宮城県角田市で始まる農業生活。地域おこし協力隊で自分の夢を叶えよう!
地域おこし協力隊という取り組みをご存じでしょうか。地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域などへ住民票を異動し、各自治体の委嘱を受けて一定期間、農林水産業への従事のほか、地域ブランドの開発・PR、住民支援などの地域協力活動をしながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。この地域おこし協力隊を卒業して、現在は角田市で梨農家として暮らしている吉川一利さん。吉川さんは地域おこし協力隊に携わる中で、どんなことに取り組んできたのでしょうか。当時を良く知る角田市農業振興公社(地域おこし協力隊の受入団体)の菅原寛文さんとともに、角田市での暮らしについてお話をお聞きしました。
地域おこし協力隊になって、休耕農地を復活

今回お話をお伺いする地域おこし協力隊卒業生の吉川一利さん

角田市農業振興公社の菅原寛文さん
大学卒業後、東京等で芸能事務所、商品宣伝会社等に勤務していたという吉川さん。しかしながら、自分で自分のタイムスケジュールを決められない仕事のスタイルよりも、ちゃんと自分で時間をマネジメントできる仕事をしたいと考えるようになり、農業に興味を持ち始めます。生まれ故郷の宮城・七ヶ浜町にほど近い利府町では梨の栽培が盛んだったため、梨農家になることを考え始めました。
━━実際に地域おこし協力隊の間はどのような活動をされていたんでしょうか。
吉川さん
自分のやりたい農業を考えたときに目指すゴールは観光農園だったんです。他の地域でも梨の栽培に携わったり、全国の良さそうな地域を探したりしていたんですが、畑と畑が離れているとか、なかなかいい場所がなかったんです。ずっと腰を据えてやることになりますし、どこかいい場所がないかと探していて、角田市に行きつきました。
ちょうど私が市の農林振興課に所属しているときに、吉川さんから地域おこし協力隊についてのご連絡をいただきました。いろいろとお話しを聞いて、ゆくゆくは梨の観光農園をやりたいという吉川さんの本気を感じたので、地域おこし協力隊として活動していただけるように当時の果樹担当者と手配していきました。担当者が精力的に動いたこともあって、吉川さんが相談に来てから就任まではとても早かったですね。
菅原さん
吉川さん
色々な地域に電話で問い合わせたりしたのですが、角田市の担当者さんがすごく感じが良かったんですよ。実際に1つ1つの梨園を細かく案内いただいたのも他ではなかったですし、見れたからこそビジョンも掴みやすかったです。休耕農地ですが、設備的には問題が無く、防犯の面でも立地が良く、地図サービスのストリートビューで昔の耕作地の様子も確認できたので、角田市でやってみたいと決意しました。
吉川さんの場合は、かなり目的やビジョンがはっきりとしていて私たちとしても、ぜひやってもらいたいという気持ちでした。
菅原さん

吉川さんの活動のご様子
━━角田市での地域おこし協力隊には、どんなきっかけで携わることになったのでしょうか。
大きくは3年間の任期の中で、梨畑の復旧作業と並行で実際に梨を栽培し、就農に向けた準備をしていただきました。また、吉川さんは角田梨のPR活動にも興味を持たれていたので、それに関する活動もだいぶしていただきましたね。
菅原さん
吉川さん
まず1年目は梨の実を意図的につけずに、木を回復させて整えました。収穫が無かったので、角田市のいろいろな梨農家さんのところに行って順番にお手伝いをしましたね。梨は品種リレーといって、品種によって収穫時期にズレがあるんですが、そのあたりの品種や産地の勉強の時間になりましたね。2年目・3年目は、梨の作業をしつつ、空き家を探して自分の暮らしの確保にも時間を割きました。家を購入して任期中にリフォームし、就農してからもそこで暮らしています。
荒れていた場所が綺麗になっていくと地域でもちょっと噂になるんですよ。そういった活動が認められたのか、地域の方から色々な協力をいただけて大変助かっています。また、市や公社の方からは地域の方々を紹介していただいたり、あとは家の情報もいただいたりと、多くの支援をいただきました。
地域おこし協力隊のサポートって、本当に人それぞれなんですよね。吉川さんの場合は、梨農業についてはご自身でしっかりとビジョンを持って動いていらっしゃったので、農業そのものについての相談よりも、角田市での暮らしを整えるサポートが中心でしたね。あとは、人手が必要な時にお手伝いもしました。
菅原さん
吉川さん
やはり作業的にどうしても1人では難しいものもたくさんあるので、そこは本当にかなり助けていただきました。

