ケールの基本情報
ケールの歴史と種類
ケールの歴史は非常に古く、原始型は紀元前の古代ギリシャで薬用として栽培されていたと言われています。ローマ時代には野菜として盛んに栽培され、食文化の中で重要な役割を果たしてきました。キャベツの祖先でもあるケールは、多様なアブラナ科野菜を生み出した優秀な品種です。イタリアではブロッコリーに、フランスではコールラビに、中国ではカイランが生まれました。なんと日本のハボタンもケールの仲間です。

ケールの種類にはいろいろな分け方がありますが、しわがなく丸みがかった葉が特徴のコラード系、葉に縮みがあるカーリー系、細長い縮れ葉で葉の縁が裏側に丸まっているカーボロネロ(和名:黒キャベツ)などが有名です。

栄養価と健康効果
ケールは、緑黄色野菜の中でもトップクラスの栄養価を誇る健康野菜です。ビタミンA・C・E・B群に加え、カルシウムや鉄分、マグネシウムなどのミネラル類が豊富に含まれています。特にビタミン類の含有量は際立っており、美肌や免疫力アップ、抗酸化作用など、さまざまな健康効果が期待できます。さらに、食物繊維はキャベツの約2倍とされ、腸内環境の改善にも役立ちます。青汁になるのも納得の栄養バランスです。ちなみに、ケールの葉1枚(約200グラム)で青汁1杯分が作れるほど、濃厚な栄養が詰まっています。
家庭菜園にも向いている作物
キャベツは結球しないと「失敗した…」と残念な気持ちになってしまいますが、ケールはもともと結球しないタイプ。形に左右されないため、おおよそ失敗ということは起こりません。初心者が初めての家庭菜園で作るのにも安心な野菜です。さらに、ケールは一度にまるごと収穫するのではなく、「かき取り収穫」といって、葉っぱを数枚ずつ摘み取るスタイル。そのため長期間にわたって収穫を楽しむことができます。食べたいときに食べたい分だけ収穫できるのは家庭菜園にぴったりですね。
ただし、アブラナ科のためアオムシなどの害虫には特に注意が必要です。防虫ネットや農薬をうまく使って葉が食い尽くされないように対処しましょう。
ケールの栽培暦

種まき時期と、発芽率を高めるためのポイント
ケールの発芽適温は15~30℃と幅広く、比較的発芽が簡単な野菜です。一般的には春植えと秋植えで栽培されることが多いです。種が非常に小さいので、発芽をそろえるためには覆土を均等にすることが重要。覆土が厚すぎると発芽が遅れ、薄すぎると乾燥しやすくなるのでバランスが大切です。
特に暑い時期に種まきするときは土が乾燥しやすいので、濡らした新聞紙を軽く被せておくと乾燥を防げます。ただし、少しでも芽が見えたらすぐに新聞紙を取り除くこと。タイミングが遅れると茎が細く伸びてしまい、ひょろひょろのカイワレ大根のような苗になってしまいます。こうした苗は倒れやすく成長も不安定です。できれば一日2回くらいチェックをして丈夫な苗づくりを目指しましょう。
土壌作りと適した場所の選び方
ケールは湿気に弱いため、通気性の良い土壌と風通しのよい場所が栽培に適しています。畑に植える場合はできるだけ排水の良いところを選びましょう。もし排水の悪いところしかなければ高畝にすることで土壌の乾燥を促します。また、雑草が多く茂っている場所は風通しが悪く、病害虫の発生リスクも高まります。植え付け前にはしっかり除草し、環境を整えることが大切です。
ケールは品種によっては高さ2メートル、横幅も50センチほどに成長します。植え付けの際は、品種の特性に応じて十分な株間を確保してのびのびと育ててあげましょう。
ケール栽培を始める準備
必要な道具と材料
ケールはキャベツやブロッコリーを育てるのとだいたい同じ要領で栽培できます。畑で育てる場合は苦土石灰、堆肥、元肥もしくは追肥用に一般的な野菜用の化成肥料を購入します。
背が高くなる品種では支柱があると安心ですが、たくさん植えていればお互いに支え合うので支柱なしでも大丈夫です。葉が虫に食われやすいので、農薬をあまり使いたくない人は防虫ネットを必ず準備しましょう。
ケールに合った土づくり
植え付けの2週間前には苦土石灰をまいて土壌酸度をpH6.0〜7.0に調整しておきましょう。続いて1週間前に堆肥と肥料を混ぜて耕します。マルチは使っても使わなくても構いませんが、使わない場合は雑草が生えやすくなるため、畝を立てるのは植え付け直前にします。
プランターの場合は市販の野菜用培養土でOK。ケールは多湿を嫌うので、水はけを良くするために鉢底石をいれます。洗濯ネットに鉢底石を入れて使うと栽培後の片付けが簡単でとても便利です。
タネから育てる場合と苗から育てる場合の違い
ケールはタネからでも育てられますが、収穫まで時間がかかるため、家庭菜園では苗の購入がおすすめです。とはいえ、ケールはまだ日本では広く普及していないため、育てたい品種の苗がホームセンターにない可能性も十分あります。そんなときは少し頑張ってタネから育ててみるのもいいでしょう。
苗は野菜の赤ちゃんです。虫に食われて葉がなくなったり、病気になったり枯れそうになったりと、なにかと弱くて手がかかります。でもその分、収穫の喜びはひとしお。困難を乗り越えて育った苗は栽培の達成感をぐっと深めてくれます。
ケールの種まき、植え付け
ポットに苗をまく場合は育苗土に深さ1cmほどの穴を作り、1㎝間隔で3〜4粒の種をまきます。ケールの種は非常に小さいため、覆土はごく薄く、5mm程度で十分です。水やりのときに種が流れないように、覆土の上から指でやさしく押さえます。本葉が出たら葉が重ならないように間引きをし、草丈10㎝ころまでに1本立てとします。

