水はけが悪い、もと田んぼ。しかも石だらけ
今から16年前の早春に、この土地に引っ越してきた。広い敷地には、これからの住まいとなる少し傾いた小さな古民家がぽつねんと建っており、あとは冬枯れた草地が広がっているだけで、ほかには何もなかった。南側が開けた日当たりのいい土地で、広さは300坪(990平方メートル)あった。さらに、敷地とつながる約150坪(5アール)の畑も借りることができた。

移住してきた当初。広い敷地はもと田んぼを埋め立てた土地
引っ越してきた1年目は古民家の改修に費やされ、家のことはほかには何もできなかった。そんなわけだから、見晴らしのよかった庭は夏になると腰まで伸びた草に覆われた。それでエンジン式の刈払い機を入手し、密生した草をなぎ払っていった。初めてのことで勝手がわからず、凶暴に回転する刃を右に左に振り回していたが、今思うと相当に危なっかしかった。1日くたくたになって草を刈り終え、暑さと疲労でその場にぶっ倒れた。
2年目には150坪の畑の開墾を始めた。畑といっても耕作放棄地だ。もう何年も耕されていない。というか、もとは田んぼだったようで、地目も“田”となっている。土地を囲むように水も流れていた。ただ、それは水路と呼ぶようなものではなく、ぐずぐずとした湿地にすぎなかった。

土地の境界が水路のようになっていた。後年、写真左のシノやぶを開墾する
さらにいけなかったのは、その畑に残土が入っていたことだ。石だらけなのである。土も硬く締まっていてスコップが容易に刺さらない。たびたび石に当たってカツーンと嫌な音を響かせた。小石ならまだいい。一抱えもあるような大きな石やコンクリートの塊まで出てくるのだ。いいのかこれ……。スコップをテコにしてほじくり出そうとすると、スチール製の柄がグニャリと曲がってしまい使い物にならなくなる。それで3丁のスコップをダメにした。

折れたスコップの後ろに畑から出てきた石が積んである
加えて、粘質の重い土壌で水はけがひどく悪い。雨が降るとなかなか水が抜けず、乾くと硬く締まってしまう。そもそも野菜が育つような土地ではなかったのだ。それでも私は、ここでの自給自足的暮らしを夢見て、ただただ土を耕した。

当時は耕運機などの機械は何も持っていなかった。道具はクワとスコップだけ
油圧ショベルは開墾の強い味方
畑の周りを流れている水は、敷地の北側の境界で湧いていた。土管のようなものが埋められていて隣地の暗渠(あんきょ)のようだった。この水も何とかしなくてはいけない。ちょうど薪(まき)ストーブの燃料としてもらった丸太が大量にあったので、それを積み上げて水路を作った。これによって水の流れができ、ぐずぐずだった畑の周りも、そのうち長靴が埋まらずに歩けるようになった。

丸太を土留めにして水路を作った。この丸太は15年経った今もそのまま
その後、耕運機やトラクター、油圧ショベルを入手したが、機械の力を知ると、これまでの肉体労働がバカバカしく思えてくる。私が数日かけて奮闘した150坪の畑の耕運を、家庭用耕運機なら1〜2時間、トラクターなら30分ほどで終えられるのだ。硬く締まった土も無数の石もものともしない。油圧ショベルはさらにすごい。開拓という古典的労働において最も大変なのは、土を掘ることと重いものを運ぶことだ。それを簡単なレバー操作だけで、汗をかくこともなく軽々とやってのけてしまう。これほど力強い道具はない。

1トンクラスの小型油圧ショベル。田舎暮らしで個人が使いやすいサイズだ
もしあなたが何かの用途で油圧ショベルの購入を考えているのなら、多少大枚をはたいても早めに入手することを強くおすすめする。このマシンには、それだけの価値が十分すぎるほどにある。トラクターも油圧ショベルも最初に入手しておけば、私の開墾もどれだけ楽にできたか知れない。
ふるいで石を取り除く
開墾した畑には、毎年どっさりと堆肥(たいひ)を入れ、耕運機を手に入れたことで土も細かく耕せるようになった。粘質の重い土壌はなかなか変わりようがないが、水はけは多少よくなったし、硬く締まっていた土もだいぶ柔らかくなってきた。残る問題は無数の石だ。相変わらずクワやスコップを入れるたびにカツン、カツンと嫌な音を立てていた。これから先もこの石だらけの畑を耕すのかと思うとストレスを感じる。ではどうすれば石をなくすことができるか。このとき私はささやかな決意をした。
畑の土を振るいにかけよう。150坪全部だ。

