総勢142人が先進的な農業経営に理解深める
次世代農業サミットは意欲ある次世代農業者らが先進的な取り組みを披露するとともに、グループ討論やパネルディスカッションを通じて情報を共有し合い、経営ノウハウや知識を学ぶ機会を提供することを目的に、毎年開催されている。仙台国際センターで開催された今回は、関係者を含む総勢142人が参加。先進的な農業経営に取り組む組織の代表者らが基調講演を行った。
開会に先立ち、実行委員長の酒井貴弘さん(アイ・エス・フーズ徳島株式会社)は「思考が変われば行動が変わる。行動が変われば状況が変わる。未来を変えるために、思考をアップデートしていていただければ」と話し、開会を宣言。日本農業法人協会会長の齋藤一志さんが「報道でさまざまな農業課題が取りざたされているが、それらを乗り切るために、生産者、消費者一体となっていくことが、これからの農業経営だと思う。皆さんの若い力、若い知恵、横のつながりで解消しながら前に進めていけたら」とあいさつした。
「農業会社」から「食料安定供給企業」へ
初日は、売上高 60 億円を超える国内最大級の農業法人である株式会社舞台ファーム代表取締役社長の針生信夫さんが基調講演を行い、「農業会社」から脱却し、「食料を安定的に供給できる企業」への進化を目指すことを説明。農業生産のみならず、食料ソリューションカンパニーとして「食と農の持続可能性を追及していく」とした。
同社はコメや野菜の生産や販売のほか、農産物加工や農業経営に関するコンサルティング、農業生産・食品加工に掛かる電力関連事業などを展開している。今後、高温耐性や多収性に優れた「にじのきらめき」の種籾提供、営農型太陽光発電の拡大、農業人材育成を三本の矢とした、10000haの産地開拓を推進していく方針を明らかにした。
続いて登壇した同社取締役営業本部長の針生信洋さんは、日本最大級の次世代型自動レタス工場である「美里グリーンベース」を軸にした園芸戦略について解説。「美味しい食品の生産や、安心・安全は今や当たり前。『未来の美味しいを共に創る』を掲げ、食料を安定供給できる会社を目指す」とし、植物工場における「菌管理技術」や、植物工場を中心に地域ネットワークを構築する「グリーンタウン構想」などを明かした。
グループ討議通じ、学び深める
2日目の8日には「畜産ミーティング」と「水稲ミーティング」の2本立てで基調講演が行われた。
「畜産ミーティング」では、ZAO合同会社(宮城県白石市)代表社員の佐藤拓永さんが登壇し、規模が小さいが故の強みがあることを強調。「食品リサイクルの割合を上げるのに非常に有用であり、小さい農場のM&Aなど、スピーディーかつ資金効率の良い投資にもつながっている」と話した。
「水稲ミーティング」では、有機米や有機野菜などの生産・販売を行う有限会社大郷グリーンファーマーズ(宮城県大郷町)代表取締役の西塚忠樹さんが登壇し、同社が実践してきた循環型農業の形について説明。人材育成の方法にも話がおよび、「農業に興味のなかった若者が、将来的には農業に興味を持ってもらえるような活動も行っていきたい」と、展望を述べた。
その後は2人を交えたパネル討論が行われ、経営理念の共有方法や労働環境改善の取り組みなどについて言及。参加者からは「販路構築のために努力したことは」、「普段の情報収集はどうしているか」などの質問も寄せられ、それぞれ応じていた。
講演後には参加者同士によるグループ討議が行われ、講演を通じた学びのほか、自社での課題や解消に向けた実施策などを共有し合い、議論を交わした。
サミット前日には学生交流会が開催
次世代農業サミット前日の7月6日には、日本農業法人協会と宮城大学食産業学群の共催で学生交流会が開催された。
地元宮城県内の大学生・高校生だけでなく、サミットへ参加した都内の学生も含めた27名と関係者を合わせた42名が参加。
参加した学生は、次世代農業サミット実行委員の若手経営者たちと熱く意見を交わした。
第16回となる次世代農業サミットは2026年1月7日(水)、8日(木)、東京都立産業貿易センター浜松町館で開催予定。