本葉5~6枚程度になったら植え付け時期です。株間を30~40cmほど空けて、植え穴にたっぷり水を与えてから植え付けてください。

プランターに直接まくときはすじまきにして、深さ1cmほどの溝に1㎝間隔で種をまいていきます。すじまきの場合は本葉が出たら重ならないように間引きしながら、ベビーリーフとして収穫を楽しむことができます。高さ15㎝頃に中央の株を一本立ちにし、そのまま大きく育てます。

種まきと間引きのコツ
種まきのコツは種を少しでも離してまくことです。種が小さいと、どうしても一か所に集中して種が落ちてしまいます。しかし近接して生えてきた場合はどちらの芽も曲がってしまいますし、お互いに日光を遮ってしまいます。細かい作業なので、手で難しい場合は割りばしやピンセットを利用してみてください。間引く際のコツは、手で抜かずにハサミで根元を切ることです。手で抜くと根が絡み合って残したい株が傷つきやすいですが、ハサミを使えば安心です。
水やりと追肥のタイミング
せっかく植えたケール、できるだけ長くたくさん収穫したいですよね。ケールを長く収穫するためのキーワードはずばり「追肥」です!植え付け当初は葉色も濃く元気いっぱいだった葉が、小さくなったり色が薄くなったりしたら肥料切れのサインです。この状態になると生育が鈍り、収穫量も減ってしまいます。
不調が出る前、できればサインが小さいうちに追肥してあげましょう。目安としては30~50グラム/㎡の化成肥料を月に2回程度与えます。追肥の際には除草をかねて中耕すると、固まった土に空気が入り根の伸びが良くなります。なお、冬は成長が緩やかになるため、様子を見ながら追肥の頻度を調整してください。
水やりについては、露地栽培では基本的に不要ですが、植え付け直後だけは例外です。苗がしっかり根付くまでは、乾燥していたらたっぷり水を与えましょう。また、成長後も長期間雨が降らない場合は水やりをすることで収穫量がぐっとアップします。
季節ごとに注意すべきポイント
暖かい季節に最も注意すべきはやはり「害虫」です。アブラナ科の野菜はどれもアオムシたちの大好物で、あっという間に穴だらけになってしまいます。無農薬で栽培したい場合は、種まきから収穫までずっと防虫ネットをかけておきましょう。冬場はアオムシたちの元気もなくなるので、12月~2月はそれほど心配することはありません。
また、ケールは多湿に弱いので、梅雨や秋雨の時期には病気のリスクが高まります。特に秋に植え付ける場合は、苗がまだ抵抗力の弱い時期に長雨や台風の影響を受けやすく注意が必要です。病気の予防には適切な殺菌剤の使用や、高畝での栽培が有効です。
ケールの収穫方法
収穫時期の見極め方
ケールの収穫は本葉が12枚以上になった頃が目安です。収穫の際は、上部の葉を6枚以上残して、下の葉から順に摘み取るようにしましょう。葉を取りすぎてしまうと、植物が十分に光合成できず、その後の成長が鈍くなってしまいます。長くたくさん収穫するためには、成長に必要な葉の枚数をしっかり確保することが大切です。

