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卵も肉も肥料も。ニワトリがいると自給自足がもっと楽しくなる!【DIY的半農生活Vol.35】

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

卵も肉も肥料も。ニワトリがいると自給自足がもっと楽しくなる!【DIY的半農生活Vol.35】

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約3.5反(35アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。今回はニワトリを飼う楽しみについて。毎日新鮮な卵が手に入り、ときには絞めて肉にする。生ゴミや野菜の残渣(ざんさ)がエサになるので家庭から出るゴミも激減。小屋の敷料と混じって発酵した鶏ふんは極上の肥料に変わり、それで健康的な野菜が育つ。自給的暮らしにおいてニワトリほど役に立つ生き物はいない。ペットとは違う、家畜(家きん)としてのニワトリとのつき合い方について話をしよう。

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最も産卵するのはふ化後7~8カ月

朝は生き物の世話で忙しい。東の空が明るくなる頃に愛犬のタロを連れて30分のランニング。今朝は朝焼けがきれいだった。10月上旬、家の周りの田んぼはほとんど稲刈りを終え、秋起こし(稲わらなどをすき込み耕すこと)をしている。
散歩から戻ったら、最近うちにやってきた子ネコにエサをやる。クロネコなので名前はジジ(※1)。それからヤギの乳を搾って放牧に出す。といっても草地に杭を打ってリードでつないでおくだけだ。その日ヤギがいたところは、夕方になるとすっかり除草されてきれいになっている。
最後はニワトリだ。ようやくエサにありつけるのをわかっているのだろう。小屋の中のニワトリたちは羽をバタバタさせながら、小刻みにコッコ、コッコと鳴いて興奮している。柵で囲んだ放牧場にエサを用意し、小屋の扉を開けると、せきを切ったように飛び出してきてエサに群がる。その光景は、昭和的なイメージでいえばデパートのバーゲンセールに殺到するおばさまたちのようである。

※1 宮﨑駿監督の映画「魔女の宅急便」に登場するクロネコの名前。

エサは自家配合が理想だが、手間を惜しんで市販の配合飼料にくず米や米ぬかを混ぜてやっている

産卵箱には卵が3個あった。手に取ると、まだニワトリの体温が残っていて、ほかほかと温かい。今、わが家にはオスが1羽とメスが6羽おり、毎日1~3個の卵を産む。ニワトリの産卵はふ化後150日前後で始まり、最初の頃は数日おきに1個のペースだが、徐々に間隔が短くなっていき、210日前後でピークを迎える。
卵をたくさん産むように改良された採卵鶏であれば、ピーク時の産卵率(※2)は90%以上。仮に100羽ニワトリがいた場合、毎日90個以上の卵を産むようになり、それが数カ月続く。以降は徐々に産卵数が落ちていき、7~8年で産卵が停止する。

ニワトリの産卵は日照時間にも影響を受ける。光でホルモンの分泌が促進され卵巣が発達するためだ。そのため日が長い夏はよく産卵するが、日長が短くなる秋から冬にかけては、2~3カ月卵を産まなくなる。この時期に古い羽が抜け落ち、新しい羽に生え変わる「換羽」という生理現象があり、それを経ることで卵の品質や産卵率が回復し、春先にまた卵を産むようになる。

※2 一定の期間内における産卵個数を、同じ期間の延べ飼育羽数で割り、100をかけた百分率で示した指標。

毎日のこととはいえ、産卵箱に卵があるとうれしい

ただ、今いるわが家のニワトリに春先の回復はあまり期待できない。なぜなら、すでにあまり卵を産まなくなってきているからだ。今日は3個産んだが、昨日は1個だった。産卵率は50%そこそこだろう。春先に新しいニワトリを導入することも考えて、何羽か入れ替えてもいいかもしれない。古いニワトリはどうするかって? そんなの決まっているではないか。クリスマスのチキンにするのさ。

養鶏でメジャーな実用鶏とは

若いニワトリといっても、うちで飼うのは大抵廃鶏だ。養鶏農家が処分するニワトリである。ただしふ化後2年程度で、ニワトリの自然寿命が10年前後というのを考えれば十分若い。産卵率も70%程度は見込める。10羽いれば少なく見積もっても毎日5個は卵を産んでくれるはずだ。自給用としては申し分ない。しかし養鶏農家にしてみれば、飼育コストを考えると産卵率70%では経済的には寿命なのだ。

