナ科の作物と同様に多くの害虫から被害を受けやすいため、かき菜の栽培には適切な防除が必要です。特に暖かくなる3月以降は害虫の発生が多くなるので、防虫ネット等での防除を心がけましょう。アブラナ科の連作を避けることもポイントです。

べと病

冷涼で多湿な環境で発生しやすく、葉や根に黄色や褐色の斑点ができる病害です。対策としては、密植を避け、畑の排水性を高めておくことがポイント。大根をはじめアブラナ科作物の連作を避けることも一手です。べと病が発生した株は抜き取って畑の外で処分しましょう。

アブラムシ

窒素成分の過多で発生しやすく、日当たり・風通しの悪い環境で増殖し、葉裏や新芽に寄生して汁を吸って作物を加害します。見つけたら水で洗い流す、粘着テープで取り除くなどして除去しましょう。黄色に集まる性質を利用して、黄色の粘着板を設置する方法もあります。

コナガ

アブラナ科の植物を好んで産卵し、幼虫がその葉や新芽を食害します。真夏を除く春から秋の暖かい時期に発生しやすく、薬剤での防除が難しいので、網目の細かい防虫ネットや寒冷紗を使って成虫の侵入を防ぎましょう。防虫ネットはアブラムシ対策にも有効です。

おいしいかき菜の選び方

買ってきたかき菜

葉はハリがあり、茎の切り口がみずみずしく、中心部まで緑色が濃いものが新鮮です。鮮度保持が難しいので、できるだけすぐに調理しましょう。

かき菜の保存方法

すぐに調理しない場合は、新聞紙か湿らせたキッチンペーパーで軽く包み、冷蔵庫の野菜室に立てて保存します。

かき菜の基本的な食べ方とレシピ5選

調理法は菜の花(菜花)と同じような調理法で食べることができます。生では硬いため、茹でる、蒸す、炒めるなど、火を通して食べます。クセがないのでいろいろな料理の食材に適したかき菜の、和・洋・中のシンプルなレシピを紹介します。

かき菜のごま和え

かき菜のごま和え

かき菜のやさしいほろ苦さとごまの香ばしさが調和。素朴で飽きのこないほっとする味わいです。

材料(2人分)
・かき菜   150g
・すりごま  大さじ1
・しょうゆ  大さじ1
・砂糖    小さじ1
・みりん   小さじ1

作り方
1.かき菜をよく洗い、3~4cmの長さに切り、茎の部分と葉の部分を分けておく
2.鍋に湯を沸かし、先に茎を入れて30秒ほど茹で、次に葉を入れてたらさっと茹でて冷水にとり、水気をしっかり絞る
3.ボウルにすりごま、しょうゆ、砂糖、みりんを入れて混ぜる
4.かき菜を加えて和え、器に盛る

かき菜の天ぷら(2人分)

かき菜の天ぷら

かき菜特有のシャキシャキとした食感とほのかな甘みが、サクサクの衣と好相性。振り塩で甘みが引き立ちます。

材料
・かき菜      100g
・天ぷら粉     50g
・冷水       75ml
・揚げ油      適量
・塩(お好みで)  適量

作り方
1.かき菜は洗って水気をよく切り、食べやすい長さ(5〜6cm程度)に切る
2.ボウルに天ぷら粉を入れ、冷水を加えて軽く混ぜて衣を作る
3.揚げ油を180℃に熱し、かき菜を衣にくぐらせ、油に入れて揚げる
4.30秒〜1分ほどで衣がカリッとしてきたら、油を切って取り出す
5.器に盛り、好みで塩を振る

オイスターソース炒め

オイスターソース炒め

かき菜のほのかな甘みとオイスターソースの濃厚な旨みがマッチ。かき菜の食感も心地良く、ニンニクの香りが食欲をそそります。

材料(2人分)
・かき菜      150g
・ニンニク     1片(みじん切り)
・ごま油      大さじ1
・オイスターソース 大さじ1
・しょうゆ     小さじ1
・酒        大さじ1
・砂糖       小さじ1/2

作り方
1.かき菜は洗って水気を切り、食べやすい長さ(5cm程度)に切り、茎の部分と葉の部分を分けておく。ニンニクはみじん切りにする。
2.フライパンにごま油を熱し、ニンニクを弱火で炒める
3.香りが立ったら、かき菜の茎の部分を先に入れて中火で30秒ほど炒める。その後、葉の部分を加えて更に炒める
4.オイスターソース、しょうゆ、酒、砂糖を加えて全体に絡めて強火でサッと炒め、調味料が馴染んだら火を止める

中華スープ

中華風スープ

かき菜のシャキシャキと卵のふんわり感を味わうスープ。とろみをつけて満足感のある一品に。

材料(2人分)
・かき菜         100g
・卵           1個
・シイタケ        2枚(薄切り)
・水           400ml
・鶏がらスープの素    小さじ2
・しょうゆ        小さじ1
・塩こしょう       少々
・米粉(片栗粉でもよい) 小さじ1 (大さじ1の水で溶く)       
・ごま油         小さじ1
・白ごま(お好みで)   適量

作り方
1.かき菜は洗って食べやすい長さ(4〜5cm)に切る
2.シイタケは薄切りにし、卵は溶いておく
3.鍋に水を入れて中火にかけ、鶏がらスープの素とシイタケを加える
4.沸騰したらかき菜を入れ、1〜2分煮る
5.しょうゆ、塩、こしょうを加えて味を調え、弱火にして水で溶いた米粉を加えてとろみをつけたら、溶き卵を細く流し入れ、ふんわりとしたら火を止める
6.ごま油を回しかけ、お好みで白ごまを振る

かき菜とベーコンのガーリックソテー

かき菜とベーコンのガーリックソテー

かき菜は油との相性も良し。炒め物の洋風アレンジでパスタを和えてもおいしい一品になります。

材料(2人分)
・かき菜        150g
・ベーコン       50g(短冊切り)
・ニンニク       1片(みじん切り)
・オリーブオイル    大さじ1
・白ワイン(または酒) 大さじ1
・塩          少々
・黒こしょう      少々
・粉チーズ(お好みで) 適量

作り方
1.かき菜は洗い、食べやすい長さ(5cm程度)に切り、葉の部分と茎の部分を分けておく
2.ベーコンは短冊切り、.ニンニクはみじん切りにする
3.フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ、弱火で熱し香りが立ったら、ベーコンを加えて中火で炒める
4.かき菜の茎の部分を先に入れて30秒ほど炒めたら、葉の部分を入れ、白ワインを加え、サッと炒める
5.塩・黒こしょうで味を調え、お好みで粉チーズを振る

地域によって呼び方いろいろ北関東の伝統野菜

北関東で広く栽培されているかき菜ですが、地域によって呼び方も異なります。栃木県佐野市では、手でかいて収穫することから「かき菜」。群馬県前橋市では「宮内菜」、この他「茎立菜」などの呼び方もあります。どれもかき菜の仲間ですが、それぞれ品種が異なるものを指すことがあります。アブラナ科の作物は交雑しやすいため、生産者や産地では採種まで行い地域の伝統野菜を守っています。各地域のかき菜を食べ比べてみるのも面白いかもしれません。

かき菜の束

古くから貴重な栄養源とされてきた「かき菜」を、自分で育てて調理して食べるのも良い経験になります。冬の寒さに耐えて春にぐんぐん育つ「かき菜」は、栽培しやすく何度も収穫できることが魅力。この機会に採種にもチャレンジしてみてはいかがでしょう。

取材協力:日本伝統野菜推進協会

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