カニステルの基礎概要

色々な形のカニステル
カニステルの果形は、紡錘形から卵形、やや扁円形とさまざまあり、先端が尖るものやそうでないものなど、形に変異が多い。未熟時は緑であるが、成熟して黄〜橙へ変化し、果皮は薄い。追熟型フルーツで、果肉は黄色からオレンジ色。完熟なら「なめらかでクリーミー」である。酸味が少なく甘味が強い。個体によっては、少し粉っぽいものもあるが、それらの粉っぽい果肉がパサパサした感じではなく、溶けるような食感で美味しいものもある。

完熟になると手で割れる。タネは1~5個
種子は1〜5個で、果肉から離れやすいので食べやすい。スプーンで果肉をすくって食べることができる。
カニステルの原産地と歴史

カニステルの原産はメキシコ周辺
カニステルの原産はメキシコ南部〜中米(ベリーズ、グアテマラ、エルサルバドル)とされている。学名のP. campechianaも、メキシコのカンペチェという地域から取られている。また、カニステルは、アメリカ大陸へスペイン到来以前の時代から、先住民の食生活や伝統医学などにおける中心的な役割を持っており、経済的にもとても重要な果樹だと報告されている(※1)。
20世紀初頭にフロリダへ導入され、現在は中米・カリブ、東南アジア、アフリカの一部で栽培されている(2)。沖縄県へは戦後、沖縄返還後にタネが持ち込まれたようで、県内全域でカニステルの木が植えられている。ただし、小規模か局地的に育てられている現状である。
名前の由来と別名
カニステルは、その独特な味質から苦手な人も多いとされる。「カニも食べずに捨てる」から「カニステル」となったと言われることもあるが、これはだじゃれ由来の俗説であり、実際は英名のCanistelから来ている。英語圏では他にも「エッグフルーツ」や「イエローサポテ」などと呼ばれている。和名だとエッグフルーツを直訳して「クダモノタマゴ」となっているが、国内では「カニステル」と呼ばれることが多い。
エッグフルーツは、果肉の見た目と食感が、ゆで卵の黄身に似ることに由来しており、サポテはナワトル語(古代アステカ帝国で使われていた言語で現在はメキシコ先住民らが使っている言語)で、tzapotl=「柔らかい食用果実」というところからきており、イエローサポテは柔らかい果肉をもつ黄色い果物を指す意味で呼ばれている。
カニステルの栄養と健康効果
カニステルは栄養豊富なフルーツであり、原産地周辺では医学的な用途にも用いられている(※3)。カロテノイド(β-カロテン、ルテイン、ビオラキサンチンなど)やビタミンB、ビタミンCのほかカリウムなどのミネラルを豊富に含んでいる。果肉の濃い黄色はβ-カロテンなどの色素であり、これが体内でビタミンAに変わり、粘膜・皮膚・視覚・免疫をサポートする。
フロリダ大学の報告(※2)だと、ビタミンCはカニステルの果肉100g中に58mg入っており、一日に必要な量の半分が摂取できる。ビタミンCは、抗酸化作用や、骨や腱などを作るコラーゲンの生成に必須である。また、カリウムはナトリウム排出を助け、水分バランスを整える栄養素であり、塩分が気になる食事の日のデザートとして相性が良い。
また、カニステルは果実だけではなく、樹皮や葉、種子などにも活用されている。メキシコでは樹皮からの煎じ薬を解熱剤として利用、キューバでは皮膚の水ぶくれや痛みの治療に利用されている。熟していない果物は下痢を抑えるために摂取されたり、葉には抗炎症作用、種子は潰瘍の治療薬としても使用されている(※3)。
カニステルの旬

熱帯果樹カレンダー、カニステルの時期など
国内でカニステルが出回るのは、秋以降から初夏までの時期が多い。沖縄ではマンゴーやパイナップルなどが7-8月にかけて旬を迎えるが、この時期を回避して出荷されるケースが多いためだ。
国内産のカニステルは主に沖縄で栽培されているが、ほとんどは実生で増やされており、果実収穫時期の性質がややバラバラである。それゆえ、通年で流通するフルーツであるが、沖縄ではマンゴーやパイナップルなどが旬を迎えるため、相対的に秋以降から初夏までの時期によく見かけることになる。海外で報告されている品種でも収穫時期がバラバラで、年中採れるものもある。
どこで購入できる?

