壬生菜(みぶな)とはどんな野菜?
壬生菜(みぶな)は、アブラナ科アブラナ属の一年草で、水菜(みずな)の一変種です。江戸時代に京都の壬生地区(京都市中京区)で、葉にギザギザの切れ込みのない菜が発見され、盛んに栽培されたことから、やがて壬生菜と呼ばれるようになりました。
水菜に似ていますが、葉は丸みを帯びた細長いへら状で、その見た目から「丸葉水菜」とも呼ばれています。水菜と比べて葉が濃い緑色をしているのも特徴です。水菜・壬生菜ともに京の伝統野菜・京ブランド産品の一つに認証されています。
ほとんどが漬物として利用され、京都では特産品の「千枚漬け」に壬生菜の塩漬けを添える習わしになっています。その他、京都のおばんざい(惣菜)の食材として、煮浸し、煮物、鍋物、雑煮にも使われます。
味の特徴
水菜と同じように茎はシャキシャキとした歯切れの良さがありながら、葉は柔らかいのが特徴です。水菜にはないピリッとした辛みと香りがあり、浅漬けなどに適しています。
旬の時期
関西地方で古くから親しまれてきた冬の野菜で、露地栽培を中心に12月から翌3月が出回り時期。1月に出荷のピークを迎えます。現在はハウス栽培により通年出回っていますが、冬が本来の旬です。
含まれている主な栄養と効果
緑黄色野菜である壬生菜には、ビタミンやミネラルの他、食物繊維が多く含まれています。
βーカロテン
体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜、目の健康に役立つとされています。強い抗酸化作用を持ち、体内の活性酸素を除去する働きが期待されています。βーカロテンは、加熱することで吸収率が高まり、効率的に摂取できます。
ビタミンC
水溶性のビタミンで、皮膚や骨を構成するコラーゲンの合成に必要な栄養素です。また、ストレスに対する抵抗力と免疫力を高める働きがあるとされています。
カリウム
ミネラルの一種で、ナトリウムの排出を助け、細胞の浸透圧を調節する働きがあります。
カルシウム
ミネラルの一種で、骨・歯などの硬組織を作る材料になる他、血液をアルカリ性にする働きがあります。
壬生菜の育て方
壬生菜は、生育旺盛で病気に強く、家庭菜園でも栽培しやすい野菜です。生育には冷涼な気候を好むため、平暖地では涼しくなる9月から11月に種をまき、12月から3月に収穫すると良いでしょう。大株に育てることもできます。
畑の準備
地植えの場合は水はけ・日当たりの良い場所を選び、種をまく2週間前に石灰を施用してよく耕して土を中和させ、1週間前に元肥を施して再度耕し80cm幅の畝を立てます。
プランターの場合は、野菜用培養土を使用するのが手軽です。
種まき
大株にする場合は条間40cm、小株で収穫する場合は条間20cmですじまきして、種が隠れる程度に覆土して、手でしっかりと土を押さえ、たっぷりの水を与えます。
間引き・管理
本葉3~4枚になったら適宜間引きと追肥をして、最終的に大株にする場合は株間40cm、小株の場合は株間20cm程度にします。
収穫
秋まき冬収穫の場合は、種まきから約80日後、大株は草丈30cm以上、小株は20cm~30cmになったら収穫適期。株元を持って根ごと引き抜いて収穫します。
壬生菜を育てる時に注意したい病害虫と対策
アブラナ科の作物は多くの害虫から被害を受けやすいため、壬生菜の栽培には適切な防除が必要です。アブラナ科作物の連作を避け、防虫ネット等での防除を心がけましょう。
コナガ
アブラナ科の植物を好んで産卵し、幼虫がその葉や新芽を食害します。真夏を除く春から秋の暖かい時期に発生しやすく、薬剤での防除が難しいので、網目の細かい防虫ネットや寒冷紗を使って成虫の侵入を防ぎましょう。防虫ネットはアブラムシ対策にも有効です。
ヨトウムシ
夜行性の蛾の幼虫で、夜になると活動を始めて葉を食害します。土中で越冬して春から秋にかけて葉裏に大量に産卵するので、日頃から作物を観察して卵を発見し、孵化する前に取り除きます。防虫ネットをかけて成虫を侵入させないことも有効な対策です。
キスジノミハミムシ
アブラナ科の作物に発生する害虫で、成虫が葉を、幼虫が根を食害します。コガネムシと同じ甲虫類で、成虫は体長2~3㎜の黒色で羽の両脇に黄褐色の帯状の斑紋があります。防虫ネットで侵入を防ぎますが、幼虫は土中で越冬するためアブラナ科作物の連作をしないことも防除の一手です。
おいしい壬生菜の選び方
茎がすっと伸び、葉先までピンとしているものが新鮮です。葉の緑色が鮮やかで、株がしっかりしたものが良品です。葉がやわらかいものを選びましょう。
壬生菜の保存方法
葉に水が付くと痛みやすいので、洗わずに乾いたキッチンペーパーで全体を包み、根元の部分だけ水で湿らせ、買ったときの袋に戻すかビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。できれば根元を下にして立てた状態で保存するとより長く鮮度を保つことができます。
壬生菜の基本的な食べ方とレシピ5選
