マイナビ農業TOP > 農家ライフ > 熱量も火持ちも違う! 薪に適した樹木とは【DIY的半農生活Vol.37】

熱量も火持ちも違う! 薪に適した樹木とは【DIY的半農生活Vol.37】

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

熱量も火持ちも違う! 薪に適した樹木とは【DIY的半農生活Vol.37】

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約3.5反(35アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。10月も半ばを過ぎると、長く続いた残暑も去り、急に朝晩がぐっと冷え込むようになった。今年も薪(まき)ストーブのシーズンがやってきた。このアナログな道具は、燃料である薪によって性能が大いに左右される。どんなにハイスペックな薪ストーブも、薪がよくなければ十分な熱量を得られず、火持ちもしない。寒い冬を暖かく過ごすために求めたい理想の薪とは。

twitter twitter twitter twitter
URLをコピー

1年以上乾燥させて含水率を20%前後にする

塀の屋根をふき替えた。12年前に作った板塀で、スギの野地板(屋根などの下地となる板)で屋根をふいていたが、それが傷んできていたのだ。野地板に使われるスギ板は一般的に9ミリまたは12ミリ厚の安価なもので、屋根や壁、床などの下地となることが多い。
今度の屋根は30ミリ厚のヒノキの板だ。おそらく20年は持つ。この塀は道路に面していて長さが約22メートルあり、裏が薪棚になっている。そのために屋根が設けてあるのだ。

裏が薪棚になっている塀。屋根をヒノキの板にふき替えた

ここに収められている薪の量はおよそ20リューベ(立方メートル)。6畳間の部屋に2メートルの高さでぎっしり薪を詰め込んだくらいの量だ。わが家では冬の暖房を3台の薪ストーブでまかなっており、およそ2年分の燃料がここにストックされている。薪棚はほかにもあり、それらを全部合わせると、ざっと3シーズンは薪に困る心配はない。

原則として薪は1年以上乾燥させないと、十分な熱量を得られない。なぜなら伐採したばかりの生木は水分を大量に含んでいるからだ。中には含水率が100%を超える木もある。つまり、樹木そのものの重さより、その植物体に含まれている水分のほうが重いということだ。そういう生木を燃やそうとすれば、熱エネルギーのほとんどは水分を蒸発させるために使われてしまい、燃焼温度がまったく上がらない。水が混ざったガソリンのようなもので、燃料としての役目を果たさない。理想的な薪の含水率は20%前後と言われている。3シーズン分の薪をストックしているのは、そういう理由である。

含水率計。先端の突起を刺すと簡単に薪の水分量を測れる

一方で、それ以上の薪をため込んでも無駄になる。経験的に3年を過ぎた薪はキクイムシやカミキリムシの幼虫が入り込み、硬質な炭素エネルギー源を柔らかい粉にしてしまうからだ。そうなってしまえば、薪としての価値はなくなる。

薪ストーブを使い続けるための3つの条件

薪ストーブを日常使いするためには絶対にクリアしなくてはいけない条件が三つある。

一つは、燃料の薪を切らすことなく確保できること。
薪は業者から購入することもできるが、それはどんな燃料よりも高価なものになる。となれば、自前でなんとかするよりほかにない。山や森の所有者で、そこに生える木を自力で切り出せれば問題はない。もしくは、ツテを頼りに間伐材や伐採木を手に入れるかだ。私は後者の方法で薪を確保しているが、十数年前に薪ストーブを使い始めてから、今日まで幸いにして薪に不足することなく冬を越している。

自前で薪を手に入れるために軽トラは必須。ちょっぴり重量オーバー

二つ目の条件は、薪をストックできる場所があること。理由は先に述べたとおりだが、乾燥を進めるうえでも最低1年分の薪は蓄えておかなくてはいけない。2~3年分となると、それなりに広い場所が求められる。

3年分の薪をストック。よく乾いているのでストーブに入れるとすぐに燃え上がる

三つ目は、薪作りができることだ。業者から薪を購入するのでなければ、薪作りは自分でやらなくてはいけない。山や森から立ち木を切り出すとなれば、伐採してそれを自宅まで運ぶ作業も伴う。伐採された木を手に入れる場合でも、トラックの荷台に満載されてくる丸太を降ろしてもらう場所が必要で、その後、チェーンソーで玉切り(所定の長さに切ること)にし、オノや薪割り機で割ることで初めて薪として使えるようになる。

薪割り機があれば楽にできるが、今のところトレーニングを兼ねてオノにこだわっている

薪ストーブをたいて暮らそうと思えば、そういうきつい肉体労働をこなせなくてはいけない。ストーブに火が付くまでには莫大(ばくだい)な時間と労力がかかるのだ。
でも、私はその体力勝負の仕事が好きだ。書斎でイスに座ってディスプレイを眺めながらキーボードを打っているより、太陽の下で木と対峙(たいじ)し、オノを振るっているほうがずっと気持ちがいい。仕事終わりのビールの味が全然違うもんね。何より薪作りは体がしぼれる。お金を払ってスポーツジムに通うより生産的だし、ずっと健康になれると思うよ。