糸満のファーマーズ「うまんちゅ市場」
カニステルの国内流通量は限定的であるが、沖縄県では生産者直売店でよく売られている。筆者がよく見かけるのは、糸満市のうまんちゅ市場や、南風原町のくがにー市場、また名護市のやんばる市場であるが、県内のどの市場でもよく見かける。全体的な生産量は少ないものの、少量を直売する生産者自体は多いため、沖縄県では手に入りやすい。
カニステルの美味しい食べ方

カニステルは追熟して割れることもある
カニステルはしっかりと追熟させて完熟果をそのまま食べると美味しい。デザート向きで、牛乳・ヨーグルト・ココナッツミルクと合わせたスムージーやシェイクも好相性である。加熱しても色と粘性が保たれやすく、プリン、チーズケーキ、クッキーや食パン生地への練り込みもオススメだ。以前、筆者と料理研究家の緑川鮎香氏の運営する「アボトーク」というyoutube番組で、カニステルを使ったサラダを紹介したが、そちらもおすすめだ。
美味しいカニステルの選び方
カニステルはいくつか果実の色や形に個体差があるが、美味しい果実の共通点は以下の通りだ。
・果皮が緑色ではなく、しっかり黄〜オレンジ色のもの。
・ツヤがあり、ハリがあり、持った時に重みを感じるもの。
・打撲箇所や傷がないもの。
樹上にしっかりと置かれたカニステルは果皮が黄色くなるので、そのようなものが美味しい。また、傷があると追熟の過程でカビなどが発生してそこから果肉全体が食べられなくなってしまうので、なるべく避けよう。
カニステルの切り方

カニステルは縦に割って食べる
筆者は、柔らかくなったら両手で半分に割って食べることが多いが、包丁で縦割りにするのが良い。果実の真横(赤道方向)から包丁を入れると、タネにぶつかってしまうため、上手く切れない。縦に切ることでタネにぶつかりにくく綺麗に切れるだけでなく、タネをスプーンで取り除いてそのまま食べることができる。
完熟させるための追熟方法

食べ頃のカニステル
カニステルは冷蔵庫に入れず室温で追熟をさせるフルーツである。硬いうちには決して切ってはいけない。追熟の日数は、しっかり樹上に置かれた優良な個体だと、室温で5日程度で柔らかくなるが、やや早どりされたものだと2~3週間かかることがある。食べごろの目安としては、果皮にヒビができてめくれてきたり、少しだけ点々とシミっぽい斑点ができはじめるなどだ。
カニステルの保存方法
追熟がしっかりと完了したら、冷蔵庫で3~4日は保存できる。ただし、原則としてすぐに食べないと、熟れたような香りが強くなり、少し風味が臭くなってくる。未熟果は常温追熟を優先し、冷蔵で保存しないこと。低温障害などを避ける。冷凍する場合は、ペースト化すると扱いやすくなる。冷凍したカニステルは、スムージーや焼き菓子用途に好適である。
カニステルの栽培方法

カニステルについて
カニステルの栽培に関する特徴などを紹介する。カニステルは、寒ささえ凌ぐことができれば難しくない。沖縄県だと比較的簡単に栽培できる。耐寒性がそこまで強くないため、7℃以下では寒害がみられる。そのため、本土で栽培される方は、温室が必要になる。木が大きくなるとある程度寒さに耐えられるという報告もあるが、温度に関しては注意が必要である。台風などの強い風にもある程度耐えられるとても強い果樹だ。
栽培に適した気候、土壌
カニステルに適した気候は、熱帯〜亜熱帯地域であり、沖縄県であれば、露地でもある程度どこでも栽培できる。冬の最低気温が7℃を上回る環境であれば、とにかく問題ない。ただ、瞬間的な寒さがある場合は、若木の低温障害がまれに発生するため、防風対策をすると安心だ。土壌pHは6.5の弱酸性を目指すが、ある程度どのようなところでも適応する。沖縄県南部のアルカリ土壌でも北部の酸性土壌でも十分に育つ。ただし、排水性には気をつけること。水がたまらずに、水はけの良い園地に植えよう。
栽培に必要な道具
カニステルの栽培に関しては、必ずしも用意しておくものはそこまでないが、若木のときの木を支える支柱や、防風ネットなどがあれば、生育はより良くなる。
また、カニステルは上に高くやりやすいため、収穫の際は、脚立や剪定バサミが必要になる。