収穫の基本手順
収穫は包丁やハサミを使って下の葉を茎ごと切り取ります。ケールの葉は比較的大きいので、一枚だけでもけっこう食べ応えがあります。一度にたくさん収穫するのではなく、「食べたい分だけ取る」スタイルにすることでいつでも新鮮なケールを楽しめます。収穫後は上部から次々に新しい葉が伸びてくるため、下の葉を順に収穫することで長期間の収穫が可能になります。うまく育てば約4か月、時期によってはそれ以上の期間収穫することもできます。
収穫したケールの保存方法
収穫したケールはラップをするかポリ袋に入れて冷蔵保存します。ただし、長い間冷蔵庫に入れておくと苦みが出てくるため、食べたいときに適宜収穫したほうが食味は良いです。サラダ以外の用途であれば冷凍保存もOK。また、青汁にして保存する場合は冷蔵庫で3~4日、冷凍庫で3か月ほど保存できます。用途に合わせた保存方法を選ぶことで、ケールの美味しさと栄養を無駄なく活かすことができます。
ケールでよく見られる病害虫
根こぶ病
根に感染してこぶを形成する病気で、発育不良やしおれを引き起こし、ひどい場合は枯れてしまいます。根こぶ病を防ぐにはアブラナ科の連作を避けること、病気が出ている他の畑から土や道具を持ち込まないことです。すでに病気が出ている畑で栽培する場合は、植え付け前の土壌に根こぶ病の薬を混和したり、苗を根こぶ病の薬液につけるなどの方法を取ります。
灰色かび病
糸状菌というカビが原因の病気で、いろいろな植物に感染します。排水不良の畑で発生が多く、密植や肥料のやりすぎも良くありません。畑の風通しを良くし、 高畝にするなど対策をしましょう。病気になった葉は切り取り圃場外に処分します。
軟腐病
葉が茶色っぽく腐ります。他の病気に比べてかなり臭いので匂いで判別できます。灰色かび病と同様に多湿で発生が多いので密植を避けましょう。また、被害株を見つけたら速やかに抜き取り処分してください。
アオムシ類
アオムシ類はアブラナ科の葉っぱが大好きです。集団で襲い掛かりあっという間に穴だらけにしてしまいます。葉がなくなると光合成ができなくなるため食害がひどい場合は枯れることも。農薬や防虫ネットで適切に対処しましょう。防虫ネットは少しでも隙間があればそこから虫が入り込み「虫かご状態」になってしまいます。作業でネットを開けた後は、少しの隙間もないように完璧に張り直しましょう。
ヨトウムシ(ネキリムシ)
漢字で書くと「夜盗虫」という名の通り、夜中に出てきて苗の茎を食べます。翌朝畑に行くと植えていたはずのケールが茎だけ残してなくなっている!という事態にびっくり。日中は土の中に隠れているので、農薬を散布しても逃げられる場合があります。防除には土にまくタイプの農薬が効果的です。
アブラムシ
アブラムシは柔らかい葉が大好きなので、新芽につきやすいです。肥料の与えすぎや密植を避け、風通しを良くしましょう。一度発生するとものすごい勢いで増えていき、病気の発生原因にもなりえます。あまりの小ささに防虫ネットでも防ぐことが難しい虫なので、発生初期に適切な農薬で対処しましょう。
ケール栽培でよくある質問
Q. 長く収穫したいのですが、葉っぱが小さくなって色も薄く元気がありません
A. 肥料切れです。特に冬場は肥料を吸わないだろうと思い追肥をやめてしまうことがありますが、収穫する分だけ確実に肥料は減っていきます。元気がなくなったら追肥してあげましょう。
Q. 葉が硬くて噛み切れません。味も苦いです。
A. これも肥料切れの可能性が高いです。肥料が足りないと葉脈が筋張ってかたく、味も苦くなります。もともと硬いケールがこれ以上硬くなると食べられませんね。また、水不足や寒さが厳しい場合も硬くなることがあります。
Q. 日中しおれて、夕方になるとピンとして復活しています。なぜでしょうか。
根こぶ病の可能性があります。抜いてみて根にこぶができていればその土壌が根こぶ菌に汚染されています。涼しい時期であればそれでもどうにか育つこともありますが、暑い時期だと徐々にしおれがひどくなり枯れてしまうかもしれません。いずれにせよその畑ではしばらくアブラナ科の栽培をやめたほうがいいでしょう。
ケールをプランターで栽培するには。地植えとの違い
プランター栽培と地植えの一番の違いは水やりです。特に暑い時期は土が乾きやすいので小まめな水やりが欠かせません。水不足は生育が鈍り、葉も硬く、食味の低下につながります。とはいえケールは多湿を嫌うので、風通しのよい場所に置く、植え付け時に鉢底石を入れておくなど対策を講じてください。
ケールは長期間収穫するので、何度も水やりをするにつれだんだんと土が締まり、次第に土かさが減ってしまいます。土が締まってきたらスコップで少し表面をほぐしてから、さらに新しい土を追加してあげるといいでしょう。
また、プランター栽培の場合は根をはるスペースが少なく、畑で育てるのに比べるとひょろひょろっとなりやすいです。そのため、新しい土を入れるとぐらつきを防ぐこともできます。それでも株が傾きそうな場合は支柱を立ててあげるといいでしょう。
まとめ
日本では長らく「ケールと言えば青汁」というイメージが定着していましたが、最近ではデパ地下の惣菜コーナーでもサラダなどを見かけるようになりました。ケールはしっかりとした歯ごたえがあるので食べたときの満足感も抜群です。その噛み応えと濃厚な味わい、そして豊富な栄養を支えているのは太陽と水から行う光合成と、土から吸い上げる肥料です。
収穫のときは一度に葉を取りすぎず、光合成に必要な枚数を残すことが大切。さらに定期的な追肥を忘れないようにすることで立派な葉を長く育て続けることができます。ちなみにケールの品種のひとつ「カーボロネロ」は煮込み料理に向いていますが、福岡出身の私としてはもつ鍋に最強に合うと思っています。ぜひ、ケールを育てて、味わって、その魅力を家庭菜園でも食卓でも楽しんでみてください。