葉がやわらかいのでサラダなどで生食する他、おひたしや漬物、炒め物、鍋物の具などに利用します。加熱しすぎるとくたくたになるので、シャキシャキとした歯ざわりを生かしたい料理は手早く火を通すことがポイント。ここでは、壬生菜の独特な風味が楽しめるレシピを紹介します。
壬生菜のからし和え

出典:農林水産省うちの郷土料理
ピリッとした壬生菜の辛みが、甘口のからしじょうゆでより深い味わいに。京都では定番のおばんざいです。
材料(2人分)
・壬生菜 1束(200g)
・練りがらし 小さじ1
・みりん 小さじ1
・しょうゆ 小さじ1
作り方
1.水菜は洗って水気を切っておく
2.鍋にたっぷりの湯を沸かし、塩ひとつまみ(分量外)を入れ、壬生菜を根元から入れて1分ほど茹でる
3.壬生菜をザルに上げて流水で冷まし、水気を絞って食べやすい長さに切る
4.ボウルに練りからし、みりん、しょうゆを入れて混ぜ、3を加えて和える
※適量の白ごま(分量外)を加えても良い
壬生菜の浅漬け
壬生菜の鮮度とシャキシャキ感を生かした浅漬けは、短時間で簡単にでき、ご飯のお供やおつまみにもぴったりです。
材料(作りやすい分量)
・壬生菜 1束(200g)
・塩 小さじ1(壬生菜の重量の2%程度)
・刻み昆布 3g
・唐辛子(輪切り)少々
・水 大さじ2
作り方
1.壬生菜は洗って水気を切り、食べやすい長さに切る
2.ビニール袋に壬生菜、塩、昆布、唐辛子、水を入れてよく揉む
3.冷蔵庫に2時間以上置く
4.水分を絞り、器に盛る
壬生菜とお揚げのたいたん
たいたんとは「炊いたもの」という意味で煮びたしのこと。出汁がたっぷり染みた油揚げが、壬生菜の風味と食感を引き立てます。
材料(2人分)
・壬生菜 1/2束(100g)
・油揚げ 1枚
・出汁 1カップ
・しょうゆ 大さじ1
・みりん 大さじ1/2
作り方
1.壬生菜は洗って3cm程度の長さに切り、油揚げは熱湯をかけて油抜きをし、1cm幅の短冊切りにする
2.鍋に出汁、しょうゆ、みりんを入れてひと煮立ちさせ、壬生菜と油揚げを加えて煮る
3.出汁が染みたら火を止める
壬生菜のホットドレッシングサラダ
生でもおいしい壬生菜に熱々のオイルベースのドレッシングをかけて。油でβーカロテンの吸収効率もアップ。
材料(2人分)
・壬生菜 1/2束(100g)
・ベーコン 20g
・ニンニク(薄切り) 1/2かけ
・オリーブ油 大さじ1
・白ワイン 大さじ1
・しょうゆ 大さじ1/2
・レモン汁 小さじ1
作り方
1.壬生菜は洗って食べやすい長さに切り、水気を切って、器に盛る
2.ベーコンは1cm幅に切る
3.フライパンにベーコン、ニンニク、オリーブ油を入れ、中~弱火にかける
4.ベーコンに焼き色がついたら、白ワイン、しょうゆを加え、ひと煮立ちさせたら火を止め、レモン汁を加える
5.熱いうちに1の壬生菜にかける
好みで黒こしょう(粗挽き)を振っても良い
壬生菜と豚肉の鍋仕立て(2人分)
冬が旬の壬生菜の風味が味わえるシンプルな鍋料理。豚バラ肉で壬生菜を巻いて、ぽん酢しょうゆなど好みのタレで食べるのがおすすめ。
材料
・壬生菜 1束(200g)
・豚バラ薄切り肉 200g
・ショウガ 2かけ(20g)
・昆布 5cm
・水 カップ3
・酒 大さじ3
・塩 少々
・ぽん酢しょうゆ(好みで) 適量
※好みで具にキノコや豆腐を加えても良い
作り方
1.鍋に昆布と水を入れ、30分ほど置いておく
2.壬生菜は洗って食べやすい長さに切り、ショウガは薄切りにし、豚肉は食べやすい大きさに切る
3.1の鍋を弱火にかけ、沸騰する直前に昆布を取り出し、ショウガ、酒、塩を加えて煮立たせる
4.鍋に豚肉を入れ、色が変わったら壬生菜を加え、あくを取ながら火を通す
5.好みでポン酢しょうゆにつけて食べる
寒い冬に食卓を彩る、京の伝統野菜
壬生菜は、関西ではよく知られる野菜ですが、関東などの地域では見かけることが少ないかもしれません。水菜の変種として生じた壬生菜は、水菜と同じように栽培して食べることができますが、葉の形が異なり、ピリッとした辛みや独特の香りがあります。この特徴を生かして、作る料理によって水菜と使い分けると良いでしょう。
壬生菜は名前も水菜と似ていますが、これは発祥の地である京都の壬生地区にちなんだもので、現在は京都市内および府内全域で栽培されています。
京都府は明治以前から府内で栽培されている野菜を「京の伝統野菜」に定めて継承に取り組み、その数は絶滅したものも含めて約40品目にのぼります。また、京の伝統野菜を含む31品目が「京のブランド産品」に認定されています。これは、安心・安全と環境に配慮した「京都こだわり生産認証システム」により生産された京都産の農林水産物の中から品質・規格・生産地を厳選して公益社団法人京のふるさと産品協会が認証しています。その両方に認証されている京壬生菜(壬生菜)で、京野菜を深く知り手軽に味わってみてはいかがでしょう。
取材協力:日本伝統野菜推進協会
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