DIYしたふるい。土台にローラーがついており、軽い力で土をふるえる
それはトラクターや油圧ショベルでできる仕事ではない。額に汗をかくしかない。でもやってやろうじゃないか。この先何十年もこの畑で野菜を自給するのだ。時間はかかるかもしれないが、やり続ければいつか石はなくなる。私はそう心に決め、まずはDIYで大型のふるいを作り、畑の石を取り除くことにした。
ふるいにかける土の深さは30センチと決めた。毎朝15分の作業を自らのルーティンにした。薪割りと同じように、ふるいもいいトレーニングになる。背筋や上腕二頭筋が鍛えられる。キツい肉体労働をポジティブに考えるのだ。その日から、私は毎日畑の土をふるった。150坪の畑全面をふるうのに、たっぷり1年以上かかった。でも、それを続けたことで、あれほどストレスだった畑の石はなくなった。やってやったぜ。
竹林は根こそぎ掘り起こすべし
移住して10年目に、ずっと気になっていた隣地の耕作放棄地を借りることにした。広さは約130坪(4.3アール)。畑を広げようと思っていたので、すぐ隣の土地というのは都合がよかった。問題は、足を踏み入れられないほどシノダケ(メダケやアズマネザサなど、細い竹のようなササの仲間の総称)が密生していたことだ。それをどうにかしないと畑どころではない。

シノダケの壁。刈っても、刈っても先が見えない
しんどい作業になるのはわかっていたとはいえ、竹林の開墾はやっかいだ。シノダケだからまだましなのだろうが、高さ20メートルにもなるモウソウチクやマダケは、竹を切り出すだけでも苦労する。竹・ササ類は根っこもしぶとい。深く伸びているわけではないが、網の目のように広がって地面をがっちりとつかんでいる。再生力もすさまじく、地上部を切り払っても根が残っていると、翌年また生えてきて元の木阿弥(もくあみ)。根を人力で掘るのは不可能に近い。こういうときに頼れるのは油圧ショベルだ。
とにかくまずは地上部を刈り払う。直径1〜2センチの細いシノダケでも繊維は強靭(きょうじん)で、安いチップソー(回転刃)はすぐにナマクラになる。加えてクズやヤブガラシ、ヘクソカズラといったつるが絡んで、これまたやっかい。とにもかくにも刈払い機をやたらに振り回してなぎ払うほかにない。
シノダケといえど草丈は3メートルを超える。刈り払ったあとの処理も困る。とりあえず作業の邪魔にならないところに積み上げておくが、あっという間に山になってしまう。穴を掘って埋めるにも量が多すぎるし、堆肥化するにも竹はなかなか腐らない。
結局、燃やしてしまうことにした。油圧ショベルで穴を掘り、その中に刈り取ったシノダケを放り込んで、風のない日の朝に火をつけた。炎は一瞬にして天高く燃え上がり、それほど時間をかけずに大量のシノダケを灰にした。火が収まったら穴を埋めて完了。

燃やした後の灰や竹炭は土壌改良や肥料に役立ち、土を豊かにする
次は根っこを掘り起こす。先述したように、油圧ショベルがないとできない仕事だ。それでも絡み合うように縦横に張った根は地面をがっちりつかんでいて、力任せにはがそうとすると、小型の油圧ショベルは車体が持ち上がってひっくり返りそうになる。
「わたたたた、やばい、やばい」
何度か冷や汗をかいた。ほんと、重機の扱いにはみなさんくれぐれもご注意を。

シノダケを刈り払ったあと根っこを掘り起こす
開墾はキツい肉体労働に違いないが、自らの手足を動かして土地を切り開くということには大きな意味がある。そこに立てば、ただただ心が浮き立ってわくわくする。だってそうでしょ。この場所で、これから新しいことが始まるのですから。

移住当初冬枯れていた荒れ地にセルフビルドの家が建ち、開墾した畑は日々の食卓を豊かにしてくれる。左にちょこんと見えるグレーの屋根が、もともとあった古民家



















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