<<吉川さんの活動内容>>
①休耕農地・作業開始前 ②伐採した梨の木(一部) ③再生後の梨園
イベントが大きくなりお祭りに成長、角田の梨のPRに
━━任期中で印象に残っている出来事はありますか?
凄く行動的で決断が早いので、イベントとか、いろんな仕事を引き受けたり企画もしたよね(笑)。困ったのは、仕事を引き受けてきたと報告を受けてみると、それは協力隊の受入団体として公社も顔出さないといけないなというものもあって、その時は急遽、公社の代表として挨拶に行ったこともありました。
菅原さん
吉川さん
やっぱり講演や視察の受入とか、その他もたくさんお話をいただくんですよ。公社だけじゃなく、他にも色々なところに報告しないといけないので、結構大変でした。
あとはやはり、実際の農作業の手伝いが大変でした。どうしても人手が必要ということで夏場の梨の網掛けの手伝いをしたのですが、炎天下の下で奥行100メートルくらいのところに大きな網をかけるのですが、あちこちの木に引っかるので、ほどきながら徐々にしか進まずもう大変でした。
菅原さん
吉川さん
網掛けって、イメージしにくいかと思うのですが、とてもきついんですよ。2年目までは公社の方に手伝っていただいて、3年目からは別の地域の地域おこし協力隊の方を呼んで作業しました。
その他にも、お客さんを呼んで農作業体験をするような事業を道の駅さんと一緒にやると決めてこられたのですが、内容的に運営の人手が足りないだろうし公社としても人を出してやらなきゃダメだろう、と、そのイベントの開催に協力することになりました。おかげさまで参加者も多く、お客様にも大変喜んでいただき、角田の梨をPRできた良いイベントだったと思います。
菅原さん
吉川さん
梨を食べるだけじゃなくて、どういう過程で実っていくのかを勉強して梨園に愛着を持ってもらいたかったんです。そして角田市の関係人口の促進を図れるようなイベントにできればと思って挑戦しました。イベントは4回ほど開催して、4回目は総集編的に梨祭りとして、市や県、公社の方々、道の駅の方々、県内大学生などにも協力していただいて「第1回かくだ梨まつり」という企画にすることができました。これを足掛かりに、どんどん角田の梨のPRにチャレンジしていきたいです。
他の有名な産地では直売所が多く、梨の産地として名前が知られています。角田も梨がたくさん獲れるのですが、多くが農協へ出荷されますので、祭りという形であらためてPR活動に取り組んでくださった行動力や企画力が素晴らしいと感じています。
菅原さん

地域おこし協力隊で経験を積んでから就農
━━吉川さんは今後、角田市でどのような暮らしをしていきたいですか。
吉川さん
今は2つ農地をお借りしているんですけど、もう1つお借りできる可能性があるんです。いずれは、そこも借受けて休耕農地をできるだけ少なくしたいですね。角田の梨は現在、共同出荷をしています。だから農家が1人減るだけで、全体的な出荷量が結構減るんです。そのため、角田で梨づくりをやってみたい方が増えるように、良い形で地域のPRをしていきたいと思います。そして、個人的に将来は、キャンプ場併設の楽しい観光果樹園を経営していきたいんです。そのゴールに向かって、できることをひとつひとつやっていきたいと思います。
━━地域おこし協力隊に興味を持った方にメッセージをお願いします。
農業の分野で言うと角田市に限らず、どの地域も農業の担い手不足という課題がある中で、新規就農者を増やすための活動をしています。地域おこし協力隊であれば3年という任期の中で給料をいただきながら就農に向けた活動ができます。農業経験を経て就農できるので、農業に興味がある方や、就農を考えている方は、角田市はもちろん、他の市町村でも農業系の地域おこし協力隊員を募集しているところもあるので、いろいろと情報を得ていただきたいですね。
また、地域おこし協力隊は市町村ごとに色々な活動で募集していますが、仕事だけではなく、自分がどんな場所でどのように暮らしたいかというところも大事にしていただきたいと思います。その中で角田に興味を持っていただき、一緒に角田を盛り上げていただけるような人に来ていただけると嬉しいです。
菅原さん
吉川さん
私の場合は、自分の中である程度の理想形が見えてきていて、今は弟子が1人いるんですけど、今度は次の世代のことも考えながら動いていかないとな、と考えているところです。もちろん、新しく地域おこし協力隊になられた方にも、お伝えできることはどんどんお話していきます! 楽しみにしています。
角田は梨以外の農業も非常に盛んな地域なので、少子高齢化の波に負けず、この盛んな農業を維持していけるようにしていきたい。農業を志している方を仲間と考え、これから盛り上げていきたいと思います。吉川さんという頼もしい先輩もいますので、ぜひチャレンジしてみてください。
菅原さん

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