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植物工場とは。メリットやデメリット、成功事例を解説

植物工場とは。メリットやデメリット、成功事例を解説

畑ではなく、屋内に構築した設備を使って野菜などの作物を栽培する「植物工場」。多くの生産者にとって天候不順や生産コストの高騰、人手不足が大きな課題である現在、安定的な通年生産が可能になる植物工場が注目されています。
植物工場は効率的な栽培が可能になる一方で、まとまった初期投資が必要になるといった面もあります。この記事では、植物工場のメリットとデメリット、今後の展望などを解説します。

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植物工場とは?

スプラウト

植物工場とは、温度や湿度、光、養分、水などの生育環境を人工的に管理しながら葉物野菜などの作物を栽培する屋内施設です。

基本的には土を使わず、水耕栽培を行います。光源については、LEDなどの人工光源のみを使う人工光型と、自然の日光も活用する太陽光併用型、人工光を使わず温室などの半閉鎖空間で栽培する太陽光型の3種類があります。

植物工場の歴史と発展の背景

畑で作物を育てる露地栽培から、冬季や低温下でのハウス栽培(施設園芸)へと発展した上で、さらに高度に管理、制御した環境下での営農を行うために生まれたのが植物工場です。

1957年にデンマークのクリステンセン農場で世界初の植物工場が作られ、スプラウトが生産されました。冷涼な気候で冬季の日照時間が短い北欧では、もともと人工的な温度管理や補光を行う農業が行われてきた歴史があったとされています。

その後ヨーロッパ各地やアメリカでも植物工場の設置や実用化への取り組みが広がります。日本では、1974年に日立製作所中央研究所が植物工場の研究を開始しました。

植物工場が注目される理由

植物工場では、生育状況をモニタリングしながら生育環境を管理することで、季節や天候の影響をあまり受けることなく生産できます。そのため安定的な通年栽培ができるとして、植物工場が注目されています。また、農業の担い手不足が問題となる中で、植物工場での省力化による少人数での営農も期待されています。

植物工場のメリット

水耕栽培の苗

植物工場での生産には、多くのメリットがあります。

通年で栽培、出荷できる

工場内で気温や湿度を高度に管理できるため、露地栽培ができない冬季などでも生産が可能です。年間を通じて安定的に栽培、出荷できる点は植物工場の非常に大きなメリットです。

外部環境の影響を受けない

屋内施設を用いるため、高温や少雨などの異常気象、台風などの自然災害の影響を受けにくい営農ができます。ただし、植物工場においても停電や浸水などへの対策は必要です。また、病害虫の被害を受けにくいのもメリットです。

いろいろな場所に設置できる

植物工場は畑に比べて設置場所の自由度が高い傾向があります。人工光を使うことで同じ面積でも多層栽培を行うなど、効率的に土地を利用できます。
消費地である都市部に近く広大な農地がない地域や、土壌が塩害を受けて営農が難しい土地などでも植物工場であれば稼働できます。

作業負担を減らせる

長年の経験からの判断に頼りがちな温度管理や水分量などの作業項目を定量化、マニュアル化しやすいため、経験の少ない人でも作業しやすいと言えます。人手が少なくても対応できる、高齢者でも働きやすいといった利点もあります。

連作障害がない

植物工場では土を使わず栽培するため、作物の種類に関わらず連作障害が起きません。同じ工場で繰り返し同じ作物を栽培できます。土壌中の病害虫に悩まされることもありません。

植物工場のデメリット

発芽イメージ

メリットの多い植物工場ですが、デメリットや注意すべき点もあります。

最も大きなデメリットは、コストの大きさです。一般に植物工場を採算ラインに乗せるためには、大規模化する必要があります。まとまった初期費用がかかるのに加え、光熱費などの維持費も大きくなります。

そのため個人での参入は難しく、企業や農業生産法人が取り組むのが一般的です。農林水産省の調査では、植物工場を経営する組織形態は株式会社が56%、農地所有適格法人(農業生産法人)が37%となっています。

また、植物工場で生産できるのは葉物野菜やハーブなどが中心であり、すべての作物を工場で栽培できるわけではありません。現状で商用化されているのは一部の作物に限られることに注意が必要です。

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植物工場の可能性と応用分野

リーフレタス

現在はハーブや葉物野菜など一部の作物に限られている植物工場ですが、より多品種の栽培が実現する可能性があります。ミニトマトやイチゴなどは商用化に近い状況にあり、今後さらに他の作物についても工場生産が可能になるかもしれません。
また、特定の栄養素の含有量が多い機能性野菜など、付加価値の高い作物の生産も期待されます。

植物工場の成功事例

農業生産法人でなく、他業種の企業が参入した事例が注目されています。

北海道電力は、植物工場のノウハウを持つプランツラボラトリーと資本業務提携を行い、植物工場事業に取り組んでいます。北海道倶知安町に作られた小型植物工場では野菜やハーブなどを栽培し、近年インバウンド観光客が増加するニセコ地区のレストランやホテルへ出荷しています。

大半の地域で冬季の営農が難しい北海道において、近隣の植物工場からの安定的な供給が実現するとして話題になりました。

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また、少し変わったところではトヨタ自動車が自動車工場の排熱を利用してイチゴやミニトマトのハウス栽培を行うなどの事例もあります。

赤字で撤退するケースも

植物工場では一般的に大規模化が収益のカギになるため、資本力のある大手企業の参入も見られます。ただし事業が継続するとは限らず、特に上場企業では数年間収益化が見込めず撤退、事業化見送りなどのケースも少なくありません。

植物工場の将来性と今後の展望

工場内のレタス

長期的な視点で日本の農業を考える上で、植物工場には多くの可能性があります。

外部環境の影響を受けず、効率的な通年生産が可能な植物工場の活用は、環境負荷の軽減や、持続可能な農業の実現につながります。日本の食糧安全保障の強化にも関わります。

今後はさらなるコスト削減やIoTやAIの活用も想定されます。技術革新により、さらに多様な作物の栽培が可能になったり、採算性が向上したりといった将来も期待されるでしょう。

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