チェーンソーは薪作りの必需品
初夏の風の強い日に庭のクリの木が派手に折れた。株元から2メートルほどの高さで二股に分かれた太い枝の一方が大きく裂け、地面に倒れ込んでいた。カミキリムシの幼虫によると思われる虫食いがひどかったから、いずれこうなるのはわかっていた。虫食いは残っているもう一方の枝にも及んでいたが、そのときはまだ切ろうとは思わなかった。クリが実る秋まで待っても遅くはなかろう。そんな欲深い理由でそのままにしておいたのだが、その後も枝は折れることなく秋になり、今年もたくさんの実をつけた。
これから秋が深まると落葉樹は葉を落として光合成をやめ、活動を停止する。葉が落ちると蒸散も抑えられるため、根から吸い上げる水分も減少し、乾燥しやすくなる。伐採するならこの時期だ。

この冬に切る予定のクリの木とスチールのチェーンソー「MS261」
木を切り倒すのになくてはならない道具がチェーンソーだ。わが家にはそれが4台ある。立ち木を伐採することはあまりないのだが、丸太を玉切り(所定の長さに切ること)にして薪を作るのに使う。わが家には3台の薪ストーブがあり、冬の暖房をそれで100%まかなっている。1シーズンにどれくらいの薪を燃やしているかはわからないが、昨年は2トントラックに山積みにした丸太を3台分運んでもらい、すっかり燃やし切ってしまった。

この写真の薪で約1カ月薪ストーブをたくことができる
用途によって選ぶチェーンソー
4台あるチェーンソーの主力はハスクバーナの「357XP」と、スチールの「MS261」だ。どちらも排気量50ccを超えるプロフェッショナルモデルで、持て余すほどのパワーと粘り強いトルクがある。きちんと目立て(刃を研ぐこと)さえしていれば、どんなに太くて硬い木でも吸い込まれるように切り込める。
ちなみにハスクバーナはスウェーデンの機械メーカーで、スチールは1926年に世界で最初のチェーンソーを開発したアンドレアス・シュティールによって設立されたドイツの機械メーカー。どちらもチェーンソーの世界的トップブランド。クオリティーに間違いはない。

主力の2台。搭載しているエンジンは原付バイクより大きい
主力機ほどのパワーを必要としない場面では、リョービ(現・京セラ)の「ESK-3740」が手軽で頼もしい存在だ。排気量36.3ccのライトユーザーモデルで、主力機のような強烈なパワーはないが、その分エンジンが穏やかで扱いやすい。庭木の剪定(せんてい)や枝落とし、繊維が柔らかいスギやヒノキの玉切りなら、これで十分対応できる。

36.3㏄のミドルクラス。主力機より軽くて扱いやすい
もう1台はスチールの「MS193C-E カービング」だ。チェーンソーカービングという木彫りや繊細な作業を行いやすいよう、先端が細くなった特別なガイドバー(※1)が標準装備されており、私は主に丸太を建築資材として加工するときに使っている。チェーンソーには豪快なイメージがあるが、使い方次第でミリ単位の加工もできるのだ。排気量30.1cc、質量3.6kg(ガイドバー・ソーチェーン除く)と非常に軽量で、取り回しのしやすさは群を抜いている。
※1 ソーチェーン(刃がついたチェーン)を取り付ける金属プレート。

先端が細いガイドバーが装着されたスチール「MS193C-E カービング」

丸太を建築資材として加工する
これら4台のチェーンソーはいずれも2ストロークエンジン(※2)を搭載しており混合ガソリン(※3)を燃料とするが、家庭用の100V電源やバッテリーを動力とし、モーターで可動する電動式のチェーンソーもある。力強さではエンジン式にかなわないが、静音性に優れているので、騒音が気になる住宅地などで使う場合に向いている。スイッチを入れるだけで始動する手軽さも見逃せない。
※2 ピストンを1往復させる間に、「吸気と圧縮」「爆発と排気」の2つの工程(ストローク)を行うエンジン。
※3 2ストロークエンジンに使用する燃料で、エンジンの潤滑と焼き付き防止のため、ガソリンに専用のエンジンオイルを混ぜ合わせている。
プロ用と一般ユーザー用の違いとは
このように、一口にチェーンソーといってもじつにさまざまなモデルがある。いずれにせよ、田舎で薪をたいて暮らしたいのであれば、チェーンソーは必需品だ。
では、どんなモデルを選べばいいかといえば、用途や使い方にもよるが、排気量40cc以上であれば薪作りから立ち木の伐採までストレスなくこなせるはずだ。ちょっとした薪作りであれば30ccクラスが手軽だ。それから、チェーンソーにはプロ用と一般ユーザー用があり、次のように分類されていることが多い。

ョービの「ESK-3740」は一般用。とはいえ、日常使いにおいては何の不足も感じない
プロ用
高排気量(40cc以上)でパワーとトルクがあり、高い負荷がかかっても回転が落ちにくい。タフなパーツで組まれているのでロングライフだ。
一般ユーザー用
扱いやすいように排気量や出力が抑えられている。短時間でのライトワークを想定したパーツ構成で設計されており、ローコスト。
振動の強さを示す「3軸合成値」にも注目
加えて、プロ用と一般用では作業中に手に伝わる振動の強さが違う。これは「3軸合成値」という指標によって表され、数値が小さいほど振動が小さく、作業者が安全に長時間使用できることを示している。3軸合成値は振動障害(振動の影響で起きる手指などの障害)を予防するために重要な基準で、チェーンソーに限らず刈払機やサンダー、ジグソーなど振動を発生させる道具には表示が義務付けられている。

3軸合成値。「3.6m/s2」というのはチェーンソーの中では標準的。これくらいの値であれば、使用は1日4時間以内にとどめておくのが理想
プロ用と一般用で比べた場合、同クラスのチェーンソーであれば、長時間の作業を想定したプロ用のほうが3軸合成値は小さい。排気量の大きなプロ用のパワーを使いこなすのは多少の経験が必要だが、それは決して扱いにくいというわけではない。もちろんプロしか使ってはいけない理由もない。
じつはどんな道具でもそうなのだが、できる限りいいものを選ぶべきだ。安物には手を出すべきではない。なぜなら、いい道具は安物の何倍も長く使えるからだ。作業性も優れている。同じ仕事をするのでも、いい道具のほうが手早く、正確に、安全に作業ができる。それが価格の差というものだ。そして、高価ないい道具は価格以上の価値がある。
チェーンソーを買うならプロショップへ
チェーンソーは近くのホームセンターに行けば手に入れることができる。ただ、そこに並んでいるのは手頃な価格のライトユーザーモデルである。用途によってはそれでいいのかもしれないが、できればプロショップに行くべきだ。いい道具はそういうところでしか扱っていないことが多いからである。スタッフもその道のプロで、あなたが必要としているものを的確に選んでくれる。それに、そのショップで買った道具であれば、メンテナンスや修理も笑顔で引き受けてもらえるはずだ。

扱いを間違えれば危険な道具だが、それをコントロールするちょっとした緊張感が好きだ
田舎で薪をたいて暮らすなら、チェーンソーは頼れるパートナーだ。わが家の4台は、14年前にこの土地に移住してきてから少しずつ増えていったものだが、いずれも10年以上使い込んで手になじんでいる。冬になるとあちらこちらで伐採がある。その丸太をもらってきて、薪作りをしなくてはいけない。夏の間、ガレージにしまっておいたチェーンソーが活躍する季節だ。

















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