懇意にしている養鶏農家では、ボリスブラウンというニワトリを平飼い(※3)している。この名称は品種名ではない。アメリカの企業が育種した雑種(F1品種)で、正確には商品名だ。産卵性は抜群で、日本ではメジャーな採卵鶏の一種である。このような卵や鶏肉の生産目的で飼育されるニワトリは、実用鶏やコマーシャル鶏とも呼ばれる。

※3 鶏舎や柵の中で、ニワトリが自由に行動できる環境で飼う方法。

ボリスブラウンのメス。赤玉と言われる殻が茶色い卵を産む

スーパーに並んでいる卵は、通常ボリスブラウンと同じような実用鶏によるものだ。ジュリア、ソニア、シェーバーブラウン、もみじ、さくらなどが代表的で、野菜のF1品種と同じように品種改良によって採卵性を高めたニワトリである。そのため、卵はたくさん産むのだが、これら実用鶏の悲しいところは、本来どんな生き物でも有しているはずの「子孫を残す」という本能を消されてしまっていることだ。彼女たちは休みなく産卵するために、卵を温めることを決してしないのである。ヒナをかえしたい場合は、ふ卵器を使うか烏骨鶏(うこっけい)や名古屋コーチンなど在来のニワトリに抱卵させなくてはいけない。

有精卵はふ卵器を使えばふ化させられる。ぴったり21日でふ化する

今、わが家にいる7羽のニワトリは、以前その養鶏農家から譲ってもらったボリスブラウンが4羽と烏骨鶏が1羽。残りの2羽は、この烏骨鶏が抱卵してわが家でふ化した雑種のオスとメスである。

ニワトリをシメるタイミング

ニワトリの世代交代は激しい。イヌやネコのように寿命をまっとうすることは、めったにかなわない。「こいつ最近卵を産んでいないんじゃないか」と思われたら、そろそろ終わりである。生理的に産卵が停止するのは7~8年と言われるが、実際は4~5年で産卵率はかなり低下する。その前に、何かしらの病気やトラブルで死んでしまうニワトリも少なくない。

生まれてくるヒナに至っては、長く生きられるかどうかは性別で容赦なく判断される。生き残れるのはメスだけだ。オスは1羽いれば十分なので、これ以上は必要ない。もっとも、生まれて間もないヒナの性別を判断するのは困難だ。ある程度大きくなると体つきや鶏冠(とさか)で「こいつはオスだな」というのがわかるのだが、決定打になるのは鳴き声だ。コケコッコーと鳴くのはオスだけなので、その声をあげたときが最後である。

命をいただく

でも、若鶏の肉はうれしい。なぜなら、そのままローストチキンにして食べられるくらい柔らかいからだ。廃鶏の肉だとそうはいかない。2年程度であれば多少歯ごたえがあるくらいで旨みも濃いが、3年たつともうダメだ。そのままでは硬すぎて歯が立たない。そのため廃鶏を料理するときは、時間をかけて圧力鍋で煮込んで柔らかくするか、ミンチにしてハンバーグにするのがわが家の定番である。そうしてしまえばコクのあるうまい肉になる。

ニワトリが有機物を循環させる

東南アジアの農村に行くと、庭先でニワトリを飼っているのをよく見かける。昭和の半ばくらいまでは、日本でもあちらこちらで同じような風景が見られたはずだ。ちょっと大きな農家になれば、ウシやウマも飼っていた。まだ化学肥料や農業機械が普及する以前、農村の自給自足的な暮らしに家畜は欠かせない存在だったのである。

畑でできた野菜をニワトリが食べてフンをする。そのフンは畑に戻り、肥料となって作物が育つ

今、個人でウシやウマを飼うのはちょっと難しいが、ニワトリなら小さな庭があれば街の住宅地でも飼うことができる。農家や家庭菜園をやっていれば、ニワトリはとても実用性の高い生き物だ。毎日のように卵を産み、シメれば肉になる。生ゴミや野菜の残渣がエサになり、フンは良質の肥料となって、それでオーガニックな野菜が育つ。ニワトリがいることで有機物が循環するのである。
ニワトリの飼い方については、拙著「増補改訂版 ニワトリと暮らす」もよろしく。

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