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水田があればすぐできる!世界初の水耕栽培「EZ水耕」

水田があればすぐできる!世界初の水耕栽培「EZ水耕」

「EZ水耕」とは、水田に発泡スチロールのパネルを浮かべ、屋外で水耕栽培ができる世界初の技術です。現在ではリーフレタスなどの葉物野菜が中心に作られ、1反あたりの収益は米作りのおよそ230倍が見込めると言われています。現在の水耕栽培より初期投資金額も安価で、今ある水田を活用してすぐに始められるEZ水耕とは、どのようなものなのでしょうか?

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水田に浮かぶEZ水耕パネル

水耕栽培と聞くと、大きなハウスのなかで液体肥料の溶け込んだ水に植物が根を張る姿を想像する方が多いのではないでしょうか。世界初の水耕栽培技術である「水田型EZ水耕」(以下、EZ水耕)は、水田を利用し独自開発の固形肥料を使って屋外で水耕栽培ができます。

従来の水耕栽培にかかる高額な費用を必要としない技術を開発した株式会社セプトアグリ代表の大社一樹(おおこそかずき)さんに、EZ水耕の仕組みや始め方、利益の生み出し方をおうかがいました。農家や自治体を巻き込んだ、新しい挑戦が始まっています。

関連記事:洪水を防ぎ、地域コミュニティの場に。水田が生活にもたらす影響とは?

発泡スチロール製の専用水耕パネルを水田に浮かべるだけの「EZ水耕」

EZ水耕のEZとは、英語の「Easy」の略で、簡単に「誰でもできる水耕栽培」という意味です。仕組みは単純で、発泡スチロール製の専用水耕パネル(91センチ×91センチ)に、専用水耕鉢に入った野菜の苗をセットし、それを水田に浮かべるだけ。生育可能な作物は、リーフレタスやサンチュ、サラダ菜等の葉物野菜、ネギ、バジルといったハーブ類などです。

生育に必要な肥料は、苗を植えた専用水耕鉢に、液体ではなく固形状であらかじめ入れられており、水田の水で徐々に溶け出すため、途中で肥料を与える必要はありません。水田に浮かべてしまえば、収穫まではほとんど手間がかかりません。

季節や野菜の種類によって異なりますが、収穫は定植してからおよそ30から60日後になります。収穫するときはパネルを陸に引き上げて行うので、重機も不要です。作業は台の上で行えるので、しゃがむ必要もなく腰への負担もほとんどありません。


従来の水耕栽培が屋内でしか行えないのは、植物の生育に必要な液体肥料を水に溶かし、それを循環させて栽培しているため、雨が降ると肥料の濃度が低くなり、野菜の成長が不安定になるからです。ハウスなどの設備投資が高額なため、「それならば液体肥料を使わずに、屋外で水耕をできないか」という発想の転換から生まれたのが、固形肥料を使う、世界で唯一の「EZ水耕」です。

初期投資金額は、従来の水耕栽培より安価

従来の水耕栽培は、肥料の配合やタイミングをコンピューター制御したり、ハウスの温度を一定に保つためにボイラーを使用したりすることで、年間を通して安定して生育できるメリットがあります。一方、EZ水耕は屋外で栽培するため、気候の変化に影響されます。野菜の種類や地域によって違いはありますが、年に4回程度の収穫が見込めます。

「屋外での栽培のため台風も経験しましたが、想定していたよりも大丈夫でした。露地栽培では、長雨や曇りが続くと地面が乾かず、土中の酸素が不足したり、細菌が繁殖したりします。その結果、根腐れや病気になりました。EZ水耕はもともと根が水の中にあるので、長雨でも曇りでも環境が変わりません。災害には比較的強いのです」

初期投資金額を比較すると、従来の水耕栽培は5,000万円から1億円程度が必要です(セプトアグリ調べ)。EZ水耕は、水田に浮かべる専用水耕パネルと専用水耕鉢に植えられた苗だけなので、水田1反(約1,000㎡)あたりの初期投資は330万円程度。水田さえあれば始められので、パネルを外せばいつでも通常の水田として利用できる手軽さも魅力です。

1反あたりの収益は、米作りのおよそ230倍


セプトアグリ事業紹介より

水田を利用することも、EZ水耕の特長です。日本中にあって、ハウスを使わないという観点から水田に目をつけました。日本人の主食である米の生産量が減り、それに伴って水田も減少しています。売り上げも米の輸入が開始された1993年から下がり続けています。セプトアグリによると、2014年、1反あたりの売り上げは9万3,624円、必要経費を差し引いた利益は6,476円にしかなりません。

「これだけではやっていけないから、後継者が育ちにくいし、補助金がなければ成り立たなくなっています。儲からないから補助金を、という発想はほかの産業にはありません。ではどうすればよいか。それを解決するのがEZ水耕なのです」

需要の多いリーフレタスを栽培した場合、発泡スチロールの専用水耕パネル1枚に定植できる苗は25株。パネルは1反に1,000枚浮かせられるので、1回の収量は2万5,000株になります。生育不良などのロスを見越して歩留まりを75%、スーパーへの卸値を79円と設定し、年4回の収穫を見込んだ場合の利益は、約600万円になります。

苗代が1株当たり約30円で、流通経費や人件費などの必要経費を算出すると、約450万円。手元に残る利益は、1反当たり約150万円。米作りのおよそ230倍にもなる計算です。

低コストで小リスク。水田を持て余す農家に地方自治体が「EZ水耕」を提案


株式会社セプトアグリ代表、大社一樹さん

EZ水耕は2013年に開発を始め、液肥を使わない新しい水耕栽培技術の国際特許出願、実用化に向けて検証したのち、販売は4年後の2017年2月から始まったばかりです。生育可能な作物も限られており、品目を増やす開発にも取り組んでいます。現在、自社農場は千葉県と埼玉県の2か所だけなので、地域や気候ごとのデータは不足しています。「この技術に賛同してくれた各地の農家に協力してもらい、ともに成長していけたら」と大社さん。

今ある水田を利用し、初期投資金額も安くて手軽に野菜作りができるなら、と千葉県の南房総市など協力を名乗り出る地方自治体も少なくありません。そのうえ、農家に声がけし、プレゼンテーションの機会を作ってくれるなど、農家との懸け橋になってくれています。

「まず一度、試してもらって、継続の場合には、初期キット(専用水耕パネルと専用水耕鉢)を購入していただきます。また、固形肥料と苗も弊社から定期購入していただくという構想です。しかし、固形肥料と一緒に専用水耕鉢に苗を植えたら、1両日中に水耕しなければ枯れてしまうため、育苗拠点を水田の近くに設ける必要があります。今、協力してもらっている各地の農家には、育苗から手掛けてもらっています」

協力農家の方々の口コミもあり、EZ水耕の認知は全国に広がりつつあります。また、水耕の野菜は、柔らかくて水っぽいなどと言われますが、「EZ水耕で育てた野菜は、屋外で風もしっかり当たり、露地栽培の野菜と味の違いはほとんどない」ことも知って欲しいという大社さん。

EZ水耕は、2019年6月までには水田を110反に拡大し、育苗拠点も8か所にしたいという普及計画に沿って、着実に利用者を増やしています。

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セプトアグリ
http://www.sept-agri.co.jp/

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