脚立にのぼってカニステルを収穫する筆者
種まきをする

カニステルのタネ、発根してるものもある
カニステルの種子は、硬い殻に包まれているが、種子は短命である。果実を食べた後は、すぐに採種する。殻の一部もしくは全てを除去すると、1〜2週間ほどですぐに発芽するが、殻が硬いので怪我に注意する。硬い殻を割らない場合でも、一ヶ月程度では発芽してくる。
また、果実が追熟型なので、その過程で果肉の中ですでに発根している種子もたまにあるが、種まきをする場合は、カビの原因になるため果肉をきれいに落として、発根している根は折らずに優しく種まき用土に播種する。筆者も今年200〜300個はタネ撒きし、9割程度は発芽した。現在は、育苗用のハウスで管理している。

発芽半年後のカニステル

筆者もカニステルの苗をかなりたくさん作ってる
接木をする

カニステルの接木
自分で苗木を作る場合、タネから育てたものだと開花・結実をするまでとても長い時間がかかるため、すでに果実がなる木から枝を取ってきて接木を行う。そうすることで、すぐに花が咲き、果実ができるような木になる。また、美味しい果実がなる木を探して、そこから枝を取ると、美味しい果実を作ることができる。
植え付けのタイミングと方法

カニステルの植え付け
植え付けのタイミングは、春か秋の暖かい時期に行う。寒すぎる冬と暑すぎる夏は避けて定植を行う。露地への植え付けの際は、しっかりと完熟の堆肥を土にまぜておき、排水性を意識してやや高畝にする。
水やり・肥料やり

カニステルの栽培暦
かん水は定期的に行うが、果実肥大時期には相対的に水が必要になる。表土が乾いたらたっぷりとかん水をしてあげること。日照りが続く日は、2〜3日に一回はかん水をすると良い。肥料に関しては、筆者らは、3月、8月あたりの年2回ほど、完熟の牛糞堆肥を木の周囲にパラパラと散らす。
カニステルの花

カニステルの花
カニステルは、枝先や枝の途中から花が咲く。小さい小花がまとまって咲き、その中にメスの花と両性花が存在する。そのため、一本の木でも結実するが、木が小さいうちは果実がたくさんつきにくい。なるべくなら、複数の木を植えることができると、受粉率も上がり、果実収量も増える。
剪定のやり方とタイミング
収穫後に剪定で樹冠内へ光と風を通すことが重要になる。直立する徒長枝は積極的に剪定し、なるべく側枝を生かすようにすると、その後の管理がやりやすくなる。カニステルは、樹勢が強く木が大きくなりやすい。そのため、1年放っておくと、かなりのサイズになるため、収穫が難しくなる。若木のときに、1m程度で主幹を止めておくと、主枝が横方向に発達して、低く作ることもできる。
成木になり、4〜5mのサイズになると、小さくすることがとても難しいので、木が若いうちからこまめに剪定しておくと良い。

成木のカニステル

若木のうちから摘心を繰り返し低く仕立ててる
収穫のポイント

カニステルの収穫
カニステルは、追熟が必要なタイプであり、収穫が難しい果樹である。収穫の目安としては、果実がしっかりと黄色くなり、全体的にハリが出てきたら収穫する。それでも未熟な時があるため、一斉収穫をせずに、5日程度で追熟できるかどうかを試し、段階的に収穫していく。樹上に置ける期間が長いので、焦らずにゆっくり収穫することが大切である。
まとめ
カニステルは、まだまだ知る人ぞ知る果実かもしれないが、とても美味しくて魅力的なフルーツである。一方、カニステルは実生で増やされている果樹であり、いまだ国内では育種がされていないため、個体によって質にばらつきがあるのも事実だ。舌がうねるほど美味しいものと、臭みが強くそこまで美味しくないものも存在する。そのため、一度食べて美味しくないと思った方も、もう一度挑戦してみてほしい。カニステルの味質は、不安定とも言える一方で、未知なる出会いがある大きな可能性を秘めているとも言える。栽培もそこまで難しくないので、ぜひ挑戦してみていただきたい。
参考文献
(※1) Zaira Guadalupe Ibarra-Manzanares et al, Sapotaceae Family Fruits from Central America: Botanical, Phytochemical and Nutraceutical Insights―A Review, Plants 2025, 14(21), 3297; https://doi.org/10.3390/plants14213297.
(※2)Jonathan H. Crane and Carlos F. Balerdi, Canistel Growing in the Florida Home Landscape, University of Florida, January 7, 2020, https://doi.org/10.32473/edis-hs299-2006
(※3)Thi Van Thanh Do et al, Nutritional value, phytochemistry, health benefits, and potential food applications of Pouteria campechiana (Kunth) Baehni: A comprehensive review, Journal of Functional Foods, Volume 103, April 2023, 105481.



