熱量が高く、火持ちがいい薪とは

今年の春、近所のカズさんが仕事で伐採した丸太を3トントラックの荷台に山盛りにして運んできてくれた。丸太はすぐに玉切りして、そのまま庭の隅に積み上げ、雨に濡れないようにトタン板をかけておいた。それをこれからオノで割って、改めて薪棚に積み直さなくてはいけない。

硬さや粘り、繊維の通り方など、樹種によってさまざま。簡単に割れる薪もあれば、10回以上オノを振り下ろしても割れない薪もある

届いた丸太は多様な樹種が混じっている。樹皮を一見して断定できるものもあるが、不確かなものもある。が、手で触れると繊維の緻密さを感じられるSクラスの硬い広葉樹ばかりだ。スギやヒノキなど、軽くて柔らかいBクラスの針葉樹は皆無。カズさん、しっかりわかっている。

スギ。よく乾いていれば着火しやすいが、燃え尽きるのも早い

私は薪にする木材をクラス分けしている。Sクラスの薪というのは、クヌギ(0.86)、シラカシ(0.87)、コナラ(0.78)などだ。数値は一般的な比重(物質の密度を水の密度で割った値)の目安。この値が高いほど密度が高く、薪に向いていると言える。いずれも0.8前後と高く、火持ちも熱量も抜群だ。

コナラ。クヌギと並んで雑木林の代表的な木で、昔から薪として利用されてきた。割りやすく火持ちもいい

じつをいうと、薪の持つエネルギーは同じ重量であれば樹種によって大きく変わることはない。つまり、1キロのクヌギと1キロのスギの発熱量はほとんど同じなのだ。ただし、クヌギの比重が0.86なのに対し、スギの比重は0.34しかない。体積にすると、同じ1キロでもスギはクヌギの2倍以上の大きさになる。また、比重が高いほどゆっくりと燃焼するため、クヌギのほうがずっと長く燃え続ける。スギは短時間で大量の熱エネルギーを発して、あっという間に燃え尽きてしまうのだ。着火の際にガッと熱量を上げるにはいいが、火持ちが求められる薪としてはBクラスだ。スギと同じ針葉樹であるヒノキ(0.41)やアカマツ(0.49)も、一瞬の火力は高いが火持ちは悪い。

わが家の庭にあるシラカシ。常緑広葉樹。比重が高く、火力、火持ちともに抜群。材は硬く、多少粘りもあるため薪割りはちょっと苦労する

ケヤキ(0.58)はAクラス。熱量と火持ちは優秀だが、いかんせん割りにくい。繊維の粘りが強いため、気持ちよくスパンと割れないのだ。直径60センチを超えるような大木になるとオノで割るのは困難。パワーのあるエンジン式薪割り機に頼るしかない。とにかく苦労する。加えて、鼻をつくきつい臭いも好まれない理由だ。

ケヤキ。神社や寺、古い屋敷、公園などによく植えられており、大木に育つ。扱いに困るほど大きな丸太が手に入ることも

サクラ類(ヤマザクラで0.56)もAクラス。火持ちはSクラスに及ばないが、繊維が素直に通っているので大木でも割りやすい。薫製にもよく使われる木で香りも悪くない。

サクラ類。樹皮は品種によって異なる。全国あちらこちらに植えられており、手に入れる機会は多い

わが家の周りは果樹園が多く、カキ(0.56)やクリ(0.51)もしばしば手に入る。火力や火持ちはサクラとあまり変わらないが、いずれも果樹として管理しやすいように剪定されているため幹が短く、枝も曲がりが多いため、割ったり薪棚に入れたりするのにちょっと扱いにくいところがある。その点でAマイナス。クリに至っては、カミキリムシの幼虫による虫食いも多く、そうなると熱量は半減してしまう。

カキ。しばしば果樹園の伐採木をもらう。比較的硬いので割るのはやや困難。火持ちはいい

10月半ばの冷え込んだ雨の日に、今シーズン初めて薪ストーブに火を入れた。その日から、庭の隅に積んである玉切りした丸太の薪割りも始めた。毎朝10分のルーティンだ。朝のエクササイズにはちょうどいい。そうやって割った薪は一輪車(ネコ車)で薪棚に運び、時間をかけて乾燥を進める。その薪がストーブに入るのは2年後だ。

この心地よい暖かさを知ってしまうと、薪ストーブのない冬は考えられない

読者の声を投稿する

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE
  • Hatena
  • URLをコピー

関連記事

新着記事

タイアップ企画